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池田雄二のブログ一覧

2012年09月29日 イイね!

近江幸治「日本民法展開(2)特別法の生成――担保法」考

近江幸治「日本民法展開(2)特別法の生成――担保法」『民法典の百年〔1〕―全般的観察』(有斐閣、1998年) 181頁以下については以下の点で示唆をえた。自動車に関連する部分もあるので、ここでも紹介しておく。

1.工場抵当法は財団抵当のような煩雑な財団目録を作成する必要がないため、大いに使われ、拡大の一途をたどる生産過程の重要与信手段として中心的位置を占めた(195頁、197頁)。

2.鉄道抵当法施行後翌年(1906年)に幹線鉄道が国有化されたため、弱小地方鉄道を除き、鉄道財団抵当の重要性は急速に失われた。また財団抵当は大企業になるほど手続が煩雑になるので利用されない(197-198頁)。

3.立木抵当権設定登記数は極めて少ない。その理由は土地抵当権が立木にも及ぶからではないか(201頁)。

4.農業動産抵当は目的物となる農業用動産を所有する農民が上層部であり、そのような農民は土地をもっているので利用せず、加えて登記の対抗力に問題があることと、流動的な農業用動産だと特定動産に抵当権設定する反って不便で利用を高めなかった。また経済構造の進展にともなう金融制度の多様化により農業動産抵当に依存する必要もない傾向にある(206-207頁)。

5.自動車抵当法の立法理由は自動車買い替えの資金調達の要請である。背景として戦後復興のため自動車が酷使され、老朽化し、保安上の観点から新車に更新させる必要があった。他に短期少額の事業用運転資金の調達という要請もあった。立法前は所有権留保、譲渡担保が利用された。立法後は著しい利用があったが、その後所有権留保が興隆し、現在は全く利用されない。原因は量的生産による車両価値の低下である。また実行方法も所有権留保の方が簡易迅速である(207-208頁、211-212頁)。

6.航空機抵当法は航空機は高額動産でその購入にあたって航空会社にこれに見合う担保物件を所有していないので、買い入れる航空機自体の担保化の発想へと自然になった。現在、航空機購入はリース形式で行われるので、現在の利用はあまりない(209頁、212頁)。

7.建設機械抵当法は戦後は建設工事が拡大の一途をたどり、工費節約、工期短縮のために機械化が要請されたところ、機械購入のための担保物件に乏しい建設会社のために建設業者の資産の大部分を占める建設機械の担保化が講ぜられた。現在は、港湾作業のフローティング・クレーンを除き、登記されることは極めて稀で、かつ建設機械もリースが盛んであるし、直接金融が今は主流であるのであまり利用されていない(209頁、212頁)。

8.動産抵当三法(自動車、航空機、建設機械)の目的物は質権の対象とはならない。これは法律関係の錯綜の防止と抵当制度の普及により自動車輸送の振興を図る趣旨である(210頁)。

8.企業担保法の立法理由は、①財団抵当を利用できる企業が限定されていたため、その利用が認められない株式会社にも企業を構成する財産を一体として担保に供する途をひらく。②財産組成物件は法律上制限さっれていたから、企業財産を一体として担保化し、その担保価値を発揮させようとした。③財団抵当手続の煩雑さの回避。しかし信用度の極めて高い企業に限定したので利用されなかった。しかしそういう企業は倒産の恐れがないからそもそも担保の必要がない(213頁以下)。

9.昭和40年代頃まで間接金融が主流だったが、昭和40年代後半から生産の飛躍的増大により国際的信用を獲得し、海外からの金融自由化と市場開放の波をうけたが、これを契機に大中小企業は直接金融に移行し、間接金融を凌駕した(218頁)。

10.仮登記担保は譲渡担保が割と早くから暴利を貪るメリットが多くなくなり、代物弁済予約に逃げて行ったので、戦後に利用が集中する。仮登記担保法以後は利用されなくなったといわれるが、債権者が不動産の場所的利益に着岸する等の目的をもつときに有効な担保手段となる等の幾つかの理由で抵当権と併用あるいは単独で盛んに利用される(223頁、227頁)。

