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2012年08月17日

全日本ツーリングカー選手権の思い出 『HR31スカイライン』 ③

全日本ツーリングカー選手権の思い出 『HR31スカイライン』 ③ 今回は全日本ツーリングカー選手権の思い出 『HR31スカイライン』③をアップします。

サブタイトルは
【実走行データー計測の重要性とドライビングの違い】


1.HR31スカイライン・グループAレース車データー計測 その2
①.インストメーター表示用排気温度計の作製

ターボ車のブースト圧設定の際には排気温度管理が重要です。
(ブーストを上げるとパワーは出るが、排気温が上昇しターボチャージャーが破損する。)

データー測定用CA熱電対用温度アンプの作製経験を生かし、インストメーター表示用の排気温度計も手作り。アンプ部にはデーターレコーダー接続用のBNCコネクタ出力付きとした。

他チームから『うちの車に欲しい』と言う声が多く、私は10台手作りし販売しました。

②.ブレーキローター測温1
ローターのベンチレーションだけでは冷却が不足するのでクーリングダクトを設置します。
しかしローターの外側、内側の冷却温度差が大きいとローターの反り(おちょこ型に変形)が発生するので難しいところです。

測定方法はブレーキパッドに穴を開け、熱電対埋め込み。熱電対はクロメル、アルメルを溶接手作り品。CA熱電対用温度アンプを介しデーターレコーダーへ、これで走行中の温度測定が出来ます。

クーリングダクト3種選定するも外側冷却が不足、最終的にはマウンティングベル形状変更で対処。 (マウンティングベル取付けボルト穴座面を除く取付け面えぐりで、冷却風が流れる様にした。)

③.ブレーキローター測温2
気温によりクーリングダクトの一部マスキングが必要な時があります。

普段の温度管理はピットイン後のローターを接触温度計による測定でしたが、途中から精度向上目的に非接触放射温度計を使用。

この非接触放射温度計は計測情報誌で紹介された新製品軽量小型の温度計。
センサー先端はφ5~6、ケーブルを介し本体へ、本体には温度表示、放射率調整、データー計測用出力付き。物体により放射率が異なるので事前に較正要。

先ずはモニターで使用、その後購入に至る。
軽量小型の非接触放射温度計を使用したブレーキローター測温は、日本初、いや世界初か?
この温度計は後にニスモグループCでも採用、その後日本レース業界で沢山使用された。

④.操舵力角(ハンドル切れ角、保舵&保持力)測定
各ドライバーの運転方法とHICAS(4輪操舵)テストの為に測定した。

この測定でドライバーのハンドルの切り方が良く分かる。

サンプル1.
亜久里選手がセッティングしたHR31グループAのステア特性は、亜久里選手は弱アンダー、
オロフソン選手は弱オーバーと評価した。

その違いをデーターで見てみると、
・亜久里選手はコーナー進入時のハンドル切込みスピードがやや早い、スパッと切る。
・オロフソン選手はスーと切る。
・T選手はドバッと切る、アクセルもドバッと踏むので強アンダー、プッシュアンダー。

タイヤ特性上ハンドル切れが早いとグリップ抜けがあるので、同じ車でもステア特性評価に違いが。
T選手はグリップ抜けでソーイング操舵をするので、タイヤ温度が高くなる。
タイヤ温度が最も低いのはオロフソン選手でした。

サンプル2.
別の場所で高速コーナーのギア位置を確認した。
・日本人ドライバー;ストレートから5→4→3速にシフトダウン後、3速でコーナリング、脱出後4速へ、
その後4→3速で次のコーナーへ。
・オロフソン選手;ストレートから5→4速にシフトダウン後、4速でコーナリング、4速で次のコーナーへ。

この区間タイムで速かったのはオロフソン選手、ギアシフト時間を除いた部分のタイムは全員同じ。
差が出たのはギアシフト時間、シフト回数が多い分遅くなった。

オロフソン選手はスェーデン人で温厚で優しい人でした。
過去のインターテックでVOLVO車に乗り、ブッチギリ優勝。
アンデルス・オロフソン、彼は最高のパートナーだった――長谷見昌弘
アンデルス・オロフソン氏死去
亜久里選手の右側がオロフソン選手。


