
前のブログで、750ccのボアストローク、圧縮比、乾燥重量比較をしたところ、興味深い結果となったので、同様に80年代の400ccの比較をしてみました。
そのバイクの動力性能の設計意図が見えるためです。
84年以降は59馬力一律規制のはずが、実際には高回転、高出力化による競争が90年頃まで続いているのがよくわかります。バブル景気の株価上昇のような進化が90年頃まで続きました。
○ホンダ
ボアストロークが直4、V4ともずっと同じ数値です。
大人気となったCBXは当時「なめ猫、アラレちゃん、CBX」と言われたほどに。
当時の4発最後発のモデルだけに軽量、コンパクトな設計で、それまでの威風堂々な400とは異なりスポーツ路線が強くなりました。これをベースとした市販レーサーRS400もありました。
後継の83CBR400Fでは外観もスパルタン志向が一層高くなりました。ただ他社が水冷化する中で空冷、非力な印象は否めません。ほぼ同時期のヤマハ、スズキに大きく水をあけられたのが、スペックからもみえます。圧縮比が下がったのは、84年~59馬力規制にあたり調整したのか、REVの追加による影響なのか。でも見た目80年代ぽくて好きです。
動力性能では86CBRエアロあたりでようやく他社同等、完成レベルになっていたようです。でもこの頃は外観がレプリカ路線から離れていき、流れには乗れてなかったように思います。
レプリカ人気ではヤマハとスズキが先行していましたが、88年にCBR-RRの登場でホンダもいよいよ本気になった記憶です。
・81CBX400F 55×42 9.8 173
・83CBR400F 55×42 9.6 174
・86CBR400R ↓ 11.0 165
・88CBR400RR ↓ 11.3 164
・90CBR400RR ↓ 11.3 162
こちらはV型、82年の初期からすでにハイスペック。
同じ時期の空冷4発とは別次元です。
本当に53馬力でしょうか。
他メーカー開発陣のスイッチが入る音が聞こえます。
86VFR400ではカムギア化されますが、動力スペックはそのままです。カタログ59馬力になりましたが。
87プロアームで圧縮アップされて完成されたようです。
89年までに足周り見た目は相当変わったけど、動力スペック上は車重以外、大きく変わっていないとも言えそうです。恐るべし!
・82VF400F 55×42 11.0 173
・86VFR400R ↓ 11.0 163
・87VFR400Rプロ↓ 11.3 163
・89VFR400R ↓ 11.3 167
○ヤマハ
84年のFZ400Rが印象的で、既にハイスペックです。
当時のレプリカブームを牽引していました。
それまでの2ストのヤマハのイメージを見事に変えました。
HY戦争が終わりシェア争いでは譲っても製品では負けんぞ、と気迫を感じます。
86年のFZR400ではたった2年で人気車種のモデルチェンジ。リア140幅の扁平ラジアルタイヤは衝撃でした。ショートストローク化と軽量化も果たしています。
88~89は排気エグザップが追加され、外観も進化しますが、スペックは変わらず。90年型はフルモデルチェンジしてスペックは物凄いですね。88~89年のホンダ勢に対するヤマハの本気を感じました。本当に59馬力でしょうか。
・81XJ400D 51×48.8 9.5 180
・84FZ400R 54×43.6 11.5 164
・86FZR400 56×40.5 11.5 157
・88FZR400R ↓ 11.5 165
・90FZR400RR↓ 12.2 160
○スズキ

82年のFSインパルスはヨシムラサイクロンタイプの集合管でした。スズキは圧縮比が高め、更に年々着実に上昇してます。83年のFWでは水冷化、後継の84年のGSX-Rはクラス最軽量、すでに現在レベルの実力だったことがわかります。バリ伝では秀吉が鈴鹿4耐のベースマシンに選びました。
86年はシリンダヘッドが水冷、シリンダが空冷、ピストン裏に油冷としてかつ軽量です。デザインは2灯→1灯にして、差別化を図ったかと思いきや、87年2灯に戻したり、中身の基本に忠実な実直さと裏腹に外観は頻繁に変わっていた印象です。でもホンダも同じか。しかしヤマハ同様、90年はかなりのハイスペックで締めくくっています。
・82GSX400FS 53×45.3 10.7
・83GSX400FW 53×45.2 10.9 178
・84GSX-R 53×45.2 11.3 152
・86GSX-R 56×40.5 11.5 153
・88GSX-R400 56×40.5 11.8 160
・90GSX-R400R 56×40.5 12.0 167
○カワサキ
男カワサキはZ-GPまで、なんて言われてましたが、その後も他社とは一線をひいてレプリカ路線から離れていたカワサキ。でも82年Z-GPはFXから13kgも軽量化され、続く83GPz 400では同じ空冷ながらショートストローク化されました。
CBXに対抗したのかホンダと同じ数値ですが、空冷でも確実に進化しています。
85年の水冷GPZ400Rはレプリカブームの中、距離を置いたスタイルと高い性能で大人気となり、しばらく継続販売されました。600もありましたがこれは速いです。
88年のZX-4は見た目は地味なれどクラス最軽量、隠れた高性能車でした。しかし時代の流れには逆らえず、男カワサキもとうとう89年には完全レプリカの姿に。ショートストローク化はカワサキが実は一番、他社に一歩も引かないスペックでした。
・82Z400GP 52×47 9.7 179
・83GPz400 55×42 9.7 178
・85GPZ400R 56×40.4 11.4 181
・88ZX-4 57×39 11.5 152
・89ZXR400 57×39 12.1 165
バイクはスペックだけじゃないとは思いつつ、こうして見るとあらためて激しい争いだったんだなと思いました。
89年頃はバイク少年の私もレプリカの進化にそろそろお腹いっぱいでしたが、カワサキからゼファー400が登場、ゼファーショックと言われ、時代が少しずつ変化して行きます。
例えるなら、豪華なケーキやデザートで見るだけでお腹いっぱいになっていたところに、白いご飯と味噌汁が出てきた感じでしょうか。
Z系のリバイバルですが、4輪含めて自社の過去の名車をリバイバルして新たに出すブームのきっかけではないかと思います。
90年代に入り、CB400SF、XJR400等、他社も続いて行きました。当時あいつとララバイ好きだったので、「これ待ってたよ!」と思った記憶があります。
カタログ以上の実力までかけ上った80年代の400ccでした。