11.流質禁止は質権が農業関係で重要な担保方法であったために衆議院の審議過程で挿入された(226頁)。

-分析-
2.については細かいことは知らないものの、同様の感覚をもっていた。一方で1.については特殊担保で継続的に利用されたものはないと思っていた。
3.も同感。
4.は農業動産抵当が利用されなかったこと、またその理由として救済対象であった農民層と制度にギャップがあったことは様々な教科書類でも言及されるが、その他は興味深い。それと農家ではなく、漁業者の漁業用船舶の担保化は本法によって利用されているともきく。
5から8は異論など存在しない。5は少し調査したが、浅かった。
9.はもしかとしたら集合動産担保の拡大と関係するかもしれない。
10.だけは逆に現在はほとんど利用されないときく。確か師匠からも利用されなくなるのを予想して立法化されたと何者かから聞いたと伺ったが・・。10.で言及される理由だと戦後も買戻特約付売買契約が利用されるはずだが、衰退した理由をどう説明したらよいのか。不真正買戻特約付売買契約=売渡担保の受け皿になったということならば、かつての私の調査と同じで理解できる。
11.は初耳だ。第9帝国議会審議で言及されたか。記憶にない。
Posted at 2012/09/29 02:01:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | 法律 | クルマ
2012年08月25日 イイね!

フランス1980年5月12日の法律-所有権留保売主の取戻権(みんカラ版)

所有権留保条項付売買契約の倒産法上の取り扱いについて、売買契約における所有権留保条項の効力に関する1980年5月12日の法律第80-335号Loi n°80-335 du 12 mai 1980 relative aux effets des clauses de réserves de propriété dans les contrats de venteは買主の売買代金完済前に倒産した場合、以下の通り、売主は取戻権を有すると定めた。

「第1条 1967年の法律第65条に以下の文言を付加する。
『代金の完済まで所有権の移転を中断する条項を付して売却された商品で、この条項が、当事者間で、遅くとも商品の引渡のときに、確定した書面で合意された場合も同様とする〔=取戻ができる〕。』
第2条 動産の取戻は、裁判上の整理または財産の清算を開始する判決の公示から起算して4カ月以内に限り、これをすることができる。
第3条第3項 所有権留保条項を付して売却された商品は、買主の貸借対照表中資産の部に、明確な下線を付して示されなければならない。当該売買に対応する債権も、同じく、売主の貸借対照表中資産の部に、明確な下線を付して示されなければならない。」。

 判例は当初、所有権留保取引における買主の店舗内に商品が入り、明確な占有をえた場合、当該商品は買主の外観的支払可能性la solvabilité apparenteの要素の一つになる。したがって買主破産の場合、売主は所有権留保条項を買主の破産に対抗できないとしていた[1]。つまり破産では、売主という1個人の利益よりも総債権者の公平・平等がより重視された。
 その後、下級審はこの破毀院判例を支持するものと支持しないものとに分かれ、後者は信用売買の発展を考慮し、買主に一定の信用を供与した特定売主の保護を強調した。
 しかし破毀院は1934年に従前の立場を維持して、下級審における対立は決着した。ただし破産宣告前に取戻請求がされた場合にはこれを認める判例も出された[2]。
このように判例は動産売主の取戻権を原則として否定したために、個別的に好ましくない事態が生じており、そうした背景から動産売主に一定の優先権を認めるいくつかの特別法が制定された。例えば、フランスの自動車質権者の独自性-ルジェの項で紹介した1934年の法律による自動車質や設備品質権者の権利の概説-ルジェの項で紹介した1951年の法律による設備品質等である。
 本法律は特別法による他動産売主が債務担保債権者と扱われる解釈を覆した。その背景としては倒産処理法の基本法源である、裁判上の整理[3]、資産清算[4]、個人の失権[5]および破産についての1967年7月13日の法律第67-563号Loi n°67-563 du 13 juillet 1967 sur le règlement judiciaire,la liquidation des biens,la faillite personnelle et les banqueroutes下の二つの深刻な事態があった。第1に、留保所有権者が買主倒産時に何らの優先権も与えられていないので、供給者は信用不安に陥った商人に商品供給をしなくなる。そのため商人倒産の時期が早まる。第2に、特に、中小企業の場合、そうした商人に商品供給を継続すると、商人倒産の場合に連鎖的に供給企業まで連鎖倒産してしまう。以上を救済するために商品供給者に取戻権を認めることが考えられた。
 第1条は、動産預託ないし寄託者に取戻権を認める1967年の法律第65条に、所有権留保売主もこれらの者と同様に扱う一文を追加したものである。同条の解釈は厳格にである。「代金の完済まで所有権の移転を中断する条項」という文言により代金引換でする商品引渡の合意は文言に含まれない。また所有権留保条項が停止条件か解除条件かについて議論があるが、本条は前者であって、代金不払の場合には契約が解除されるという合意は解釈上、本法の適用はない。目的物は「商品」とあるが、これは動産に限る。その目的物は現物で存在している必要がある。このため代替可能物の場合には特定措置を講じておく必要がある。書面が必要とされるのは、取戻権行使は債権者に配当される資産を毀損するので、時期に遅れて所有権留保条項を締結する詐害的行為防止のためである。したがって書面には合意の日付が必要である。
 第3条の「下線を付して」については、貸借対照表が公示される場合に必要とされる。しかしこれを行わなくても特別の制裁はなく、所有権留保条項の効力に影響はないと解されているという。
 なお第三者との関係について、所有権留保売主は、買主が賃貸している土地に備え付けられた商品に対する不動産賃貸人の先取特権、運送業者の先取特権、留置権などの対抗をうける[6]。


