信号ダッシュでポルシェに負けたインテグラ。
今思えば、いくらVTECエンジンとは言え、たかだか1.6ℓのエンジンで、3.6ℓという大排気量エンジンを積んだスポーツカーに勝とうと思うなんておこがましいのですが、当時の私にとってはVTECは魔法のエンジンで、F1のHONDAは絶対でした。
そんな私が次なる車に選んだのは、当然のようにHONDA車。
インテグラでお世話になっている、当時のベルノ店の上級スポーツカー、プレリュードでした。
先代がデートカーとして大人気だったプレリュードですが、その先代ですら 末期はシルビア(S13)に圧倒され、販売は低迷。
そこで、デートカーだった先代から、2.2ℓのVTECエンジンを搭載し、スポーツ性を一気に高めたスポーツクーペに生まれ変わります。
しかし、販売状況は新型に代わってもパッとしませんでした。
そこでホンダは、当時、大人気だったF1 マクラーレン・ホンダのドライバー、アイルトン・セナをCMキャラクターに起用するのです。
当時のF1をリアルに体験している人なら分かるでしょうが、日本でのセナ人気は凄まじいものがありました。
それがホンダ乗りで、且つ F1大好きのタケラッタになると、私にとってセナは
神
でした。
セナ様に「Just move it !(さあ、走ろうか!)」と言われたら、はいっ!と答えてしまうようなものです。
頭の中では、セナ様がステアリングを握ったのと同じ車に乗る事に決めていました。
既に、インテグラで一度値引き交渉を経験し、その後の雑誌(月刊自○用車の ×氏のコーナー等)で身に付けた知識を総動員し、買い替える気満々の気持ちを隠して、営業担当と対します。
「タケラッタ(の本名)さん、そろそろ買い替えなど如何ですか?」
「(それそれっ! プレリュードちょうだいっ!) いやぁ、インテグラも気に入ってるからねぇ」
「実は、このGW期間で工場のラインが見直され、プレリュードが改修されるのですが……現行モデルの在庫なら良い数字が出せるのです」
「(マジっ? いいじゃん、それで決まりだね!)へ、へぇー、そうなんだ。でも型落ちになるんじゃねぇ」
「型落ちと言っても、内装が少し変わるくらいで、マイナーチェンジまで行かない程度の部分改修ですから型落ちには見えませんよ。今でしたら……」
提示された数字に、すぐにでも注文書にハンコを押したい私でしたが、少し渋ってみせていると、お店の奥から店長が現れ
「もし宜しければ、今、そこに置いてある展示車を破格の条件でお譲り出来ます。展示車ですので他のお客様が触ったりしてはいますが、未登録の新車です」
どうも、話を聞いていると、オプション満載、さらに、このクラス(プレリュード)にしては珍しいMTと、展示車にしては特殊過ぎるその車は、展示車として発注されたものではなく、他のユーザーが発注したもののようでした。
ただ、色味が違った。
そのユーザーが望んだのはトリノレッドパールだったのに、ミラノレッドだったのです。
トリノレッドパールと言うのは、ワインレッド系のメタリックで、私の乗っていたインテグラのカラーリングでした。
それに対して、ミラノレッドは鮮やかな赤。
所謂真っ赤って奴です。
ただ、私が買うと考えていたのは、その真っ赤の方のミラノレッドであり、MTと言うのは渡りに船。
しかも、展示車となれば、実車がありますから、最短納期が期待できます。
後は条件。
店長が話に噛んでいるだけに話が早い。
車両値引きが45万、中々のものです。
しかし驚くのは、さらに下取りアップ額の35万が追加された事でした。
この時点で、ポーカーフェイスは崩壊しました。
GWを挟んだ為、最短納期ではなかった気がしますが、それでも3週間くらいで納車日を迎えた記憶があります。
インテグラから乗り換えたプレリュードは、当時、税制が変わって急に増えた3ナンバー故に、道を選ぶことになります。
4WSにより、驚くほど小回りが利きましたが、物理的な車幅の広さは変わりませんからね。
室内は、インテグラがクーペの割には広々としていたのに対し、プレリュードは完全にプラス2でしかなく、しかも前列から伸びるセンターコンソールボックスが後席までをも分断するというレイアウト、実用性は皆無でした。
トランクも、リアハッチのインテグラと違い独立型のトランクで、絞り込んだリア周り故に、容量の少なさは予想できましたが……絞り込んだリア以上にトランクの内装が妙に分厚く、横幅方向は「軽自動車?」と思う程狭かった。(センターコンソールや、トランク内装は、早々に改善されましたので、相当に不評だったのでしょう)
一方で、走りはと言うと、排気量アップでトルクは増しましたが、2.2ℓの排気量の多くはストロークアップで得られたため、インテグラのB16エンジンほど圧倒的な、超高回転まで回る感じはありません。
車格が上がった事は、同時に重量も増したため、私には魅力とは映りませんでした。
でも……
カッコイイんですよ!
このスタイリングだけでも満足感はありました。
また、インテグラのB16ほどの超高回転まで回る感じはありませんでしたが、逆に言えば B16は回るだけでトルク感はありませんでしたから、H22エンジンはトルクフルでありながら、レッドゾーンまで一気に回る素晴らしいエンジンでした。(B16は、レッドゾーン以上まで回ろうとするエンジンでした)
その満足度は、それから暫くは車の買い替えなど、全く考えられないほどお気に入りでした。
プレリュードとの別れは、転職が契機でした。
車通勤の為、燃費の悪い車は敬遠していた私にはターボ車はNGだった(今のダウンサイジングターボと違い、ターボ車は燃費が悪かった)ものの、転職で電車通勤となった為、今までとは違う車選びが出来ると思ったのです。
また、そろそろ、年齢的なものもあり、家庭の事を考えて4ドアセダンにしようとも考えるようになりました。
まあ、確かに4ドアセダンを買いましたが、到底家庭的な車とは言えませんでしたけどね。(笑)
そして、ただの車好きだったタケラッタは、車変態へと変わってゆくのでした。(汗)