週刊ポストの今号はリキの入りが違うのではないだろうか。
タイトルは『「恐怖の放射能」の嘘』です。
何せ「覚悟の総力特集」なのだそうだから。
特集ページにはもっともらしい基調文が載ってます。
原発問題への編集方針か。
内容を抜粋で紹介すると下記のようなかんじ。
①冒頭。
新聞テレビは政府東電の発表たれ流し」であり「政府の危機管理能力の欠如」「東電隠蔽体質」というばかりで型通り。
最近は原発擁護の片棒まで担いでいると批判。
②返す刀で他の週刊誌が「放射能汚染がひどい」「放射能でみんな死ぬ」と書き立てるのは
センセーショナリズムであり、煽りネタを探しているだけと切り捨てる。
③これらの「陣営」に共通するのは「知識の乏しさと科学的リテラシーの低さ」とし「本誌は科学的データと専門家の知見」を重要視する
「本誌は他のメディアが報じられなかった真実を書けた」と自画自賛。
④恐怖を煽る原子力研究者の言は「反米・反日活動家の言」であり、過去の論文から紹介すれば「朝鮮は日本の植民地支配の犠牲となり、創氏改名、母国語禁止、天皇崇拝等を強制された」等々唐突に引用。
⑤「専門家」の肩書きで科学者達が完全に否定する話を広めるのは許されない。イデオロギーとからめるのはよくない、と。
⑥
今回の事故による放射能汚染で子供が「奇形」や「遺伝子異常」で生まれる可能性は「ゼロ」だといっても過言ではない。
⑦政治家、官僚、大メディア、週刊誌が広める嘘とデマに翻弄されてはいけない。
本誌は無謬だとか完全だとかいうつもりはないが、バイアスや心情、利権に基づいた報道はしない。
nishitaga的に咀嚼してみるのにポイント箇条書き。
1)原発事故の矮小化が編集方針の大きな柱である。
基本「放射能汚染も原発事故も怖くない、たいしたことない」という基調で書く。
が、福島で避難させられている原発震災避難者達。
浪江町2万人
大熊町1.1万人
楢葉町0.7万人
飯館町0.6万人
広野町0.5万人
川内村0.2万人
葛尾村0.1万人
南相馬3.5万人
これら被災者の生活が出てこない。
あたかも存在しないかのような総力特集の紙面構成は逆にセンセーショナルでさえある。
ポストは被災者を意図的に無視している。
事故の矮小化に不都合な万単位の避難者が邪魔なのである。
2)打倒民主党政権がもう一方の柱である。
旧来の保守イデオロギーの色合いが濃い。
何かにつけて民主党の揚げ足取りに余念がない、というかなりミミッチイのが基本編集方針その2。
あたかも原発が民主党によって日本に導入され無軌道に増やされてきたかのような勢いで書く。
さらには東電批判がきわめて優しい。
発送電分離等、電気業界の根本的再編につながるような電力会社に厳しい記事は見当たらない。
そしてきわめて特徴的な点は矛先が自民党に向かないように注意深く紙面を構成していること。
自民党の批判はしない。
ポストはこうした人たちの感覚、意見を代弁する。
責任論をどこまでも回避し、手続き論で因縁ふっかける、なんともあきれたチンピラゴロツキ政治主義。
3)卑怯で無責任。
「今回の放射能汚染で、子供が「奇形」や「遺伝子異常」で生まれる可能性は「ゼロ」だといっても過言ではない。」と書いたその10行後に「本誌は自ら無謬、完全というつもりはない」と書いて見せる。
これはもう編集方針そのものが卑怯者としか言いようがない。
福イチから100km圏に住む僕らが最も敏感な部分について「可能性ゼロ」と書いておいて、すぐその後ろに「完全、無謬ではない」からなどと書くのは何か。
僕らを振り回して喜んでいるのか、はたまたこれまた恐ろしくもみみっち過ぎる責任逃れか。
安全だと言うならもっと具体的に書け。
前述の浪江町、大熊町、楢葉町、飯館町、広野町、川内村、葛尾村、南相馬の避難者の皆さんは避難なんかしなくても安全で、胎児・妊婦に全く影響がないよ、と書けるとでも言うのか。
4)差別的。
基本的に社会的弱者に冷たい。
「福島から避難する母親はノイローゼ。メディアの煽りの被害者である彼らを救え」と書くが、ノイローゼという物言いは差別ではないのか?
子供を心配して放射能から逃れようとする「福島から避難する母親」を「ノイローゼ」と表現するのは何か。
ポストは子を思う親の気持ちを病気だと言って笑うのか。
それとも東北人、被災者を馬鹿にしているのか。
東北人は原発受け入れて金もらったんだから黙って被爆していろと思っているのか。
これからも事故が起きて被爆しても東北ならいいんじゃないと思っているのか。
ああそうだ。
原発は地域差別だ。
だから腹が立つ。
東京では危険だけど福島なら宮城なら安全だという。
東京の人は被爆すると危険だけど、東北人は被爆してもいいという明確な地方差別。
『ご提案』
今回の放射能汚染がたいしたことないと言い切るのであれば、ご提案いたしたく。
編集部を福島市の信夫山の麓に置きその社員と家族全員を福島市内年間20mSvレベルの地域に住まわせ、これから10年間全員の健康レポートを掲載するというのはどうか。
食事はすべて福島産に限るが、私は決して鬼ではないので基準値以下のものであれば可とするさ。
そういうのを覚悟の総力特集と言うのではないか。
5)安全デマゴーグとしての週刊ポスト。
目くらましにフォールアウトの記事書いている。
「科学的リテラシー」云々言うなら、86年のチェルノブイリ原発事故後の90年のがん発症率の約20ポイントもの跳ね上がりに全く触れないのはなぜか?
40〜44歳男という極めて狭いレンジで発ガン率を母数取りするのはなぜか。
がんの発症部位は公開しないのはなぜか。
フォールアウトによる発ガン率に変化はないから今回の事故も大したことないよ、という結論のために使えそうな部分だけデータを抜いて紙面構成したのではないか?
そんな雰囲気がプンプンである。
それでもチェルノブイリ原発事故の部分は隠しようもなかった。
だから意図的に無視した。
だとすればこれはもはや「悪質な安全デマゴーグ」である。
買ってしまったことを猛省中しつつ、週刊ポストはもう買わないことを誓うのであった。
腹立たしいからこのへんで書くのを止めるが、これほどセンセーショナルな出来事が起きているのに、なぜ矮小化するのか。
なぜその危険性を真っ先に読者に伝えないのか。
なぜ原発のために生命と資産の危機に立たされている人たちのことを総力特集に真っ先に取り上げないのか。
原発事故の矮小化と民主党の悪口と福島から避難する人々をノイローゼ扱いするのが総力特集って・・・絶句。
ああ、『週刊ポストの編集方針は東北棄民』なのだろう。
もしくは『空白の地図やむなし』か。
そう考えるとなるほどと思える内容と方針の酷さでした。
買っちゃいけませんな。
下記はwikiから転記。ポストの記者の家族、子供達は受動喫煙しまくりで育っているのか?
2006年11月17日号「受動喫煙は子供の発がん率を低下させる」との特集記事を掲載したが、その論拠が問題論文であったことから、2006年12月9日号の週刊現代において「誤報」との批判が行われている。
ポストの見出し)
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