--------------------------------------------------------------------------------

[1]Req., 21 juill.1897, D.P.,98.1.269.
[2]Com., 22 mai.1935, D.1935.313; Req., 1er juill.1937, Gaz.Pal. 1937.2.368;Com., 24 mai.1948, D.1949.13.
[3]「裁判上の整理」はこの1967年の法律以後、1985年まで存在した制度。支払停止状態が裁判所によって確認された債務者について更生可能と考えられた場合に適用された(山口俊夫編『フランス法辞典』(東京大学出版会、2002年)"règlement judiciaire"”)。
[4]「資産清算」は1967年の法律以後、1985年まで存在した制度。支払停止が裁判所によって確認され、かつ適正な強制和議も不可能なため、裁判上の整理も認められない債務者破産faillteの状態に適用された手続(山口俊夫編『フランス法辞典』(東京大学出版会、2002年)"liquidation des biens")。
[5]「個人の失権」は裁判上の更生手続に伴い、商人または手工業者artisanまたは当該企業の法律上もしくは事実上の経営責任者dirigeant de l'entrepriseについて、企業経営に携わる権利および選挙制による公職への被選挙権などを裁判所が剥奪する措置(山口俊夫編『フランス法辞典』(東京大学出版会、2002年)"faillite personnelle")。
[6]以上、特記した他は西澤宗英「所有権と取戻権」判タ450号(1981年)34頁以下によった。
Posted at 2012/08/25 22:18:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 法律 | クルマ
2012年08月13日 イイね!

ドミニク・ルジェ「有体動産質」目次(みんカラ版)

Contrats Concurrence Consommation n° 6, Juin 2006, 13

Le gage de meubles corporels

Etude par Dominique LEGEAIS
Professeur à l'université René Descartes Paris V(パリ第5大学教授)

