
土曜日、マムシに咬まれる。
日曜日、猛犬に咬まれる。
ほとばしる、野性のパッション! 2013・夏。
六甲山の北に位置する丹生・帝釈山系、私の庭だ。
無数に奔る登山道、藪を掻き分け踏み入るその先に、いつも新たな発見がある。
マムシ 発見。
今まで彼らには数百回、遭遇している。
今回は出会い頭系。
突然の対面で奴の神経を刺激した様だ、既に臨戦態勢に入っている。
太短い体躯をバネのように幾重にも折り曲げ、極限まで溜め込んだ筋力エネルギーを
一気に解放する 「その時」 の標的は、私の下肢であろう。
だがマムシよ、残念ながら私はこの境遇にすら、慣れている。
本当は貴様も怖いんだろう?
できることなら闘うコト無く、この場を収めたいのだろう?
そう、こーゆう時は何事も無かったかのように 静かに、あくまで静かに速やかに距離をとり歩を進めれば、密林の平穏は保たれるものなのだ。
だが、もう一人の私がささやく…
「 それで良いのか !? 人類!」
昨今、男性の草食化や繁殖能力低下の問題が巷で話題にのぼる。
急速に文明化を推し進めた結果、人類が本来持っている ”野性” が順応しきれず、
ここ十数年のネット普及が追い討ちをかけ、現代人の体たらくを生んだのだと云えよう。
何事にも正面から向き合う 「闘争本能」 すら DNA から抹消されつつある現代社会。
それで良いのか !? 人類!
ならばこの時、この場所で、マムシを避けて通るなど 私に選択出来る筈もない。
人類を代表し、相手になってやろうではないか。
腕(脚)に覚えが無いわけではない。
十数年ぶりに我が伝家の宝刀の切れ味を試すのも一興、久々の境遇に血がたぎる。
奴との距離、約80センチ。
電光石火の踏み込みで放つ我が下段廻し、マムシよ 覚悟するがよい。
「 先に動いた方が、殺られる… 」
両者の間に極度の緊張と、永い沈黙が横たわる。
そして 一閃! 交錯する2本の野性、生命のエネルギー !!
咬まれた。
だが奴の牙が私の左足首を捉えている以上、奴のその身体は無防備。
私の全身全霊全体重を掛けた右足での怒涛の攻撃が、次第に奴の戦意と生命力を奪っていく…
そして数分後、地上に君臨していたのは 私。
「 試合に勝って、勝負に負けた… 」
間違いなくあの刹那、奴の一撃が速かった。 私は ”勝負” に敗れたのだ。
だが私は、この対戦を予感していたのか アイゼンガード装備の冬季用スパッツを下肢に装着済み、さすがの牙もこの金属繊維を貫通するには至らなかった。
マムシよ…
お前は その牙に秘めたる出血毒を我が肉体に注入するコトは叶わなかった。
だが、悲観に暮れる必要は無い。
何故なら、お前の 「闘魂・野性のエナジー」 は充分 我がココロに注入されたのだから。
マムシよ、その誇り高き志しとともに、安らかに眠れ。
殺人紫外線が降り注ぐ、蒸し暑さ満点の日曜日。
100km オーバー のツーリングを終え、仲間と別れ ひとり田園の中をクールダウン。
青い空、緑の水田、白い雲、鎮守の杜に セミの声。
神戸の西端、ここ平野地区には 「日本の夏」 の原風景が拡がる。
この無機質な現代社会に残された奇跡のロケーション、私のお気に入りだ。
チェーンもタイヤも埃にまみれ、カフェで ようやくの一服。
穏やかなマスターのお話と珈琲が、最高の癒し。
「 ごちそうさま。」
西に傾いた日差しの下、再び水田脇を走る 十数キロの家路。
今日はノレていた。
未だペダリングに破綻の気配はない。
ゾクリッ…!
右背後に尋常ならざる気配 ・ 殺気 ・ エネルギー源を感知。
いくら ”流している” とは云っても、時速20キロ以上。 ここは狭小農道、クルマは通れない。
そして その生温かい ”息遣い” がスグ背後に迫る。 ケダモノかっ !?
振り返ると同時にその生命体が私の右足首に喰らい憑く!
咄嗟の反応で蹴り離し体勢を立て直すも、再びその生物は突進してくる!
私は瞬時に 「馬上の不利」 を認識、即座にビンディングを外すとともにバイクから飛び降り、
そのままバイク自体を武器とする体勢へ移行。
タイマンなら勝機はあるはず、相手はっ !?
柴犬 !?
しかもリード付き。
尻尾を振っている。
なんか、カワイイ。
でも体当たりが止まらない。
これ、顔をペロペロ舐めるんぢゃないっ!
遥か彼方より飼い主おばさん、息を切らして登場。
「 ごめんなさい~ あなたを視た途端、興奮して突っ走っちゃって…」
想えばこの人生、様々な野性との対峙の連続だった。
かつて、海辺の学生寮で昼寝していると ”枕が動く”。
めくるとそこに、ワタリガニ。
かつて、出掛ける際 ジャケット羽織ると ”胸ポケがモゾモゾ”。
開けるとなぜか、ハムスター。
これは隣の家から脱走した 「ポンちゃん」 と判明。
( 彼は後日、誤って掃除機に吸い込まれ、非業の死を遂げる。)
飼ってた犬の食事中にチョッカイだして、その度に咬まれてたのも 遠い昔。
ジンベイザメの背中に乗って雄叫びを上げ、海中でマッコウクジラに 眼(ガン)飛ばされ、
ビビりまくったのも、淡い想い出。
時には闘い、時には戯れ、時には捕獲し、時には翻弄され、その度に彼らから野性のエナジーを貰い、糧としてきた。
だが時は流れ齢を重ね、立派な中年に成り果てた私は 「分別」 を所持するコトによって、
無益な争いを回避する判断力をも身に着けてしまった。
だから 「 ヒグマ ・ ゴリラ ・ シャチ ・ 貞子 とは闘わない 」と決めている。
だが、それで良いのか !? 人類!
人間とて、あくまで大自然の一部。
正面から野性と対峙し、その結果 朽ちるなら、それも自然の摂理。
海 ・ 山 ・ 河 ・ 空、どこにでも溢れる生命のチカラ。
人類よ、もっと貪欲になれ! 野性を取り戻せ!
その果てに、”パッション” が在る。
というコトで ”野性に還る計画” 第一弾、「 マムシ狩りオフ 」 開催(予定)!
これを見て、ゾクッ! としたそこの ア・ナ・タ! 参加義務が発生しております。(パクリ)
万障お繰り合わせの上、咬まれてもいい服装でご参加下さいますようお願い致します!