ホンダ フィット。初代登場が21世紀の幕開けとなった、2001年。
話題の3代目の試乗機会を得ました。それもベーシックな1.3Lガソリンエンジンモデルと、話題のハイブリッドモデル両モデルに乗せていただきました。まずは1.3Lモデルから。
ホンダ フィット 13G Lパッケージ

フィットの中では最もベーシックな1.3Lです。グレードは13G Lパッケージというグレードで、多少装備のいいグレードとなっています。価格は146.1万円です。
この1.3LにはCVTが組み合わされていますが、2代目同様、トルクコンバーターを介したタイプのものとなっているので、発進はなめらかです。初代のあのギクシャク発進するCVTは何だったのといいたいほど・・・技術は進歩しますね。

走り始めてみれば、1.3Lでまず不満は感じません。CVTとの相性もいいようで、滑らかな走りを味わうことができます。加速したい時も、エンジン音は高鳴りますが、遅れて加速が乗ってくるような嫌なCVTの癖もなく、フィーリングはかなりよかったです。
ただ、1.3Lなので急加速をしたい時などには少し物足りない印象もあります。街中を乗る分には必要十分だと思いますが、やはり余裕が欲しいとなるとこの上の1.5Lかハイブリッドがいいのかもしれません。
全体的に静かなクルマなのですが、一番気になる音はロードノイズです。省燃費用のタイヤを履いているせいもあるのかもしれませんが、もう少しロードノイズは抑えてほしいと思いました。その他風切音やエンジン音は静かでした。
今時珍しい175/70R14というタイヤサイズから想像した通り、なかなかしなやかで気持ちのいい乗り味です。
ハイブリッドは実は60%偏平のタイヤでしたが、乗り味の気持ちよさはハイブリッドよりも1.3Lのほうが上でした。
メーターはハイブリッドのような凝った形ではありませんが、しかし瞬間燃費計も搭載しており、さらに経済運転をしているかどうかの色表示(エコな運転ならばメーター周りが緑に、ガソリンを食うようなアクセルワークならば青になる)が出ますので、省燃費の運転方法を学ぶことができます。
エアコンはLパッケージにはオートエアコンが採用されいて、タッチパネル式です。
これは日産デイズや三菱eKワゴンが出た時も、アピールしていましたがあまり私はこれには賛成しません。
タッチパネルということはスイッチの凹凸がないため、ドライバーは操作しようとすると必ずその方向を見なければなりません。それも、低い位置にあるため、ドライバーは進行方向から大きく目を下げる必要があります。これは安全上あまりいいことではないと思います。
ただ目新しいからということでユーザーを驚かすよりも、もっと機能的に安全かつ扱いやすい方式に変えるべきです。エアコン操作などはよく使うわけですから、ステアリングにスイッチをつけるなり、もっといい方法があるはず。
いいと思ったのはシート。コンパクトカーの中ではかなりたっぷりとした大きめのサイズのシートでした。13Gにはあたりの少し柔らかいシート地でしたが、私はハイブリッドのセンター部が少し硬めの素材で、サイドが革調のシートがよかったです。
室内空間は初代から継承している、センタータンクレイアウト(従来の後席下ではなく、前席下に燃料タンクを設置)とすることでフレキシブルなシートアレンジと、室内の広さを持っています。特に後席のニースペースはかなり増えたように感じました。
もう一つ、フィットでそろそろもう一工夫ほしいところは、車両の先端見切りです。初代からずっとスラントノーズで、ドライバーは車両の先端を見ることができません。特に、このクルマを買うであろう初心者の方にはこのクルマの車両感覚をつかむのには時間がかかるでしょう。
昔ながらの格好悪い棒を立てるのも何ですし、もっと何か先端見切りがスムーズに行なえる方法はないのでしょうか。もしくは、せめて左前だけでもコーナーセンサーを付けるなどの配慮があってもいいのではないのでしょうか。
ぶつかるかぶつからないかの自動ブレーキの前に、それくらいの気遣いを自動車メーカーにはしてもらいたいものです。
しかし、気になったのはその程度で、本当にいいクルマです。
最も安いものが130万円もしないで買えるというのは素晴らしいことです。
私が買うなら、パワー感や走りの楽しみからして「ハイブリッド」ですが、普通に毎日のパートナーとして選ぶのなら、この滑らかな乗り味と走り味の13Gはかなりおススメだと思いました。
ホンダ フィットハイブリッド Lパッケージ

ベーシックな1.3Lエンジンを搭載したフィットの素性の良さを体感して、楽しみにこのハイブリッドに乗りました。

まず乗り込めば、メーターはコンベンショナルな形のメーターだった13Gとは違い、未来的な少し立体に見える変わった形のメーターで少し気分が高まります。メーター右側はマルチインフォメーションディスプレイとなっており、今ハイブリッドがどういう作動をしているかやタコメーター(回転計)などなど、いろんな表示に切り替えられます。