サンプル1と2を各ドライバーに伝えたが、ワークスカーに乗るほどのドライバーは運転スタイルが固まっており、オロフソン選手走法をトライするには至らず。

レーシングドライバーを目指す方、他人より速く走りたい方はトライしてみては?
それと速いドライバーのデーターを測定、自分の運転と比較すると悪いところがよく分かります。

日産ワークスの過去のデーターも確認、比較してみたところ、
ハンドル操舵のベストドライバーは、オロフソン選手、黒沢元治選手でした。

黒沢元治は1969年日本グランプリを日産・R382で優勝
黒沢元治ドライビング講和

また左右Gとハンドル切れ角の相関グラフ作成で一目瞭然となります。
(1ラップ走行分データを積算、横X軸に左右G、縦Y軸に操舵角)
ハンドル右切り(+Y)で右G(+X)が上昇していく、カウンターステアをあてると右G領域(+X)で操舵角は反対の負の方向へ(-Y)。ハンドル左切り(-Y)で左G(-X)となる。

オロフソン選手、黒沢元治選手は+Xと+Y、-Xと-Y領域の波形が多い。
カウンターステアが多い選手は+Xと-Y、-Xと+Y領域の波形が多く追加される。

走行中データー計測でセッティング時間大幅短縮と車両状態が管理が出来るように、またドライバー評価だけでは不明な部分が見える様になった。

以上の内容をニスモ業務発表会で報告たところ好評、高評価でした。
翌年のレーシングスククール・ザウルス車には、計測器を使用したドライバー運転診断が追加された。それと実走行データー計測の重要性が認識され、その後の計測器購入が容易になった。

数年後に軽量小型のデーターロガーが販売され、走行中のデーター計測は常態化、パソコンを使用しリアルタイムで車両走行状態を管理する時代へ進化しました。

HR31グループAレース車のパワーステアリングとデーター計測についてのインタビュー記事です。 auto technic 1989年9月号抜粋



最下段に私と後輩の名前が載っています。(クリックして拡大すると読めます)

私のモータースポーツ歴史&ル・マン24時間レースの思い出

全日本ツーリングカー選手権の思い出 『HR31スカイライン』①

全日本ツーリングカー選手権の思い出 『HR31スカイライン』②

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ブログ一覧 | レース・ラリーの思い出 | その他
Posted at 2012/08/17 18:01:48

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この記事へのコメント

2012年8月17日 19:04
いつも興味深く読ませてもらってます。
オロフソン選手が病気で亡くなられたことを知った時はただただ残念な気持ちでした。
テクニックは一流、人間的にも立派な方だったと伺っていました。
実際にレースに携わっていた方のブログを見ることが出来るのは幸せです。
今後とも宜しくです。
コメントへの返答
2012年8月17日 19:23
日本でのオロフソン選手はNo.2ドライバーが殆どでしたが、彼自身がセッティングをすると予選も速いです。

長谷見さんの記事のなかで『彼は一発の速さこそありませんでしたが…』は間違いです。
走法の違いから長谷見さんセッティングだと、オロフソンにとっては弱オーバーなので予選プッシュは困難です。

文句も言わず、色々なことにトライしてくれました。最高に素晴らしい人格の持ち主でした。
私はオロフソン選手と少しのスウェーデン語ですが会話を楽しみました。

2012年8月17日 19:28
これからも裏話を宜しくお願いします。
コメントへの返答
2012年8月17日 19:35
昔のことなので思い出すのが大変で、ブログ作成に時間がかかります。

出来るだけ頑張ります。
2012年8月17日 21:55
この当時のRonやオートテクニックは良く読んでいました。
鈴木亜久里さんてF-1やSGTではホンダのイメージが強いんですが
元は日産のDrで車のカタログにも登場していたんですよね(笑い)。
今で言うテレメトリーなどの電子制御技術の発達で
(日産はF-3のCAエンジンの頃からやっていたとRonで読みました)
日本の車やレーシングカーは長足の進歩を遂げたんですよね☆。
オロフソン選手って亡くなっていたのですか、初めて知りました、
ご冥福をお祈り申し上げます。
コメントへの返答
2012年8月17日 22:04
亜久里選手のニスモとの付き合いはF3から始まりました。