Sommaire(要約)
1.
1. Choix fondamentaux opérés(実現された基礎的選択)
2.
A. - Adoption d'une nouvelle terminologie(新専門用語の採用)
3.
4.
B. - Abandon du caractère réel du gage(動産質の要物性の放棄)
5.
C. - Maintien de la diversité des sûretés réelles(物的担保の対立の維持)
6.
7. - Conception pluraliste des garanties réelles retenue.(採用された物的担保の多元的概念)-
8. - Coexistence des gages avec et sans dépossession(占有・非占有動産質の共存).-
9. - Coexistence du gage et de la propriété-garantie(動産質と所有権担保の共存).-
10. - Distinction des sûretés civiles et commerciales(民事と商事の担保の区別).-
11.
2. Les gages avec dépossession(占有動産質)
12.
A. - Le gage avec dépossession de droit commun(一般法の占有動産質)
13.
1° Constitution du gage(動産質の設定)
14. - Perte du caractère réel(要物性の喪失).-
15. - Exigence d'un écrit(書面の要請).-
16. - Assiette de la garantie(担保目的物).-
17. - Biens fongibles(代替可能物).-
18. - Le constituant(設定者).-
19. - Créances garanties(担保権者).-
2° Opposabilité du gage(動産質の対抗力)-
20.
3° Effets du gage(動産質の効力)
21.
a) Droits et obligations du créancier avant l'échéance de la créance garantie(被担保債権弁済期前の債権者の権利義務)
22. -
23. - Obligation de conservation du créancier(債権者の保管義務).-
24. - Droit de percevoir les fruits(果実収取権).-
b) Mise en oeuvre de la sûreté(担保権の実行)
25.
26. - Indivisibilité du gage(動産質の不可分性).-
27. - Droit de préférence(優先権).—
28. - Droit de se faire attribuer le bien(質物配当権). –
29. - Admission du pacte commissoire(当然解除条項). –
30. - Reconnaissance du droit de rétention(留置権の承認). –
B. - Les gages avec dépossession spéciaux(特別な占有動産質)
31.
1° Le gage commercial(商事動産質)
32.
2° Le gage automobile(自動車質)
33.
3. Les gages sans dépossession(非占有動産質)
34.
35.
36.
37.
A. - Le gage sans dépossession de droit commun(一般法の非占有動産質)
38.
1° Constitution du gage sans dépossession(非占有動産質の設定)
39.
40. - Créances garanties(被担保債権). –
2° Opposabilité du gage sans dépossession(非占有動産質の対抗)
41. - Publicité sur un registre(登記上の公示). –
42.
3° Effets attachés à la garantie(担保権に付随する効力)
43. - Classement des créanciers(複数債権者の順位). –
44. - Gages portant sur des choses fongibles(代替可能物を対象とする動産質). –
45. - Absence de droit de rétention(留置権の欠如). –
B. - Le gage des stocks sans dépossession du Code commerce(商法典の非占有在庫動産質)
46.
1° Constitution du gage des stocks(在庫動産質の設定)
47. - Créances garanties(被担保債権). –
48. - Assiette de la garantie(担保目的物). –
49. - Exigence d'un écrit(書面の要請). –
2° Opposabilité du gage des stocks(在庫動産質の対抗力)
50. - Publicité sur un registre(登記上の公示). –
3° Effets de la garantie(担保の効力)
51. - Obligations du constituant(設定者の義務). –
52. - Remboursement anticipé de la créance(債権の期限前弁済). –
53. - Réalisation de la garantie(担保の実行). –
54. - Conflit avec d'autres sûretés(他の担保権との競合). –
Posted at 2012/08/13 18:02:50 | コメント(0) | トラックバック(0) | 法律 | クルマ
2012年08月08日 イイね!

第2章-第4章レジュメ案(みんカラ版)

第2章 フランス動産質制度の発展
比較検討の意義:我が国近代質制度の母法の展開をしり、動産担保における問題解決手法の参考とする。
第1節1804年のフランス民法典における動産質
一般的傾向:厳格的規制。
1.質契約の要物契約性(第2076条)。
2.対抗要件における書面主義 (第2074条第2075条)。
3.流質禁止(第2078条):我が国と比べて、契約後の約定を禁止せず、質物配当権=公の帰属清算を認める等規制は遥かに緩い。
主な規制緩和の需要:主に要物契約性の緩和=非占有型動産質、将来物動産質の容認。
1.要物契約性の緩和
第三者占有委託による運用(第2076条)。またこれによる重複設定
・占有移転は鍵の交付=擬制的占有移転でクリア(判例も認める)。
・第三者としては倉庫会社、第三者の機能を果たす専門会社(Auxiga等)←イギリスのDockを参考とした、一般倉庫の寄託された商品の取引に関する1858年5月28日の法律によって利用促進。
将来物担保:将来物動産質権設定を動産質契約の予約と解する←流動動産では動産質権設定時が入庫時点となる欠点がある。

