
前回の「Acropolis Rallyの思い出」ラリー編に続き、今回はラリー車製作編をお伝えします。
ラリー車は前年度の反省点、国内テスト結果、他イベント結果の最新情報に基づき製作します。
本番ラリー車作りは担当制にしたほうが良い車が出来るということで、この時期の私はギリシャ担当でした。
1.NISSAN 240RSラリー車開発
PA10ラリー車の実績があったので、NISSAN 240RSラリー仕様車は早期にベースが完成しました。
(PA10と240RSは車体のフロア、サスペンション型式が同一)
そこでPA10ラリー車開発の話を少し述べます。
PA10生産車等から、日本の道路舗装率向上で大幅な軽量化、薄板化、耐久実験基準緩和→軟弱車体となり、ラリー車開発は大変な状況となった。
(KP710生産車までは車体が強く(鉄板が厚い)、溶接追加補強程度でラリー車が完成)
その後の生産車はタイヤ性能向上と軟弱車体の反省もあり、車体剛性(操安性向上)と軽量化の両立へと進行。
PA10ラリー車の開発初期は満足に走れませんでした。
①.特にリアが4 link SUSPということでBRKT-Link、Member破損、Rear Floor亀裂(長さ50cm~70cm級の亀裂も有り)、Rear Fenderのバックリング発生、Strut Tower亀裂等々です。
②.ラリー用車高アップでRear SUSP振動(ジダンダ、ワインドアップに似た振動)が発生しトラクションが掛からない。
その対策として
・一部のPanel板厚アップ品採用で特別にラリー用PA10生産車を生産ラインで製作。
・車高の違いにより、Rear Link Pivot位置を選択出来る様に2穴化。
・Rear LWR Link車体側(室内側)に三角補強Box追加。
PA10ラリー車実績;1981年世界ラリー選手権シリーズ総合第2位
1981年世界ラリー選手権 NISSAN PA10 総集編commercial film
PA10の経験内容をNISSAN 240RSの200台生産車に盛り込みました。
そしてラリー車は仕向地によりStrut Tower Panel 2枚合わせ、補強板、アルゴン追加溶接を追加。
2.本番ラリー仕様車製作
NISSAN 240RSベース車総分解→ホワイトボディ状態で補強溶接・Roll Bar組込み→サンダー掛け→
塗装→Harness組込み、Brake配管、燃料配管→各部品取付け
全車馴らし走行→長谷見&星野氏によるチェック走行実施→ギリシャ向け搬出
2.1.1985年Acropolis Rally仕様概要 (記憶が薄れてきているので間違いがあるかも…。)
TransmissionギアレシオはD仕様と称するものをAcropolis Rally仕様として私が設定。
以前はA、B、C仕様の3種を10数年使用、(A~C仕様は国内レースサーキット向けに設定していた)
その後のラリー車は全てD仕様を採用することとなる。
その他の仕様もギリシャ担当の私が決定。
・Transmission;F5D77A-D(Caseは71B用でギア軸間距離77mm、シンクロ無しドッグクラッチ、
フランジ継手、PROP SFTを外してもオイルは漏れない)
・Rear Axle Case;二重管補強、BRKT Link周辺補強、Hub BRGはテーパーローラー
・Final Drive;H190アルミハウジング、レシオ5.429、LSDイニシャルトルク6kgm(Safariは20kgm)
・FR & RR SUSP;Acropolis Rally専用Shock減衰力別タンク付、Springバネレート可変
・FR Strut UPR;キャンバー、キャスター可変式、ピロボールマウント
・Knucle Arm;トー変化特性、キャスタートレール変更
・Steering Gear;R & Pギア
・FR Hub Cace;アルミ合金(初採用)
・Tension Rod;前側ピロボール
・Transverse Link;長さ延長&補強品
・RR Link;片側ピロボール、片側ラバーブッシュ(ラバー高度アップ品)
・Brake Rotor;ベンチレーテッド、MTG Bell;アルミ合金
・Brake Caliper;ロッキード?(忘れた)
・前後ブレーキバランス調整;Reducinng Valve採用(油圧調整)
・Brake Hose;テフロン
・FRP部品薄肉品(FR & RR Bumper、Hood、Trunk Lid)
・FR Door WDW;窓スライド式(レギュレーター無し)
・ポリカーボネートWDW薄肉品(サイド、リア)
・FR WDW;合わせガラス
・Over Fender;柔軟性がある樹脂の薄肉品
・Roll Bar;高張力鋼管
・Engine;280ps、ドライサンプ、エアクリーナー無し(エアホーン金網付き)
・B & B製多板クラッチ
・PROP SFT;3ジョイント両端フランジ継手
・燃料タンク;60ℓ、L字型安全燃料タンク
・スペアタイヤ;1本積、一部で無し(軽量化)
・一部のスペシャルステージでレース用スリックタイヤ使用
・軽量バケットシート
・Roofベンチレーター付き
・無線機、インターコム、ラリーコンピューター、マップランプ、時計タグホイヤー、消火器
・Battery;小型品
・Alternater;高出力品
・Lamp;CIBIE製
・Harness;全てラリー専用品
・Road Wheel;ENKEI製
・Tire;日本DUNLOP
・油脂類;Castrol、SHELL、昭和石油
ラリー&レース車製作工場の写真(雑誌Racing on・2009年1月号抜粋)
時代はNISSAN 240RS前のPA10 & 910ラリー車、S110シルエットフォーミュラ・レース車
本番ラリーサポート編は次回に投稿予定です。
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