風呂屋

今でこそ各家庭に風呂が有るが、子供の頃には大阪市内の一般

家庭には、風呂が無かった。お金持ちの家にしか無かったね。

ある時間帯になると混むので、空いた時間帯に近所の友達達を

誘い皆で風呂屋に行く。目的は体を洗うと言うよりも、遊びに行

く為にね！

混んでいる時に泳いだり、水の掛け合いやったりすると怒られる

ので、空いた時間に行って遊んでた。

近所の風呂屋は、上がり際に掛け水する水を溜めた浴槽が女湯と

男湯が繋がっているので、潜って女湯に入ったりして、ほんで、

女湯に顔を出そうとして、おばちゃんに桶でモグラ叩きみたいに

頭を叩かれたりした。

お風呂に入って潜って、お尻だけだして「ひょっこりひょうたん

島」とやってみたり、チンチンをだして「潜望鏡」と言うてみた

り、頭を洗ってシャンプーの泡で、鉄腕アトムやお茶の水博士の

頭を作ったりして。終いには桶に、お尻を突っ込み足で漕いで

洗い場と浴槽の間をレース場にしてみたり、ま～無茶苦茶やって

はオッサンに怒られてた。

強烈に印象に残ってるのが、T坊と3人で風呂に入った時、

3人が喋りながら戸を開け風呂場に入った。いつも座る所が決まっ

ている。大人風呂の脇、座れるし風呂に入る時の踏み台にもなる

ところで、入り口側、テレビが見えるから、半分曇りガラスで

半分透明ガラスなので、番台の上にあるテレビが見れる。

入った時おじいさんが座っていたのだが、入ったと同時に立ち上

がり風呂へ入ろうとしたので、3人は並んで座った。

真ん中がT坊だ。座ったと同時にT坊が「うわー、なんやこれ」

と言って立ち上がった。見るとうんこだった。

T坊のお尻はうんこに座ったから、うんこだらけだった。

おじいさんの方を見ると、今まさにお尻が湯船の中に入る瞬間

うんこだらけだった。

「うわ～！ジジイ、ババ（うんこ）尻についたまま風呂に入り

よった」「ほんまや、どないすんねん、風呂に入られへんやん」

ジジイは聞こえて無いのか私達の会話を無視してタオルで顔を

擦った。「うあ～ジジイ、うんこ湯で顔洗とるで」

その頃T坊はシャワーにお尻を突き出し半泣きになりながら

お尻を洗っていた。「もう、今日は風呂に入られへん、シャワー

で我慢するわ」近所の風呂屋や浴槽が２つしかなく２つとも繋が

っていた。ジジイは何食わぬ顔で風呂をあがり着変えていた。

その日は浴槽には入らなかった。自分達は平気で浴槽の中で

小便するのだが、固形の物はやはり思いっきり汚く感じて風呂

の中には入れない、ましてや、浮いていたり底に落ちていたり

している状態を見れば尚更だ！

数日後、また、ジジイと会った。

今度は座るところを確かめたが、同じところには誰も座らない。

ジジイが風呂に浸かった数分後、浴槽の中は茶色く濁った。

「ジジイ、また、ババしょった！」皆が同時に口を揃えて言った

「また、風呂入られへん」すると大人達が騒ぎだした。

ジジイは「私が入る時はなんとも無かったのに、おかしいな」

と言った。私達全員は（お前がババこいたからからや）と思った

番台から店主がきて、「ボイラーの錆びが廻ったみたいです、シ

ャワーの方は暫くたったら元に戻りますんで・・。」と言った。

私達は安心したが、心の中でジジイもう来るな、と思った。