第2節 特別法による動産質制度の発展
一般的傾向:1804年民法典の規制緩和。
1.商事質(1863年5月23日の商法典改正):商業取引における迅速性のニーズに対応。
・書面作成義務免除(第91条第1項)→実質的効果により質物の特定性が有名無実になり、質物が包括的であることも可能に。
・簡易な実行方法(第93条):設定者への催告後8日以後の質物売却(流質は禁止)。

2.営業財産質(1898年3月1日の法律による民法典第2075条第2項創設1909年3月17日の法律):商事質でも緩和されない占有移転の要請を緩和。
目的物(第9条):営業財産=招牌、商号、賃借権、得意先(本質的構成要素)。
営業用家具、営業財産の運用に供せられる有体設備ないし什器、特許権、免許権、商標、意匠、一般に営業財産に付属する工業所有権ないし文芸所有権(任意的構成要素)。
対抗要件:登記←非占有移転質の実現
欠点:任意的構成要素だけを担保にできない。

3.農業証券法(1898年7月18日の法律1906年4月30日の法律)
目的物:農業生産物、特にワイン。
設定方法:裁判所の登記簿における登記と裁判所振出の証券発行←非占有質の実現。
↓結果
農業生産物を利用した農業事業者の資金需要に大いに応えた。

4.自動車質(自動車牽引車の取得を容易にする1934年12月29日の法律)
目的物:新車のみ←自動車総保有量増加が目的。
設定:
・売主や購入代金提供者に対する動産質が法定で設定される←我が国の動産売主の先取特権に近い。
・自動車の受領証による占有移転の擬制(占有移転の非物質化)←実質非占有質の実現。

5.設備品質(設備品の質入に関する1951年1月18日の法律)
目的物:設備品←設備品だけに非占有質設定できない営業財産質の不便の補完。
対抗要件:必要的と任意的の二つがある。
必要的対抗要件:登記。
任意的対抗要件:明認方法←即時取得遮断効、追及効を認める。

6.その他
1913年8月8日のホテル営業証券に関する法律と1932年4月24日の原油証券法等他映画フィルム等。前者は期待したほどの利用はない。

第3節 2006年民法典改正以後の動産質
一般的傾向:1804年民法典を一般法において規制緩和。
1.要物契約性:廃止。非占有動産質を認める(第2338条)。
・対抗要件は完全電子化された登記(国営電子ファイル)。商事裁判所国民会議[1]が運営 (非占有型質権の公示に関する民法典第2338条の適用のために定められる2006年12月23日のデクレ)
・非常に簡易・迅速な登記を実現
・第三者の調査が極めて容易(別添資料画像編参照)→非占有動産質目的物の第三者による動産即時取得遮断←第三者の登記確認義務にまでふみこんだ。
↓結果
盛んに利用されている。
2.将来物に対する担保権設定:非占有移転動産質で可能に(第2342条)。
3.書面作成:緩和されず、反対に成立要件になった。
「旧第2074条 前条の先取特権は、第三者に関しては、債権金額の表示ならびに動産質に供する物の種類および性質、もしくはその品質、重量および寸法の付属一覧表を含む、適法に登記された公署証書または私署証書がある限りでなければ、生じない。」。
「新第2336条 動産質は被担保債権、動産質に供される財産の量並びに種類もしくは性質の指示を含む書面の作成により完成する。」。

小括
1.フランスでは動産担保における需要を1804年民法典の枠内で解決しようと努めた。
2.1で対応できず、特に必要な動産については数多くの特別立法が規制緩和をした。
3.2までの沿革が2006年民法典における動産質の大緩和へと結実した。
4.必要な緩和が国によってなされたので民間が所有権移転担保で規制回避する必要を我が国ほどには感じさせなかった。

