去年は、良い意味で浮き足立った一年だった。おかげでALPINAやPORSCHEをはじめ、さまざまなクルマに触れた。魅力的なクルマに出会ったその経験は、そのまま今乗っている自分の車を見つめなおす機会になった。
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Audi A4 Cabrioletはどんなクルマなのか。5年間で6万キロ以上走ったいま、誤解を恐れずに言うならば、じつはこのクルマは基本的には特徴がない。
ソフトトップのカブリオレで、オーディオの音が良くて、内外装が素敵で、しつけの良い自然吸気のV6と滑らかだがいささか耐久性に不安を感じさせるCVTが載っていて、ハンドリングも素敵で、トランクも広く、車内も大人4人が座れる広さがある。羅列するまでもなく、確かに特徴ならいくらでもある。でも、特徴は無いのだ。
どうだろう。例えば幌を閉めて音楽もかけずに、クルーズコントロールを使って高速道路を時速90km/hで走っているとき、目をつぶれば例えば同じ10年落ちのクラウンに乗っているのと本質的な違いを言い当てるのは結構難しい。同じように平和な移動時間がひたすら過ぎてゆく。
移動手段としての特徴を考えたときに、このクルマはクラウンと同じなのだ。どちらも、特徴が無い平和な移動時間を提供してくれる。
もちろん、このカブリオレはクラウンではない。目を開ければすぐに分かる。見た目が違う。アクセルを踏み込めば分かる。エンジンのフィーリングが違う。そして屋根をあければ分かる。そこに屋根は無い。そして音楽をかければ分かる。単純に、音がかなりいい。
でもつまりなんだそれって要するに、クラウンをとびきりオシャレにして、屋根を外して幌にして、上質なオーディオをつけて、CVTの前輪駆動にしたのがこのAudi A4カブリオレというクルマなのかもしれない。そう考えると逆に、とってもヘンなクルマに思えてくるところもある。ともかく、もしかしたらそれがこの時代のAudiの本質かもしれない。
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先日、当時のカタログを手に入れた。
はっとしたのはその1ページ目だ。
コピーを引用する。
「あなたは、音楽のないドライブを想像する
ことができますか。音楽は、まったく新しい
世界を瞬時につくり上げ、忘れられない
様々なことを体験させてくれます。ここでは、
A4カブリオレの姿をお見せするだけではあり
ません。ドライブに彩りを添える、どこか懐かしい
歌を思い出させることでしょう。ここにも、忘れ
られない瞬間があなたを待っています。どんな
ことが起こるのか、ゆっくりとご覧ください」
驚くべきことに、まず最初に触れている点は「このクルマはカブリオレなのだ」などということではなかった。その代わりに書かれていたことは、車の運転と音楽についてだ。それで、僕は合点がいった。なんでこんなに自分が、この取り立てて特徴の無いようにも思えるクルマを気に入っているのか、初めて分かったような気がしたのだ。
なんでもなにもなくて、このカブリオレははじめっから僕みたいな音楽好きの人間のために設計されていたのだ。搭載されているカーオーディオがとても上質であるということも、あたりまえなのだ。このオープンカーはそもそも、歌とドライブの共生のために作られたのだから。
そんなわけでこの事実を知ってから、僕はこのクルマがいっそう好きになった。ときどき音楽の機材を積んでバンドのリハーサルに行くのだが、その度に「なにそのクルマ」「調子のってんなー」などとメンバーから揶揄される。でも、気にしない。だって、これがA4カブリオレのもっとも正しい使い方なのだから。
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ついでに、意外とインターネット上で見つからない細かい仕様についても転記しておく。
オーナーの僕が読み返しても、知らないことが載っていたりして面白い。
あのシートはスポーツシートだったのか!とか、シートベルトにチャイルドモードなるものが付いているのかーとか、サードサンバイザーってどれのことだろう?とか、ウィンドウオッシャー液のヒーターがあるなんて知らなかったとか、ヘッドライトウォッシャーってどうやって使うんだろうとか。
なかでも特にESP(エレクトリック・スタビリゼーション・プログラム)の構成が面白い。EBD(エレクトロニック・ブレーキ圧分配)付ABSとEDS(エレクトロニック・ディファレンシャルロック・システム)とASR(トラクション・コントロール)をすべてあわせて、ESPと呼んでいるという事実は、はっきりと知ったのは実は初めてだ。
それにしてもチャイルドシート用のISO FIXが当然のように付いていたり、シートベルトにチャイルドモードがあったり、このクルマは子育てを前提に作られている。以前、4座のカブリオレで子育てする面白さについてすこし書いたことがあったけれど、あながち間違っていないどころか、メーカーの想定内のことなのだ。A5カブリオレのプロモーション映像にも子供とドライブに行くシーンがあったように思う。詳しくは知らないけれど、当地では子育て世代がオープンカーに乗るというのは、そんなにめずらしことではないのかもしれない。
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さらにオプションについてもついでに書いておく。日本に入ってきたディーラー車はすべて、最低でもウィンドブレーカーと警報装置とBOSEサウンドシステムのオプションが付いていたらしい。中古市場を見る限り、BOSEが付いていないA4Cというものは見たことが無い。先ほどの画像の一番したあたりに書いてあるが、BOSEと警報装置とウィンドブレーカーはセットなので、BOSEが付いているということはほかの二つも付いているということになる。だからBOSEセットが基本だとすると、選べたオプションというのは事実上パーキングソナー追加の有無とパールエフェクトペイントくらいのものであったようだ。
ボディーカラーは2005年時点で8種類。左上から順に、シルバーレイクメタリック、カリビアンブルーパールエフェクト、アムレットレッド、ディープグリーンパールエフェクト、エボニーブラックパールエフェクト、コズミックイエローメタリック、アクアマリンブルーメタリック、モロブルーパールエフェクト。新車で買うなら、緑も気になったかもしれない。それにしても、コズミックイエローはほぼ金色なので結構なインパクトだ。
ソフトトップカラーはブラック、ダークブルー、ダークレッドの3色。内装はブラック、ライトグレー、ライトベージュ、アニスイエローの4種類。それぞれボディカラーとあわせて選べる組み合わせがある程度決まっている(推奨、としか書かれていないので無理を言えばほかも選べたのかもしれない)。
ちなみに僕の車の仕様は、カリビアンブルーパールエフェクトにダークブルーの幌とグレー内装だ。さらにパーキングソナーも付いているので、文字通りフルオプションだったらしい。カタログでは、黒内装や黒幌も推奨の組み合わせになっているが、国内では見たことが無い。
そんなに注目されているクルマではないので難しいかもしれないが、一度国内に現存するA4Cオーナーのみなさんで集まってみたいものだ。意外と知られていない仕様の違いなどが明らかになるかもしれない。
Posted at 2015/01/26 01:06:52 | |
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