灼熱の太陽。
有史以前より人々は崇め、恐れ、我が友にしようと挑み、散って逝った。
時は現代、初夏の足音が聴こえ来る、とあるメガロポリス。
これは、鋼の翼を持つ者達がそこで繰り広げた、果敢な戦いの記録である。
その時、私は孤立無援。
身を潜め、眼前を駆け抜けて行く 多国籍な(非日常な)機体たちを
一機 また一機と確認する作業に追われていた。 彼等の着陸場所は恐らく、私と同じ。
しかし現時点では あくまで 「友軍機と思われる」に過ぎない。
ピーッ! 急接近する3機、捕捉。
識別コード解析… 「兵庫500中隊」所属の機体と判別、 自陣機だ。
直ちに援護射撃体制に移行。
む!? 「ごんちょろ分隊」… 通称 「白い三連星」。
我がスコードロンでも 一・二を争う着弾率を誇る、精鋭部隊。
よかろう、面白い! 加速体制に入る。
むぅ… 骨が軋む程の強烈なGに耐えつつ、我が機体を3機の後方へ滑り込ませる。
変態、完成。 いや、編隊完了。
目指すは、灼熱の Nara-Base 。
前機のジェット乱流を避ける為、僅かに軸線をオフセットし機体の安定を保ちつつ、東進。
もちろん、簾は拝む為に ある。
我々が駐機して ほどなく、オペレーションカウンシルが始まる。
「 全国変態グルマ義勇軍 」。 別名 「 黒いナラナラ旅団 」
創設者 ムルティプラ大佐が総帥を務め 世界統治を掲げる、私設軍である。
軍(総帥)の命令は絶対服従。
一騎当千の勇者達も、そのオレーションに子羊の様に耳を傾ける。
ドクトルヒゲー大尉を参謀として計画された今回のミッション、それは「太陽を克服」するコト。
伊軍をはじめ、仏軍 ・ 英軍、少数だが日本軍も参加。
ゲルマンは思想が相容れないのだろうか、姿を見ない。
ミッション開始!
この灼熱の作戦、果たして何名が無事生還を果たすのか…
ジリジリと照り付ける太陽の下、我々「近畿500大隊」を核とした連合部隊は、迎撃の布陣を敷く。
無闇に攻勢に出て消耗するより、負傷・離脱により戦力低下が懸念される終盤に戦力を温存する
ディフェンシブなタクティクスだ。
なに!?
そんな我々を横目に、制空権奪取を果たすべく 数時間に及ぶ局地戦に出撃する部隊!
「東海500小隊」 をはじめ、数十名!
生きて還れよ… スタンプも全部貰ってくるんだぞ…
祈りを捧げるコトしか、私には出来ない。
女性部隊は勿論、屈強の漢も UVカットコーティングを施す程の殺人紫外線の弾幕に晒される。
ここ Nara-Base に遮蔽物は、無い。
しかし、小さな機体に後部ハッチを搭載する「500」。
ブレットプルーフも兼ねる その機能性、抜群ナリ。
その英国軍、只者ではない。 写真も無い。
かの ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンも、この機体に捧げる一曲を残したと云う…
その四肢は堅固に大地を掴み、獲物に襲い掛からんと極く低く構える、青い機体。
ルーフも無ければエアコンも無い。
軽量戦闘機かくあるべし、その機動性 云わずもがな。
コックピットは 「漢」 以外の侵入を拒む。
何!? これでデート!?
強烈な風の巻き込み、直射日光はもちろん排ガス一斉掃射を浴びるこの機体のオペレーターを務めるその女性とは!? その者、空挺部隊出身とみた。
太陽が我々の真上にそのポジションを移しつつある時間帯、厄介だ。
案の定、ハッチ構造もルーフも装備せぬ軽量機動部隊が被弾・戦線離脱を余儀なくされ始めた。
貴方達は充分 闘った。 後は任せろ…
とは云え、この時間帯を凌ぐにはウェポンアイテムが不足している。
その刹那、補給部隊より入電!
「 ワレ、ノンアルビア ヲ ハッケンセリ 」
命の水! 歓喜に沸き、われ先にと群がるパイロット達…
えーい、焦るでない! まず私が3本確保してからだ !!