第3章 動産譲渡担保の法的構成
 集合動産譲渡担保への注目の意義、需要からその法的構成をどのように考えるべきか。
第1節 動産譲渡担保の法的構成
集合動産譲渡担保への注目の意義再確認:
1.倉庫証券質を利用した集合動産質入よりも自由な担保
2.倉庫証券質では対応できないものの担保化。
3.倉庫証券質では実現できない重複設定の実現
法的構成の検討:現代の需要に適合する法的構成。特に3.が問題となる。
担保権構成:重複設定は担保権構成では実現可能。
所有権構成:第三者が清算金債権譲渡担保権を設定することで同じ効果を挙げられるか?
欠点
・第1順位者と後順位者で担保目的物が別々になる:第1順位者は集合動産そのもの、第2順位者は清算金発生を条件とした停止条件付清算金債権が目的物になる。その結果→
・目的物が違うので後順位者による動産そのものを対象とした実行がありえない。
・第1順位者が弁済を受けても動産譲渡担保権としての順位上昇が考えられない。
結論:所有権構成では担保権構成と同じような効果は上がらない→集合動産譲渡担保が求められる意義ないし需要からあるべき法的構成を選択するならば、担保権構成を採用すべき。
既存の判例との整合性
整合的な判例
最判昭和41年4月28日民集20巻4号900頁:動産譲渡担保権を更生担保権とした。
最判平成11年5月17日民集53巻5号863頁:動産譲渡担保権者の物上代位権を認めた。
最判平成18年7月20日民集60巻6号2499頁:動産譲渡担保権の重複設定を認めた。
反する可能性のある判例
大判大正9年9月25日民録26輯1389頁:弁済期後か定かではないが、債権者が目的建物を第三者に譲渡し、登記も了した事件で、第三者は善意悪意を問わず、所有権を取得するとした。
最判平成6年2月22日民集民集48巻2号414頁:弁済期限後の譲渡担保権者からの贈与による譲受人について(未清算)、譲受人が背信的悪意者でも確定的に所有権を取得する←しかし不動産事例。
最判平成18年10月20日民集民集60巻8号3098号:弁済期前の譲渡担保権者の債権者による差押に対する設定者の第三者異議の訴えを受戻を要求した上で認める←これも不動産事例。
結論:動産不動産を同じ法律構成で一貫して理解しようとする学説に対して実際の判例は実は動産不動産を同じ法律構成で考えていない可能性が高い。→少なくとも動産について担保権構成を採用することと矛盾する判例は見当たらない。

第4章 担保権構成の枠内での重複動産譲渡担保の運用可能性
第1節 現行制度での運用可能性
問題

1.複数対抗要件の併存:現実の占有移転、占有改定、動産登記←担保権者相互の認識不能
解決策
あいまいゆえの突破口←登記に一本化されると反って重複設定が不可能になる。
フランスの第三者占有委託を利用した動産質権重複設定の応用
我が国で動産質重複設定を可能とする制度があるか?
第355条:「同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。」←起草者もフランス同様の運用を想定して設置。↓
設定:管理する第三者への鍵の交付等擬制的占有移転で現実の占有移転を充足(近世から我が国でも実践の歴史がある)→動産譲渡質の重複設定と構成→第355条準用。
・倉庫に入れない動産→各業界で考えるしかない。
実行:設定者への通知義務を定める第354条の解釈上、重複設定の場合には利害関係のある他の担保権者への通知義務を課す。
倉庫営業の規定の準用等による処分。

第2節 残される問題
管理者の不誠実(設定順序の恣意的変更等)の防止:いくつか考えられる。
1.動産登記制度を譲渡担保の担保権構成を前提して運用する。
欠点:「譲渡」という形式と実質が登記という公の形で概念矛盾を起こす。
2.動産登記制度を動産質あるいは動産抵当に拡張する。
利点:現行フランス式であり、電子ファイルは我が国の技術で十分に可能なはず。無難。
欠点:譲渡担保でなくなる。
3.動産質に書面主義を導入し、書面を管理者に交付する。
欠点:
・譲渡担保でなくなる。
・書面の厳格性によっては迅速性を損なう。
結論:動産質の緩和あるいは抵当権の動産への拡張以外で譲渡担保という自由を維持したまま、現行制度以上の運用可能性を模索することは困難。

完[2]

------------------------------
[1]RECHERCHE DE GAGE SANS DEPOSSESSION.
[2]本記事は多少、僅かながら自動車に触れたのでここでも公開することにした。本記事は2012年7月14日の民事法研究会における報告時に配布されたレジュメの一部である。第1章は、当日に多少の修正が加えたが、ほぼ同内容のものを第1章第1節第2節レジュメ案の項で公開してある。ここでは公開しない。
Posted at 2012/08/08 23:57:49 | コメント(0) | トラックバック(0) | 法律 | クルマ
2012年07月04日 イイね!

