先日、スープラに関するブログを書きました。
新型スープラに感じる違和感について述べたのですが、それじゃ、スープラってどうあるべき車なのか? って言うのを書いてみたいと思います。
あ、トヨタが考えるスープラが、今、まさに形になっている訳で、このブログで述べるのは、タケラッタが個人的に考えているだけのスープラ考ですのであしからず。
まず、今回のスープラが17年ぶりの復活であり、メーカーであるトヨタがわざわざ復活させたのですから、それはかつてのスープラからのヘリテージであり、歴代モデルから受け継ぐべきものがある事を意味しています。
では、歴代のスープラがどんなモデルであったのかを確認してみましょう。
スープラを語る前に、まずセリカから始めなくてはいけません。(スープラは、セリカの派生モデルとして生まれた)
初代セリカは、私も何度かブログに取り上げていますが、日本初のスペシャリティカーとして生まれました。
1977年、初のモデルチェンジを受けたセリカはA40/50型となります。
私、正直言って、この型のセリカは好きではありません。先代セリカの精悍さが微塵も感じられず、ダルな印象しか感じません。
デザインはトヨタアメリカのデザインオフィスであるキャルティ(CALTY)が担当しているのですが、アメリカではこのデザインがスポーティと評価されヒットしたそうです。(この時、アメリカ人とは美意識が違うのだなと痛感しました)
話が逸れましたが、この型のセリカをベースに初代スープラが誕生します。
それがセリカXXです。
日本ではセリカXXでしたが、アメリカでは「Xの列記」が映画の成人指定を意味するため、セリカ・スープラを名乗りました。(まだセリカの名も付いていました)
そもそも、この車はアメリカの販売店側から、日産のフェアレディZのような車を要望されて誕生したのですが、写真でも分かる通り、Zのようなスポーツカーではなく、ラグジュアリークーペでした。
2代目(A60)スープラも、国内ではセリカXXと言う名でした。
先代が、いかにもラグジュアリークーペ然としていたのに対し、グッとスポーツ度を増したスタイリングになりました。
これは、同時期に誕生した初代ソアラが、高級ラグジュアリークーペのポジションを引き継いだ為、スープラはスポーツカー寄りの車にすることが出来たのです。
当時は直6エンジンを積んでいればハイパワー&スポーティだった時代、ライバル(先代セリカで「名ばかりのGT達は、道を開ける」と言って挑発していたスカイライン)が125ps、ターボで145psだった頃、2.8ℓDOHCエンジンで170psと言うのは衝撃的でした。(もっとも、国内で売れたのはソアラの方でしたが)
3代目(A70)からは、国内でもスープラを名乗る様になります。
この代からは、外板パネルもセリカとの共通部品は一切なくなります。(まあ、セリカがFFに変わったので、共通化のしようが無かったのですが)
フロント周りに先代のイメージを残したデザインですが、名前を変えた事もありキャッチコピーは「TOYOTA 3000GT」として、セリカ派生のイメージを払拭し、往年の名車トヨタ2000GTのヘリテージを利用した戦略を取りました。
この代からグループAレースにも参戦、スポーツイメージも高めました。(意外なところでは、トヨタでラリーと言えばセリカのイメージがありますが、このスープラでラリーを戦っていた事もあります)
4代目スープラ(A80)は、スープラ史上初めて5ナンバーから決別したワイドボディで登場しました。
ワイドになっただけではなく、全長やホイールベースも詰められ、よりスポーツカーらしいディメンジョンとなりました。
3ℓ直6ターボの2JZ-GTEエンジンは、自主規制上限値の280psに達します(トルクは44.0kgf・m)。
但し、2JZ-GTEエンジンの実力はこんなものではなく、チューニングの素材として800psだとか1000psだとか信じ難い数字を叩き出していて、チューニング業界ではいまだに現役バリバリのエンジンです。(なんでも、アメリカでは新型スープラにこの2JZ-GTEを載せ替えるなんていうショップもあるそうです)
A80は、生産中止以後も長らくトヨタを代表するスポーツカーの座にあり、SuperGTも暫くは生産を終了したスープラで戦っていました。
また、映画「ワイルド・スピード」で、今は亡きポール・ウォーカーがA80スープラに乗っていた事もあり、北米でもカルト的な人気もあります。
こうして振り返ってみると、日産のフェアレディZが初代のS30からスポーツカーとして人気だったのに対して、スープラは初代のラグジュアリークーペから、代を重ねる度に段々とスポーツ度を増していったのが分かります。
スープラの開発責任者である多田CEが、スープラのヘリテージを語りますがそれはA80スープラのものでしかないと思います。(新型スープラにA80以外の車のヘリテージが有るとしたら、それはA70ではなくトヨタ2000GTでしょうね)
それが間違っていると言うつもりはありません。実際、A80開発時には、A70から踏襲する事よりも、新しいスポーツカーを作る事を考えた筈ですから。
ただ、A80と同じ程度の車でしかないのはどうなんでしょうか?
スープラの語源はラテン語で「超えて」や「上に」を意味します。
実際、歴代のスープラは、先代を大きく超えた車でした。
今回のA90スープラはA80と同じ3ℓ直6ターボです。数字上は280ps→340psで大きく超えていますが、これはA80の280psが自主規制上カタログ数値を抑えているだけで、実際は大して変わらないのでは?
それを、多田CEはあたかも「A80と合わせました」とでも言いたげにヘリテージを口にします。
しかし、本来なら先代を超える事こそがスープラの伝統ではなかったのか?
BMWの有り物が3ℓ直6ターボしかなかっただけで、多田CEの言うヘリテージは言い訳にしか聞こえないのです。
ま、だからと言って M5のV8ターボを積めとは言いませんけどね。(大きく、重くなってしまうし、それではスープラではない)
私は、同じ3ℓ直6ターボでも、M3/M4に積むS55クラス(次期M3/M4に積むと言われるS58?)のエンジンを積んでほしかったと思います。
考えても見てください。最新のスポーツカーなのに17年も前に生産を終了した車のエンジンである2JZ-GTEに載せ替えるなんて商売が成り立つんですよ?
それって、新型車―――それもスポーツカーの開発者にとって屈辱的な事じゃないかな?
環境性能が声高に叫ばれる昨今、スポーツカーを出してくれた事自体は称賛に値すると思います。
ただ、17年の歳月を越えて復活したにしては、あまりにも物足りない車、それが新型スープラです。
最後に、タケラッタ的に納得できない点が1つ。
何でMTが無いんや!