プリウスやリーフのようなシフトレバーを扱い、発進します。しかし、なぜこのスイッチ式のシフトレバーを普通のシフトレバーの位置に配置してしまったのでしょうか。もっといい場所に設置すれば、左右のウォークスルーが可能になり、足元空間も広くなったはずです。
先代のフィットハイブリッドではできなかったモーターのみの発進が可能になりました。ただ、ごく普通にアクセルを踏めばものの10~20km/hほどでエンジンがかかります。
トランスミッションがDCT(デュアルクラッチトランスミッション)で、フォルクスワーゲンやアウディがDSGとして出し始めたころは、発進時のギクシャク感が気になりましたが、このクルマの場合発進が電気モーターなので、スムーズに発進していきます。
アクセルワークを丁寧に(いわば、周りの道路状況に逆らい、周りのクルマに迷惑をかけながらゆっくり発進するようなアクセルワークだと)、40~50km/hまではエンジンがかからず、モーターのみでずっと走っていました(この実験はクルマのいないところでしたため、実際には周りに迷惑はかけていません)。
最初に乗った、1.3Lエンジンでも不満はほとんどなかったのですが、ハイブリッドのこのパワー感とトルク感を感じるとなかなか惹かれるものがありました。

ハイブリッドの切り替えですが、エンジンがかかることが残念ながらわかってしまう微小な振動を感じる場面がありました。先日乗った「アコードハイブリッド」と直接比較するのには酷なのですが、あれほどの滑らかさに期待したいです。
でも、これも案外普通の人は気づかないかもしれません。
DCTの変速速度の速さと、変速ショックのなさは素晴らしかったです。
ただ、このグレードではエンジンブレーキが「L」というレンジしかないのに困りました。7速も変速段を持っているにもかかわらず、ドライバーは「L」というレンジしかチョイスできないのです。
この上の「Sパッケージ」にはパドルシフトが用意されているので、私が買うならこれでしょうが、しかし無用なエアロなどはいらないので、エアロなしでこのパドルシフトだけが欲しいです。フットブレーキに頼りすぎない、こまめなエンジンブレーキを効かせるという観点やマニュアル風に運転を楽しむというポイントからしても、ハイブリッドには全車パドルシフトは用意してもらいたいです。
乗り味はさっきの13Gに比べると少し、固さを感じさせるようですが、しかしこれは普通の人は気づかない程度だと思います。コンパクトカーというくくりからすれば、なかなかの乗り味だと思います。
シフトレバーの横にある「S」というスイッチを押すと、Sモードになります。
これを押さなくても十分なパワーを感じたのですが、これを押すことでかなりスポーティな走りができそうです。かなりレスポンスよく、加速をするのでちょっとこれには驚かされました。こうなると、本当にパドルシフトが欲しくなります。
モードとしては、「ECON」「ノーマル」「S」と3つあるわけですが、普段は「ECON」でいいです。これで十分な走りをします。エアコンもうまく制御してくれるようです。
なお、「Sモード」にするとハイブリッドカーにもかかわらず、アイドリングストップはされません。
先ほど、13Gの試乗レポートの中で言い忘れましたが、ガソリン車にもアイドリングストップが装備されています。この再始動の振動のなさ、滑らかさに驚かされました。このあたりの出来はドイツ車をはじめとするヨーロッパ車よりも日本車のほうがチューニングがうまいです。

ステアリングのフィーリングも13Gとハイブリッドは共通です。電動パワステですが、さすがに電動パワステの嫌なフィーリングもなくなりましたし、直進の取戻し性能もいいです。

内装の質感は同じフィットでも13Gとはずいぶん印象が違い、このハイブリッドは「コンパクトカーもここまで来たか」というほどの質感の高さでした。ひと世代前のオデッセイクラスには近づいたのではないでしょうか。
ただ、ドアトリムの上方が硬質プラスチックができていたり、まだもう一歩頑張ってもらいたいところもあります。
パッセンジャー側のまるで革巻風に見えるインパネなど、なかなか見せ方がうまいです。
そう、一点だけハイブリッド特有の気になったところがあります。
ブレーキのフィーリングがガソリンエンジン車とはまるで違いました。ブレーキのストローク量が明らかに少ないのです。初代プリウスのようなカックンブレーキにはならないのですが、もう少し、ブレーキの踏みしろ量をガソリンエンジンと同様にならないのでしょうか。回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御が難しいのか、それともガソリンフィットと比べたから余計そう感じるのか…。これも慣れなのかもしれませんが、最後まで違和感を感じたポイントでありました。

一言で言って、非常によくできたコンパクトカーだと思います。もし、普通のクルマをチョイスしたくなったら、このあたりのフィットハイブリッドは候補に考えてもいいなというほど、よくできていましたし、価格を考えればこの中身は驚くべきものだと感じました。
でも、普通の人はハイブリッドじゃなくて、13Gで不満はないと思いますよ。
今年のGocar of the Year有力候補間違いなしです。