連載シリーズ「昔の名前の車たち」、再開です。
トヨタ編 その2は、名前に関して旬な車です。
次期ヤリス。
3代続いたヴィッツと言う名を改め、ヤリスに改名する事になりました。
もっとも、海外では初代ヴィッツの時からヤリスを名乗っていた為、世界統一名を名乗る事にしたといったところ。
その点では、最近のマツダ車の車名と同じですが、ヤリスの場合はちと事情が異なります。
現在、トヨタはWRCを戦っていますが、このマシンが YARIS WRC。
そう、ヴィッツではないのですよ。
好成績を挙げても、国内ではダイレクトにPR出来ない。
以前にも、トヨタではそんな展開がありました。
1997年から トヨタは国内では販売していないハッチバックのカローラでWRCを戦いました。
1997年のテスト参戦を経て、1998年から本格参戦したカローラWRCは、最終戦のラリーGBで、ゴールまでわずか数百メートルの地点でまさかのエンジントラブルが起きるまでは、ドライバーズ、マニュファクチャラーの両タイトルをほぼ手中に収めていたのですが……。(←要はチャンピオンを獲れなかった)
翌年、マニュファクチャラーズタイトルこそ獲得しましたが、F1挑戦を機にその年を以ってワークス活動から撤退。短い活動期間もあって、国内でカローラのWRC活動の注目度は高くありませんでした。
今回のヤリスWRCによるWRC参戦は、豊田章男社長の肝入りですから、そう簡単には撤退しないでしょうし、ヤリスに改名するのが得策と判断したのでしょうね。
そんな、次期ヤリス、現行のヴィッツは、パブリカを祖としていて、今まで、スターレット、ヴィッツと2回改名している、トヨタのメインストリームとしては珍しい車です。
ちなみにパブリカでググると、“もしかして” でこちらに飛ばされます。
もはや『パブリカ』は誤検索ワードなんですね。orz
パブリカ
「大衆車」を意味する英語「パブリック・カー」を由来とする造語。
水平対向2気筒エンジンは、スバルより前に出した国産初の水平対向エンジン搭載車でした。
意欲的な車ではあったものの、コスト意識から装備の貧弱さも目立ち、顧客は軽自動車へと流れてしまいました。
この時の苦い経験が、カローラ登場時の「隣りのクルマが小さく見えます」という、ライバルより立派に見える車作りの礎になったのかもしれません。
パブリカは、モデルチェンジして2代目も作られましたが、ユーザーはそのカローラに流れました。
2代目生産中にパブリカ・スターレットとして登場したのが、後に後継となる
スターレットです。
スタイリッシュなクーペを持つKP47で印象に残っているのは、富士フレッシュマンレースなどのTSクラスのレース車です。
当時、サニーの独壇場だったTSクラスに風穴を開けるべくトヨタが取ったのが、OHVだった3KエンジンのDOHC化でした。
後にその事を知った私は「おいおい、エントリークラスのレースでそこまでやるのかよ!?」と思いましたが、本気になった時のトヨタの徹底ぶりを思い知ったのがこの時でした。
パブリカの生産が終わり、正式に(?)トヨタのエントリーカーとなったスターレットは、スタイリッシュなクーペベースの車から実用的な2BOXスタイルとなりました。
既にFFが一般的になりつつある中、スペース効率に不利なFRを踏襲しますが、そのことが却って走り屋には受けます。
そんな風潮を察してか、トヨタもCMでスターレットの走りを強調。
当時のTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)の総帥、オベ・アンダーソンが『悪魔の梯子段』と呼ばれるワインディングロードを駆け抜けていくCM。
たった1.3ℓのOHVエンジンの車とは思えない走りですね。
スターレットは、FF化されてからも、ターボモデルを追加するなどスポーティな車であり続けました。
そんなスターレットが、世界戦略車である
ヴィッツに変わったのが1999年。
この変更は、モデルチェンジ以上の意味が有りました。
そのコンセプトの違いから、スターレットの継続販売も検討されたようです。
しかし、トヨタは新しいコンパクトカーに賭け、スターレットだけではなく、ターセル、コルサ、カローラⅡをも廃止します。
ヴィッツは大ヒットし、プラッツ、ファンカーゴを加えた3車種は日本だけではなく、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーも受賞しました。
個人的には、ファンカーゴという車も評価していて、後継車が作られなかった事を残念に思っています。
造り続けていれば、今も独自の人気を誇るルノー・カングーのライバルになれたのにと思うのですがね。
さて、サラッと流した
ターセル・コルサ・カローラⅡにも触れておきましょう。
FF化に慎重だったトヨタは、最多量販車のカローラはFRのまま作り続け、その一方でターセル・コルサという新車種でFF化に挑戦したのです。
ただ、トヨタ初のFF車は、現在一般的なエンジン横置きのジアコーサ式ではなく、縦置き方式を採用しました。
SUBARUの水平対向とは違い、通常の直列4気筒エンジンで、しかもエンジンの下にデフがあるという二階建て方式であった為、ボンネットが高いスタイリングになってしまいました。
この縦置き&二階建て方式は、カローラⅡを加えて3兄弟となった二代目にも踏襲されました。
一部で『トヨタ ファミリア』と揶揄されるほど、大ヒット中のマツダ ファミリアに似ていましたが、CMキャラクターにジョン・マッケンローを起用したカローラⅡはヒット車となりました。
ちなみに縦置きFFというと、SUBARUがそうであったように四輪駆動化が容易です。
その利点を生かして
スプリンター・カリブと言う派生車も生みました。
3代目になると、一般的な横置きFFに改められ、と同時にスポーティモデルにはリトラクタブルヘッドライトが与えられました。
ターセル・コルサ(・カローラⅡ)で面白いのは、ホイールベースが初代の2,500mmから、2,430mm、2380mmと短くなっていった事ですね。
新しくなる度に車体が大きくなるのが普通なのに、逆に短くなっていったのですから。(但し、車の大きさ自体は小さくなったわけではなく、幅は広くなっていっています)
ターセル・コルサは5代(カローラⅡは4代)に渡り作られましたが、前述の通りヴィッツ登場によって生産を終了しました。
ちなみに、最終モデルのグレードに
VIT-Z というグレードがありました。
既にヴィッツ(VITZ)の登場を予告していたんですね。(笑)
新しく登場するヤリスには、パブリカ、スターレット、ターセル・コルサ・カローラⅡ、そしてヴィッツの名を引き継いでいくのです。