酒乱

私は、酒を余り飲めないので、酔っ払った事が無いのです。

飲みすぎて、気持ち悪くなり、吐いた事はありますが、数えるほ

どしかないです。吐いては飲み、飲んでは吐いてを繰り返せば強

くなるって言いますが、嫌です。吐くと汚物が鼻に来るのです、

あのツンとした臭いと気分の悪さがたまらなく嫌。

なので、強くなれない。酔わないので、皆と飲みに行けば、謝る

のは、私。絡むんですよね、酔っ払うと、喧嘩を売る奴は居る

わ、ゴミ箱を蹴りまくっている奴はいる、オマケに高い所に登

って、バカヤロー！て叫ぶ奴がいる。もう大変、皆の守をするの

わ。その中で、思い出に残るのが、幼馴染のHと飲み行った時。

酒癖が悪くて、絡み酒。喧嘩は売るわ、物を壊すわ、自転車を持

ち上げ乗用車の屋根の上に置くわ、乗用車の上に乗って、その自

転車に乗って降りてくるわ。ヤメロって言っても利かない。

余り言うと切れて、殴り掛かってくるので、切れる寸前で制止を

するのを止める。だから、Hと飲みに行くのは嫌だった。

この日も嫌々行って、帰り道の事、前からアベックが歩いて来

た。男の方はどう見てもヤーさん、すれ違い様にこちらを見て

た。私は例の如く一点だけを見て、相手を見ない。

ドスン、バッターン、Hがすれ違い様に後ろ廻し蹴りを入れた。

相手は諸に顔面に喰らっている「何すんねん、H－！」

「メンチ切りおった」「コラッ！何処のモンじゃ、俺を、○○組

の○○と知ってんのんか、待っとけ」と行って鼻を押さえなが

ら、すぐソコのビルに上がった。組事務所だった。

「コラー！ワレー！」もの凄い勢いで階段を降りて来る靴音と

何人かの怒声、「やばい、逃げろー！」仲間は６人居たが、散り

散りバラバラで必死で、逃げた。後ろを振り向く余裕など無く、

只、怖さだけで、恐らくタイムを計ったら生涯で、１番早かった

だろう、１００Mを１０秒台で走ったのではなかろうか？

私は一人孤独に耐え走っているはずだった、が違った。

明らかに、後ろから追いかけてくる足音が、聞こえる。

捕まったら殺される、もう恐怖心で一杯だ。

踏み切りを越える時に、後ろのヤツがコケル音がした。

しめた、これで、逃げ切れる。と思った時に、

「ショウジ、助けてくれ、足が抜けへん」

Hだ。冗談じゃない、ここで止まったら捕まるやんけ、と思ったが

後ろを振り返った時に誰もいないので、引き返してHの所に行った

「大丈夫かぁ？何してんねん、はよ逃げよ、捕まるでぇ」

「線路に足が挟まって、抜けへんねん、助けてくれ」

よく見たら、線路の隙間に足が挟まっているが、線路と平行に足

を向けると抜けるのだ、本人はアセッテいる為必死で縦のまま

抜こうとしてるが、そのままじゃ、お日様登っても抜けやしない

「H、足を線路方向に向けてみぃ、抜けるから」「アッ、ほんま

や～、ありがとう、ショウジ」

その晩は全員、逃げ切れたが、捕まったらと思うとゾッとする。

これは、後に笑い話になったが、Hの仲間は、実際、梅田で、酔っ

払って、店のウインドウガラスを割り、ヤーさんに追いかけられ

一人、捕まって殺された。警察の発表は自殺だが、自殺するよう

な奴じゃない。雑居ビルの屋上から飛び降り、ゴミ箱の中に落下

しての死に様。屋上に靴が揃えて置いてあったので、自殺とされ

たが、アイツは父親がヤクザで、早くに父親を亡くしている。

父親を偲んで、背中に中学の頃から父親と同じ墨を入れていたの

で、鉄砲玉と間違われて殺されたんだろうと噂になった。

一緒に飲んでた奴らはホトボリが覚めるまで、逃げ廻ってまし

た。次は自分が殺されるんじゃないかって。

酒乱の人は気を付けてね、一歩間違えると、とんでも無い目に合

うから・・。