当時の亜久里さんは雨が大の苦手。
『車を壊しても良いから走ってこい』で鍛え上げました。

その後F1まで登り詰めるとは思いも寄りませんでした。
2012年8月18日 1:07
毎回楽しくも勉強になる記事ありがとうございます! (^^

オロフソン選手懐かしいです!
ボクにとってはGr.A時代を象徴するドライバーの一人でした。

オロフソン選手がどのチームでも良い成績を残されていたのは、ドライビング技術の素晴らしさだけでなく、その素晴らしい人格のおかげでもあったのかと納得致しました。
コメントへの返答
2012年8月18日 11:01
読んで頂き有難う御座います。

国内レース、ラリー、海外レース、ラリーのドライバーで沢山の方と接してきましたが、人格、ドライビング共に素晴らしかったのはオロフソン選手です。

知っている方、ファンの方も多かったんですね。コメントがあり、オロフソンも喜んでいるでしょう。

2025年4月23日 17:40
初めまして、こんにちは
4輪銀輪使いの?Randonneurと申します
高校生の頃、GTS-Rの記事を見てすごいマシンが出るんだなと興奮しました
1991年、大森のNISMOの外にリコーR31が展示されてました
食い入るように見たのを覚えています
その後、書物やビデオでGTS-RのグループAを見てカッコいいなぁ~と
惚れ込みました。
私は生粋のサラブレットであるR32 GTーRよりも
都市工学からはじまり最後はシエラと張り合うようになったGTS-Rの成り立ちが好きです。

アンデルスオロフソン選手
最近気になる事があります
それはデイトナ優勝の時のメンバーから外れている記事が多いことです
運転しなかったといってもエントリーしていたのだから
名前を外してしまうのは歴史の歪曲に感じます
すみません、オロフソン好きの独り言でした。

コメントへの返答
2025年4月23日 20:58
今晩は。
NISMOファクトリーは現在横浜にありますが、私の勤務時は大森でした。1991年に来社有難う御座います。

受付で声を掛けていただければ、説明に行けたかも?です。
GTS-Rの開発は最初から最後まで担当しました。
R32 GT⁻Rの開発は日産本社内で。私はGTS-Rのデーター提出、問題点、改善点等全て伝えました。現場の声が一番ですから。

オロフソン選手は非常に温厚でやさしい人でした。メーターの動きをちゃんと見ていた、このコーナーで油圧が少し下がる、ブーストの変化等細かく伝えてくれました。データーレコーダー要らないような?感じでした。ステアリングを切る速さが日本人は早過ぎ?雪道を高速で走る感覚。切れ角と横Gの立ち上がりがリニアでした。。むやみに変速せずギア固定でアクセルコントロトール。ターボ車の運転?日本人は回転が高いギアを常に選ぶ、従ってシフト回数が多くなりタイムロス。車とタイヤにやさしい運転でした。

また長くなりそうなので取り敢えず返信です。

2025年4月24日 18:03
こんにちは、お邪魔いたします
オロフソン 初めてその名を見たのはJSPCかJTCだったと思います
気難しい(と、言われてました、紙面では)長谷見さんと長くパートナーを組んでいたので人にもマシンにもあわせる事が出来る柔軟なレーサーだったんだろうな~と印象を持っていました。

私は太田哲也さんが好きでクラッシュとリバースはバイブルです。
オロフソンが太田さんと同じチームで頑張ってたのが最後の記憶ですね
数年前に訃報がありましたがまだ55歳だったんですね
亡くなるには早すぎましたね。

長くてもいいので面白い裏話、期待しています笑

プロフィール

「[整備] #セレナeパワー RECARO LS オレンジグラデーション取付け https://minkara.carview.co.jp/userid/1375955/car/2926139/6461738/note.aspx
何シテル?   07/17 21:59
tetsuzardです。よろしくお願いします。 昔、○○会社でモータースポーツ関係の仕事をしていました。 2023年10月末で退職、現在は年金生活です。 ...
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