ショウジのブログ一覧

私の母は字が読めません。正確には、漢字が読めないのです。

幼い時に母親に先立たれ、６人兄弟の長女なので、家事を引き受け学校に行ってな

いのです。

さほど、貧乏では無かったようなのですが・・なぜなら本当の貧乏なら、母と長男

は、この世に居ないと言ってました、結核に侵されたからです。

高価な薬を飲まされて、なんとか生き残ったらしいのです。

それなのに、母は兄弟達の弁当を作って学校に行かせ、家事を一手に引き受けたら

しいのです。

そんな母と父親は見合いで結婚したと言ってました。

父は亭主関白で、母の言う事など聞かずにやりたい事をやってました。

と言ってもギャンブルや女遊び等では無く、欲しいものを買ったりと、お洒落な洋

服や靴を買ったりですが。

母は化粧気など一切なく、参観日の日にも、他の母親は着物を着たり、綺麗な洋服

を着て化粧して来ているのに、割烹着で普段のカッコで来てました。

私は、カッコ悪くて参観日には父親に来て欲しいと思ってましたよ、当時は。

たま～に家族旅行で出かける時によそ行きの服を着て、父に買ってもらった真珠の

ネックレス等を身につけ、化粧をして出かけるのですが、普段化粧などした事もな

い母の化粧は、どう見ても、おてもやん。どうにかして欲しいと思ったものでし

た。

山海で育った父は、母を連れ、春には山菜取りを、夏には貝採りに行ってました。

泳げもしない母は、父が貝を採る姿を嬉しそうに眺めていたのでしょうね。

病に倒れた父を毎日毎日、何ヶ月も病院に弁当を届けてました。

病院食では栄養が付かないと父の好きな焼肉はワザワザ炭焼きにして・・

今夜が山ですと医者に言われ、「山が過ぎれば治るのですか？」と先生に私が尋ね

たら、首を横に振り「身内に連絡をつけてください」と言われて、母に親戚に連絡

すると言うと、未だ呼ばんでもええ、父ちゃんは未だ、頑張ってるからと死ぬのが

信じられないように・・（私もそうでしたが）

家族全員が父の病室に集まり、高いびきで寝ている父を眺めながら昔話をぽつり

ぽつりする母、次女が幼い子３人を連れて来ているので、一旦家に帰るように、

何か異変がある時には、連絡するからと帰し。

それからどれくらい経ったのでしょうか、時々息が止まる父のいびきの話をしてい

る最中に、本当に息が止まった。

私は慌てて父に心臓マッサージをした。

その間に妹は先生を呼びに。

母は父にすがりつき、いつもお父さんと呼んでるのに・・

「アンタ～、ウチを置いて何処にも行かんといてー！」

「ウチも連れて行ってー！」

と大声で泣き叫んだ。

母のそんな姿を見るのが初めてなので凄く驚いた。

直ぐに母は冷静になり、私達に親戚の連絡をするように言い、それから葬式の準備

を。

母は瞬間的に女になったが、子供の前だと気づいたのでしょう、いつもより、気丈

に振る舞い、母親らしい態度になったが、普段、子供の前では父に甘えた事など

一度もない母の態度にビックリしたと同時にこんなに愛されてる父を羨ましく思っ

た。

よく考えれば、父や母は子供の親である前に、男と女であった。