冷ややかに見守るアマゾネス達の手には ジューロクチャ!?
ぬるいぞ、ソレで生き抜けるのか?
むむっ、もう片手には「パラソーラ・サンシェイド」。 なるほど流石、抜かりは無いな…
コルシカ島での激闘が記憶に残る、歴戦の機体。
仏正規軍の迷彩カラーが青空に映える。
新鋭機にその場を譲っても なお放ち続ける存在感、出る杭は打たれてしまう。
勝ち過ぎたな…
一機 また一機と戦線を離脱して逝く。 無理もない…
毎日の様に発令される 「焼け焦げ注意報」が、ココ Nara の過酷さを物語る。
東の雄 「関東500大隊」 より派遣・参戦した同志が去り往く。 被弾・損傷ではない。
群馬戦線の重大局面を左右する極秘作戦 「windmill 」のコマンダトーレとして
すぐさま最前線へ赴くステルス機の幸運を祈らずにいられない。
またドコかの戦地で逢おう…
全てを焼き尽くさんとする炎と対峙した時、その向うに人は幻影を視る。
歴戦の老兵達が聞き慣れぬ・遣い慣れぬ 奇妙な片仮名コトバを口走る。
暗号解読班に要請するも、「さしたる意味の無い、接尾語」 との分析。
酷暑。 頭脳回路もショートし始めたようだ。
いよいよか… 敗戦濃厚。
「 日本の夜明けは近いぜよっ!! 」
はっ!? 天の声!?
混濁し薄れゆく意識の中からその時 我々を救い出したのは、夢か!? 幻か!?
正気を取り戻した私達の前に、珠玉の機体。
かつて世界の空で暴れ回った、伝説のスコードロンマーク。
大蛇の紋章は、撃墜王の証し。
「最新鋭」・「電子化」 が失ったモノがここには、ある。
「Raptor」よりも、涙と血の匂いが混じった「PhantomⅡ」が美しくも儚いのは、
同じ理由。 無理もない。
気のせいか!?
いや確かに気温は下降モードに移行している。
観測班からの無線を待つまでもなく、降り注ぐ日差しに往年の猛威は既に無い。
勝った、のか!?
皆、遠慮がちに互いの生還を讃え合うなか、誰かが叫ぶ。
「還ってきた!」
陽炎の彼方より 「東海500小隊」、帰還。
兵士に涙は禁物。
しかし、この時の我々を責める事が出来る者など居るのだろうか?
歓喜の輪から少し離れた司令塔。
その奥で、総帥・参謀の眼に光るモノが零れていたのは 人間の証し…
決して「蝋」の羽ではない!
我々は鋼鉄の翼を授かりし者。
太陽にだって、打ち勝つコトが出来たのだから…
多くの参戦者たちは既に自らの基地へと、帰投していった。
最前線での再会を誓って…
ごく少数による、勝利の余韻に浸る宴では、皆 安堵の表情。
あとは、勝利を最終「確認」する作業を残すのみ。
時間だ…
観測班より最後の入電、「…日没です」。
mission completed…
敗者は地平線の彼方に沈んで逝った。
私の戦いは終わっていない。 私個人の密かな戦いは、もともと3日間。
翌日も快晴の予報、早朝より出撃。
より直に太陽と相まみえる超軽量・高機動の機体を選択。 自らが「エンジン」。
しかし、戦う前に勝負は決していた。
「まさか」の曇天。 太陽よ、敵前逃亡か…
いや、「まさか」ではなく 「だろうな」 が正しい解釈かも知れない。
昨日、我々の「勇気」を視てしまったのだから。
そして3日目、最終決戦。 完勝で締め括るのみ。
朝、薄曇り。 奴は顔を見せない、終わりだな。
しかし、神が最期の戦いを見届けんとばかりに、その瞬間 眩いばかりの陽の光が!
「 やはりな…」
さぁ、存分闘おうではないか。 この機会を逃すと次は 300年後!
カウントダウンは進行、その瞬間までアト10秒!
日食観察グラス? そんなモノは持っちゃいない。 買いに行ったが売切れだった!
最期の闘いに相応しい、裸同士の魂の決戦!
キターーーーッ !!
グワッ !!
……
一瞬にして焼かれた私の翼…
網膜よ、さらば。
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