おかげさまで今年2月に負った不慮の大ケガも次第に癒え、まだ慣らし運転ながら少しずつ社会復帰を果たしております。思えば昨年から異常な多忙さが続いていたので、神様が休みをくれたのかもしれません。車も少しずつ運転できるようになってきたのですが、背骨を激しく損傷した後遺症により身体や首を捻って目視での安全確認が難しいため、まだ運転はなるべく控えています。バイクと自転車にはまだ怖くて乗れません。
今年の3月にJRの寝台特急「北斗星」が廃止されたことは記憶に新しいですが、2月頭に「カシオペア」の切符が奇跡的にゲットできた(北斗星は取れなかった)ので乗る予定でした。しかし多忙により泣く泣く前日にキャンセルし、懐も気分的にも大ダメージを負ったところでの大ケガ。初詣のおみくじで凶をひいたのがアカンかったんでしょうかね…(弱々)
さて、実はまた奇跡的にカシオペアの切符がゲットできました。まだオフィシャルにはなってませんが、カシオペアも近々廃止になることは間違いないので、血中鉄分濃度が高い自分としても、これはどーしても乗っとかないと!多少の後遺症なんか気にするな!
この日を異様に楽しみに指折り数えて、前日はワクついちまって殆ど眠れませんでした(コドモか!?^^;)。カシオペアが入線する30分も前に上野駅に着くと、かつて特急が頻繁に発着していた頃の面影はまるで無く、誰もいない寂しいホームでした。
かつての賑わいと望郷の想いを謳った石川啄木の短歌「ふるさとの 訛りなつかし 停車場の 人ごみの中に そを聞きにゆく」の記念碑の前にて。東京の大ターミナル駅だっつーに驚くほど人がいない。建造物は昭和の面影を残している。ちなみにこの13番線ホームのトイレは、
都内ではガチなハッテン場らしいっす-_-;
そして遂にカシオペアが推進運転で13番線に入線!うわぁ〜なんか異常にコーフンして身体からいろんな汁が出てきます。ドアが開くとすかさず3号車でシャワー券をゲット。このシャワー券はあっちゅー間に売り切れてしまうらしいので、事前に情報収集しておきました。今回の座席は「カシオペアツイン個室」の1階。2階に比べて眺めは劣るものの、1階の方が揺れは少なく天井も高いのがポイント。確かに視点は低いですが、すぐに慣れました。禁煙席が取れなかったのでタバコ臭さには終点まで悩まされましたが、トイレも洗面所も完備され、居心地はサイコー!今日の牽引機関車はカシオペアカラーに塗られたEF510 509号機です(タイトル写真)。この
EF510電気機関車は上野〜黒磯間の直流1,500V区間から、黒磯以北の青森までの交流15,000V区間まで一気に引っ張ってくれます。
発車前に買い込んだつまみと酒は、もちろん列車が動き出すまで食べません飲みませんとも(爆)。電気機関車の強力な牽引力を味わいながら大宮、宇都宮に停車。機関車のすぐ後ろのラウンジカーに向かい、そこに設置されていた「旅の思い出ノート」に得意の漫画をサラサラと描きこみます。
カシオペアには絶滅寸前の食堂車が繋がれているんですが、今回は座席までデリバリーしてくれる「カシオペアスペシャル弁当」をオーダーしてみました。普通の駅弁の約3倍ほどの値段で少々お高いんですが、これがいちいち美味い!酒もガンガン進むってもんです。
すっかり満腹になったところで、事前に券をゲットしておいたシャワールームに。走行している列車の中でマッパになるって行為に若干の違和感が…。サッパリしたところで、21:30から食堂車で始まるパプタイムに向かいます。