第3章報告原稿案(みんカラ版)

第3章 フランス動産質制度の発展[1]
 前章によって我が国においては国による規制に対する民間側からの規制緩和の手段として所有権移転担保が現れ、集合動産譲渡担保への近年の注目がこの潮流の中で必然的に生じるにいたったことを論じた。これは本当にそうであろうか。もしそうであるならば、国による規制緩和がなされる国では所有権移転担保は我が国のように発展しないはずである。そこで我が国質制度の母法であるフランスにおいてはどうであったか。

第1節 民法典上の動産質の発展
 民法典上の動産質は我が国民法上の質の母法であるだけにその内容は厳格である。しかしその発展過程は我が国とは全然別のものとなった。

第1款 1804年のフランス民法典における動産質
 動産質について起草者は被搾取者の保護というよりは質制度の厳格な規制を意図したといわれる。その主だった内容を摘示すると、質契約の要物契約性(第2076条)である。同条は文言上も第三者対抗力について定めているに過ぎないようにみえるが、長らく占有移転を契約有効要件を定めたものと解され続けた。この要物契約は学説では通説の地位を失ったが、判例は変更されなかった。とはいえ要物契約を対抗要件の次元で解しても、結局は占有移転をせずには済まされないので、実務上は問題とならないとも評価されている。実際上、占有移転を避けられないのはどの見解でも同じである。そこで占有移転を当事者が合意した第三者に占有委託するという運用がなされた(第2076条)。またこの第三者占有委託を利用して動産質権の重複設定のニーズにも応えてきた。ここでの第三者は主に倉庫会社や第三者の機能を果たす専門会社によって担われた。占有移転方法についても鍵の交付等、いわゆる擬制的占有移転といった我が国古来からと同様の工夫がみられ、判例もその有効性を認めている。
 また占有移転の要請は将来物に対する質権設定にとっても足枷となった。しかし将来物を契約の対象とすること自体は禁止されないため(第1130条)、このようなものへの質権設定を動産質契約の予約と解することで、経済界のニーズに対応していた。ただ変動する在庫の場合、新たな在庫の動産質権設定時点は、入庫時点となる困難があったが、これは旧法中は解決しなかった。
次に対抗要件については我が国と異なり、占有移転に加えて確定日付のある私署証書または公署証書の作成およびその登記が要請されている(第2074条第2075条)。この点が規制緩和されることはなかった。
 実行についても我が国と同様に流質禁止に相当する規定があり、これも動産質発展の足枷と評価されるが、我が国と比べて規制は緩い。というのは契約後の約定を禁止しないし、質物の配当権、つまり公の帰属清算を認めているからである。後者は直ぐに処分が可能な質物について効果を発揮したという。

第2款 2006年民法典改正以後の動産質
 規制的だった1804年民法典の動産質は2006年の改正により規制緩和された。まず設定におけるよう物契約性は廃止され、非占有の動産質が認められた(第2338条)。しかもこの登記は、非占有型質権の公示に関する民法典第2338条の適用のために定められる2006年12月23日のデクレによって商事裁判所国民会議が運営する国営電子ファイルによって完全電子化され、非常に簡易・迅速な登記を実現した。しかも第三者の動産即時取得を遮断したので、第三者の登記確認義務にまでふみこんだものとなった。これによって非占有動産質は盛んに利用されるに至っている。
 占有移転の要請が撤廃されたのに加えて、将来物に対する担保権設定を認めるに至った(第2342条)。
 書面作成については緩和されることはなく、それ以上に成立要件になった。

