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*このレポの調査日は2年前のものです。

滋賀県南東部…といえばかつての東海道の難所・鈴鹿山脈が県境を横切り、最近になって一つの高速道路が産声を上げ、そして日本の心臓部から流れる大動脈国道1号線が通る。
......といっても実際にそこを通った者にしか分からないローカルエリアである。
関西のドン大阪、世界遺産のメッカ京都、仏閣寺院奈良、大自然和歌山、港町兵庫と個性ある都市の中で今ひとつ魅力さに欠ける滋賀県ではあるが、こと鈴鹿山脈を攻める道路の中には、かのメッカ和歌山に勝るとも劣らない気迫ある道があるという。

2011年7月30日。まだまだ暑さの厳しい季節の午前8時4分。
滋賀県道182を走っていると、問題の県道との交差点がやってくる。
mapion地図を表示

ストンと落ちたところが県道525。
滋賀県道182を走っていると突然現れる県道看板。
青看なんてしゃれたものではなく、貧弱県道を暗示する黄色とヘキサの看板が、ここから県道が発生することを示している。
mapionではきっちりと黄色表示で県道であることを主張しているが、我が持参の地図ではここから小野というところまでが白線表示となっている。

果たしてこの白線の間に何があるのであろうか…
などという疑問をさしはさむ余裕もなくいきなり本性を現した県道525。
起点早々このような貧弱な様相を呈する。ただ幅員が細いだけではない。
それだけではない何かを感じる。どす黒い違和感を…
そして次の瞬間、その違和感の原因を痛感することとなる。

この日の滋賀県の天気は晴れであったが前日の天気までは調べてはこなかった。
白線県道なので手入れはそれほど頻繁に行なわれてはいない…
といったレベルではなく、つい最近に産み落とされたであろうできたてホヤホヤの落木が全てを悟らせてくれた。

どうも前日に雨が降ったようで、路面は若干ながら湿り気を含んでおり、出来たての倒木も雨によるものだと理解した。
となると、つい最近できたであろうこの崩落もさらに危険な状態になっているはず。
弱りきった地盤に追い討ちをかける先日の雨で車一台を通すのが精一杯なこの状況。
ぎりぎり幅員が生きていたのは運が良かったのだろうか。
しかし万が一ここで引き返すことになると、それは鬼畜の極みである。
驚くほど離合ポイントがなく、車を転回させる余裕は皆無。
このまま何事もなく通過できるのか不安になったそのとき。

いきなり視界がさえぎられた。
今からどこぞの森の中に突っ込んでいくのかといった雰囲気であり
場違いな車が一台そこにたたずんでいる。
しかし県道は間違いなくこのジャングルを突っ切っていくのだ。
てか道はこれしかないので、これを県道と認識せざるを得ない。

そして次の瞬間、とうとう舗装が見えなくなってしまった。
ほんの数Mだけであったが、土砂がアスファルトの上に盛り上がり、そこに水溜りが出来上がってしまっている。
そしてこの異常なまでの落木の量。もはやアスファルト路面ではない。
ただ、このうっすらと見えるわだちが、消えかけている闘争心を維持させてくれる。わだちがなく一面倒木だらけだったら発狂していたに違いない。
僅かながらだがこの道を通る車両は存在しているのだ。

いままで車の両サイドに草が当たるといった道は何度も通ってきた。
しかしこの県道525ではいまだかつて経験したことのないような風景に出会う。
見よこの草ボウボウの度合いを!
もはや逃げ場などない閉塞された空間。貧相なアスファルトが県道の威厳を保っている。
しかし良く見てもらえば判ろう。横だけではない、アスファルトの下からも草の侵食が始まっているのだ。

林道の未舗装路では、このような『わだち草』はよく見る。しかしアスファルトでここまで立派に成長している様はあまり見かけない。
堅いアスファルトをものともせずに突き破るその生命力や凄まじい。
そしてとうとう道幅も1車線を割り込んできた。県道525の最大難所であろう。
こんなところで降車して写真撮影なんかするもんだから右足を
ヒルに吸い付かれたりした。
(ヒルに気付いたのが数時間も後だったのでたっぷりと血を吸われました)

こんなところを通るんだからヒルに吸われていることなど気付くわけがない。
もともとヒルの唾液は麻酔のようなものらしいので、運転中に気付く可能性は100%ないといってよい。
倒木だのヒルだの暗い雰囲気をかもし出す県道525。
しかし、そんな県道に愛くるしいマスコットキャラクターがいたのだ。

サプライズ的に横から飛び出してくる
バンビちゃん
初めそのバンビちゃんは動物防護柵の向こう側(畑側)をひた走っていたが、気がついたら道路側にまでやってきて右の山へと消えていった。
普通に防護柵に入り込まれているあたり、この柵はあまり機能していないようだ。

愛くるしいバンビちゃんと別れを告げると同時に、県道525の最凶区間も終わりを迎えたようだ。
相変わらずの狭さだが先ほどのジャングル地帯を生還した者にとってこの程度はなんのその。

しかしその一瞬の油断で人生の歯車が狂う。
いきなり登場するT字路で案内看板がない。
地図を丹念に見ておけばどちらが県道なのか判るはずだが、最凶区間を突破した安堵感からやってくる油断によってルートの確認を怠ってしまったのだ。
県道は右であるが、ここで私は左折して道を間違えてしまった。

そもそも
案内看板がないということ自体がおかしいわけで。
右折した直後にはちゃんとこのように青看があるのだから、先ほどのT字路にも小さい看板でいいから設置してほしいものだ。
しかしだ。この青看もかなり不親切極まりない。
県道表記がないしこれを見れば誰もが直進したがるのだが県道は左折。
左の行き先に何が書かれてあったのかが気になるところ。

左折後は片側1車線レベルの快適な道路が続き、国道307中在寺で県道525は終了する。
対向車が来たら即オダブツ級の極狭路にヒルとバンビちゃん。挙句の果てに案内表示をなくしての省エネ県道。
県道トレースはかなり難易度が高い道でした。
-走行データ-
距離:324.6km
燃料:13.36l
燃費:24.29km/l