パブタイムの食堂車では、カシオペアのスペシャルワインをオーダー。つまみとして食べたビーフシチューと併せてかなり美味しく、かつてのテキトーな料理を提供していた食堂車のレベルとは一線を画してますね。食堂車の雰囲気は落ち着いていてとても良く、思わずオーダーストップまで飲みまくってました。
列車は青森県に入り、車内もすっかり寝静まったようです。ベッドメイキングして横になって布団をかぶっても、リアル鉄っちゃんとしては駅を通過する度・他の列車とすれ違う度にソワソワしてしまい殆ど寝付かれずにウトウト。BGMはジャコ・パストリアスです。
暗い中でジャコパスがベース1本で奏でる「トレイシーの肖像」を聴いていると、暗闇の中を光の粒子が飛び交うような錯覚に陥ります。
夜半過ぎの青森駅で機関車を付け替え、列車は津軽半島から青函トンネルに入ります。上野からここまで牽引してきたEF510から津軽海峡線用の
ED79電気機関車に交換するのですが、ドアが開かないので機関車の交換は見られません。青函トンネルに入った頃には少し眠ってしまったようで、ハッと気付くとちょうどトンネルを出て北海道に上陸していました。木古内駅には北海道新幹線の軌道が殆ど完成しており、新幹線開通とともに北斗星やカシオペア、はまなすといった夜汽車が廃止されてしまうことが少し寂しく感じられますね。
早朝の函館に到着。青函トンネルと海峡線を牽引したED79電気機関車はここでお役御免です。このED79も老朽化が進んでおり、トンネルの高湿度や急勾配での酷使でかなりの痛み具合でした。函館はもう今は会えない友人が住んでいた街で、ガラにもなくおセンチモード。
冬の函館の街、そして北斗星をモチーフに作った曲「
ウィンター・コンチェルト」です。
函館からは
DD51ディーゼル機関車が牽引します。かつては全国にウジャウジャいた雑魚キャラのDD51も今では風前の灯火。昭和を支えた名機も絶滅寸前で、特急を引っ張る勇姿はここでしか見られません。
61,000ccのV12エンジンを2基搭載し、トルコンを介して駆動するその出力は2,200馬力。室蘭本線を走る他の特急がキョーレツに速い(後述)ので、追いつかれないように重連で牽引します。
昭和の古豪DD51は老若男女に大人気!かつての「けッ、またDD51かよ」といった雑魚キャラ的な扱いが嘘のよう。
生憎の土砂降りの中、函館から大沼公園までの緑のトンネルの上り坂区間をエンジン全開でもうもうと排気煙を上げながら引っ張ります。電気機関車と比べてガンバってる感が凄い。意外に速いぞDD51!
食堂車で朝食をとっているうちに、列車は大沼公園、噴火湾こと内浦湾や昭和新山の麓、洞爺湖や登別温泉といった景勝地を札幌に向かって爆走します。この辺りになると終わりが見えてきて自分もすっかりシュンとしてしまい、この一瞬一瞬を味わっておかないとっつー強迫観念にとらわれると同時に、寂しい気持ちになってきます。
そして遂に、昼前の札幌駅に到着。17時間お世話になった、そしてもう二度と乗れないであろうカシオペアとDD51を見送ります。なまら快適で思い出深い旅路でした!
さて、ゆっくりしているヒマはありません。実は飛行機が取れなかったので、ここから鉄道を乗り継いで帰る「北海道レイルウェイキャノンボール」の始まりです(無謀)。まずは来た道を函館まで戻るべく、ディーゼル特急「スーパー北斗」に乗車。この
スーパー北斗に使われているキハ281系は、1両あたり710馬力というハイパワーエンジンを搭載(11,000cc・355ps直6エンジン×2基)した文字通りスーパーな特急です。札幌〜函館間の表定速度は109km/h(最高速度は130km/h)を誇り、これは電車特急を含めた在来線の特急の中では日本最速です。
しっかしスーパー北斗クッソ速いぞ!