第2節 特別法による動産質制度の発展
 民法典が制定された1804年から2006年の改正までの202年間、フランスは様々な特別立法によって動産質制度の規制緩和を図った。
 まず1863年5月23日の商法典改正による商事質創設である。その意義は商業取引における迅速性のニーズに対応するものであったといえる。特に商事質については書面作成義務を免除した(第91条第1項)。さらに書面作成義務が免除されたことの実質的効果によって質物の特定性が有名無実になり、質物が包括的であることが可能になったとされる。もっとも占有移転の要請の緩和はない(第92条)。
実行面において商事質では設定者への催告後8日以後の質物売却という簡易な実行方法を定めた。もっとも流質は容認されない(第93条)。
 特に占有移転の要請が商事質の創設によっても緩和されない点に関しては、特に経済界のニーズが大きい動産については様々な特別立法によってその緩和がなされていった。代表的なものを幾つかあげてみよう。
 まず営業財産質である。営業財産とは招牌、商号、賃借権、得意先を本質的構成要素として必ずこれを含み、任意的構成要素として営業用家具、営業財産の運用に供せられる有体設備ないし什器、特許権、免許権、商標、意匠、一般に営業財産に付属する工業所有権ないし文芸所有権とする動産の集合体である。これは営業財産の質入に関する1898年3月1日の法律による民法典第2075条第2項創設によって実現された。対抗要件は登記であるので非占有移転質を可能とした。なおこの1法文だけでは不備が多く、営業財産の売買および営業財産質に関する1909年3月17日の法律という特別立法が制定された。
 次に1898年7月18日の農業証券法は農業生産物について証券を利用した質入を可能とした。これはワインを主とする農業生産物を利用した農業事業者の資金需要に大いに応えたという。
 次に自動車牽引車の取得を容易にする1934年12月29日の法律は自動車の受領証によって占有移転を擬制し(占有移転の非物質化)、自動車の売主や購入代金提供者に対する動産質設定を可能とするものだが、これは法定質権であり、我が国と比較した場合、動産売主の先取特権の方に近いものだった。
 さらに営業財産質では設備品だけを独立して非占有質に供することができない不備を補完するものとして制定されたものが、設備品の質入に関する1951年1月18日の法律である。この法律では必要的対抗要件である登記に加えて、即時取得を遮断し、追及効を認める明認方法を任意的対抗要件として法定したことに特色がある。
 動産証券に関する1983年1月3日の法律は、有価証券が重要な信用の源泉となり、かつこれらが容易に担保化されることを目的として定められた。これは目的物である有価証券が、日付の記され、かつ保持者によって署名された宣言がなされることで成立し、発行法人もしくは信用仲介機関によって備えられる特別口座に振り込まれる(第29条)。フランスではすでに有価証券は非物質化されており、ここではすでに物理的占有移転を観念できないものとなっている。
 その他、1913年8月8日のホテル営業証券に関する法律と1932年4月24日の原油証券法等他映画フィルム等それぞれ当時の経済界のニーズによって非占有質が創設されている。ただし前者は期待したほどの利用はなかったという。

小括
 以上によりフランス動産質では厳格な1804年民法典上の動産質規制をその枠内での解釈、運用によってとりわけ占有移転の緩和という経済界のニーズに対応するだけではなく、それだけでは対応できず、特に必要なものについては数多くの特別立法によって動産質の規制緩和を図り、2006年の動産質の大緩和へと結実したといえる。このような動きは我が国のような国による規制と民間からの緩和という流れとはほとんど真逆だったいえる。またその原因も経済界のニーズに対する国の関わり方が我が国と真逆であったことに求められるだろう。つまり必要な緩和は国によって質制度においてなされたので民間が所有権移転担保をそれほど必要としなかったといえる。我が国はこれとは逆で、国が規制緩和をしないので民間独自で規制緩和をする必要があった。以上によって我が国において所有権移転型担保による集合動産の担保化やその重複設定の実現が必然であったこと、そして反対にフランスが所有権移転担保によらずに質制度によって実現したことの必然性もまた理解されるだろう。

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[1]他、第1章第4章は別に更新されている。ここでは更新されない。
Posted at 2012/07/04 22:03:31 | コメント(0) | トラックバック(0) | 法律 | クルマ

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