
教えて欲しい。
何故 私が今、追憶の時を過ごさねばならないのか。
チカラが欲しい。
この結果を避ける為に、僅かな時間を遡るチカラを。
とめて欲しい。
流れ続ける、鎮魂歌を…
無関心に流れる人の波、熱気ゆらめくアスファルト上に犇めき動く車群、都会の日常は無機質だ。
あの、一瞬までは。
私の網膜はその数秒後に起こる惨劇を、予め認識していた。
だが、私にいったい何が出来たと云うのだ…
クルマに乗り始めて20数年。
幾多の経験・鍛錬を積み、この日の 「回避」 に備えていた筈だったのに。
右脚のブレーキペダルを ”より強く” 、二次悲劇回避の為に ”僅かに” ステアリングを切るコトしか
出来なかった… 無力。
そして、周囲は一変した。
道往く全ての人々が驚嘆 且つ、どこか冷めた視線を固定し、車流は遥か後方まで
その動きを完全に停止した。
数秒前と変わらぬのは、頭上に広がる 梅雨の合間の ”青空” だけだった…
悲鳴と怒号が飛び交い、クラクションのファンファーレが我らを包んでいる ”筈” だが、
聴こえはしない。
私の脳は、事態を収拾すべく既に冷徹に処理を開始、外界をシャットアウトしていたのだから。
自らの身体機能障害をサーチするのに費やした時間は、おそらく5~6秒。
生まれ持っての健康体、よくぞ頑強に生んでくれたものだ、父上・母上 ありがとう。
いざ、車外へ脱出。
後方で あらゆる部品を散乱させ、あらぬ方向を向いている もう一台の車体。
ドライバーは… 生体反応あり、神様 アリガトウ。
引火の可能性も未だ否定出来ず、救出行動に移行。
周囲の群集は誰一人動かず、いや どう動いて良いのか判らないのであろう、無理もない。
この一連の出来事、ここまで10数秒しか経ていないのだから。
初老の男性ドライバー、奇跡的に身体損傷なく救出完了。 現代のクルマの安全性、認識。
彼のココロもまた、周囲の喧騒が届いていない様だ、無理もない。
脇の自販機で甘めのコーヒーを一本、茫然自失の相手に渡し、事後処理開始。
後続車のために1車分の有効幅員を確保し、関係各所に通報・連絡し終えた頃、僅かながらに
流れ始めた大渋滞の路側傍らで、ようやくの一服。 short HOPE が心に沁みる。
勿論、彼方に続く車の列が解消されることはない。
「 スマンな… だが都会に渋滞はよく似合う。」
さあ、この一服の ”灰” がフィルターに達する頃、いよいよ現実と向き合わねばならない。
我が愛機の無残な姿を認識し、受けとめねばならない。
あぁ、昨日の楽しきツーリングを回顧する時間さえ、神は私に与えてくれぬのか…
コイツとは新車から3年以上、連れ添った。
歓びも悲しみも、感情の横には いつもコイツが居た。
鉄の塊であっても そこに信頼関係が生まれ、互いにどちらかの調子が悪いと、
些細な挙動の変化をも如実に体感できるものであり、それは真に ”相棒”。
つい数分前まで、快調だった我が愛機。
それが こんな姿に…
後部は原形を留めてはいない。
カワイそうによ…
保険屋は云うだろう、「 償却上、治すより… 」 もうよい、その先は聴きたくはない。
ただの道具ならば 「替わり」 はいくらでも買えるだろう。
だが、コイツは ”相棒” なのだから…
信号停止中にカマ掘られるのは、人生これで4回目。
どれだけ掘られれば気が済むのだ。
おムコに行けなくなっちゃうぢゃん。
ま、確かに 「男」 にゃモテるがね…
さて、悔やんでいては何も始まらない。
オトコは立ち上がり、前を向いて歩き出さねばならない。
時間というものは ”先に” しか進まぬものだから。
次の相棒探しを早急に始めるコトが、コイツの鎮魂歌を止める唯一の手段なのだから。
今まで時間を共にしてくれて、今回 守ってくれて アリガトウ!
そして、さらば。
私はオマエの事を忘れない。
あ、もしもし !?
次はやっぱり ミ〇ビシが良いねー
なんだかんだ云っても、やっぱトラック系は操作性第一だからね。
ぢゃ、保険屋さん よろぴくー!
あ~ 会社のクルマで助かった。
自分のチンクだったら、ココロもカラダも折れてるね、文字通り (笑)
さーて、そろそろ帰るか…
遠回りして ABARTHでゴキゲンな峠でも攻めて帰るか!
Posted at 2013/06/10 21:28:15 | |
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