振子式の車体なのでカーブも高速のまま駆け抜けます。ハイパワーエンジンを響かせながら、内浦湾沿いをアッという間に走り抜け、広々とした風景が後方に吹っ飛んでいきます。
途中、カシオペアも停まった八雲駅に停車。ホームの縦字看板が懐かしい。吊るされた「カシオペア」の表示板の横には、きっと3月まで「北斗星」もあったに違いありません。10月以降はこのカシオペアの案内板も撤去されちまうんでしょうね…。
カシオペアが4時間以上かかった道のりを、スーパー北斗は僅か3時間で函館に到着。10分の乗り継ぎ時間で、ここから新青森までは
789系電車の特急「スーパー白鳥」です。ディーゼルカーと電車の違いこそあれ、スーパー北斗のキハ281系とはまるで兄弟みたいな面構えですね。おろしたてのVANSのスケボーシューズが妙に眩しいw
座席の前には青函トンネルの案内が。青函トンネルが開通したての頃は、物珍しさにみんな車窓にかじりついていたようです。トンネルの難工事の様子は、高倉健主演の映画「海峡」に描かれてます。
青函トンネルに入る直前の車内の様子。ブッちゃけ自分以外は誰も興味がなく、みんなガン寝してます。
スーパー白鳥も充分以上に速い特急なんですが、スーパー北斗のバカッ速さの後は少々インパクトに欠けます。青函トンネルを抜け津軽半島に上陸…ところが…人が全然いない!車も!道路にも街にも田畑にも人っこひとりいない!トンネルを出た最初の停車駅・蟹田駅にも誰もいない!なんて寂しいのだ津軽半島…。過疎化が真剣に心配になるな。
電車は定刻に新青森に到着し、北海道レイルウェイキャノンボールの第3便は
東北新幹線E5系「はやぶさ」。最高速度320km/hの日本が誇る超高速車両です。しかし青森から東京まで僅か3時間とは、にわかに信じられません。まあ、飛行機が取れてりゃ札幌から東京まで90分なんですけどね。
「はやぶさ」という列車名といえば、かつての花形列車である九州行きブルートレインの名前を思い出しますが、時代はすっかり流れてしまいました。オッサンの郷愁とは裏腹に、E5は東北の田園地帯の中を突っ走ります。実はこのころになると、ケガの後遺症で背中が痛み始めました。背中は痛いわトンネルばっかだわ外は暗いわでやる事がないので、まるでオッサンのように飲んだくれるしかありません。あ、立派なオッサンなのか(爆)。
320km/hで駆け抜けた旅もいよいよラストスパートです。大宮では北陸新幹線E7とすれ違い。つか、酔っぱらっててよく覚えてまへん(汗
10時間かけた北海道レイルウェイキャノンボールも遂に最終便。東京から地元の海浜幕張まではいつもの京葉線です。この遅い時間に上総一ノ宮までロングランする便があるとはちと驚き。いや、実は仕事帰りによく乗ってるやつじゃん!見慣れた
E233系通勤電車ですが、これがカシオペアの非日常空間の車両と同じ1067mm幅のレールの上を走ってるとは、何となく想像がつきません。うわ、写真は完全に酔っぱらいのオッサンだ(-_-;;;
こうして全行程10時間強の「北海道レイルウェイキャノンボール」も無事に終了し帰宅。驚くべきは、日本の鉄道の時間の正確さ!これだけの行程で全て定刻通りでした!!
2月に多忙でカシオペアを諦め、その後には大ケガで約3ヶ月間動けず、今も後遺症との闘いの毎日ですが、念願のカシオペアに乗れたことで、何となく身体も心も少しだけ楽になった気がします。今も多忙続きならとても乗れなかったワケで、やっぱ不慮のケガも前向きにとらえないとですね。
しっかし、行程の殆どを飲んだくれてました^^;;;
今回ゲットしたカシオペアの土産&記念品。トートバッグやマグ、車内のリーフや弁当の包み紙等々です。鉄はどうにもこんな物に弱いんだよね^^;