こんにちは~
前回は“911”登場以降、'60~'80年代に様々なヴァリエーション展開を繰り広げたポルシェロードカーの歴史を振り返った“欧州自動車博物館巡りの旅 2014⇒2015 ポルシェミュージアムII”、予定では'80年代後半から現在まで続くポルシェロードカーの歴史をレポートしようと思っていましたが、おまけ企画で入れようと思っていた“ポルシェ エンジニアリングとエンジン単体展示コーナー”のみで結構なボリュームになってしまったので(笑)、今回はそちらの模様をレポートしたいと思います♪(今回も例にもれずボリューミーな内容となっていますので、お時間のある時にどうぞ~^^;)
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まずは、ポルシェエンジニアリングに関する展示からどうぞ~( ^_^)/
1956年 ポルシェ タイプ 597 “ヤークトヴァーゲン”(Porsche Typ 597 "Jagdwagen")

この水陸両用車は、1953年にドイツ連邦軍(Bundeswehr)に採用する軍用車の入札に向けて開発されました。ポルシェは、この“タイプ 597”で新しい領域の開拓を始めました。
“タイプ 597”は地上はもちろんのこと、水上も走行することが出来ます。さらにドライバー選択式の全輪駆動システムによって、オフロードにおいてもオンロードに負けず劣らずの走行性能を備えていました。

ドイツ連邦軍のプレゼンテーションでは、泥で動けなくなった他の競争相手を助けるのにも使われたそうです^^;
パワーユニットは、1,582cc,50馬力の空冷水平対向4気筒OHVエンジンを搭載して、最高速度100km/hを実現していたようです。

フロントのサスペンション形式は、“356”や“VW ビートル”でお馴染みの2組のトーションバーとトレーリングアームを使った方式に見えますが、2組のトーションチューブの間に見えるデファレンシャルが全輪駆動車であることを物語っていますね♪
1994年 ポルシェ シュトゥディエ “C 88”(Porsche Studie "C 88")

中国で“88”はラッキーナンバーと考えられており、ポルシェは北京で行われたモーターショウでこのクルマを発表する際に、この“C 88”というネーミングに決定しました。
このクルマは特に中国市場へ向けて、ヴァイザッハのエンジニアにより4か月掛けて開発され、シンプルな製造方法で優れた品質と走行安全性の実現が可能でした。

しかし結局のところ中国当局は、ポルシェを始め中国での生産を計画したどの外国メーカーにも許可を与えることがありませんでした。
パワーユニットは、1,100cc,48~68馬力の水平対向4気筒エンジンを搭載して、最高速度140~165km/hの性能での販売を計画していたようです。
ポルシェミュージアムを訪れたことのある方ならば、「あ~あのクルマね。」くらいの反応だと思いますが、このクルマ意外と情報が無いんですよね~
自分も今まであまり気に留めていなかったのですが、'94年当時に1.1リッタークラスの水平対向エンジンを開発していたとなれば、その詳細情報が気になりますね♪
2002年 ハーレー・ダヴィッドソン レヴォリューション エンジン(Harley-Davidson Revolution Engin)

1997年以降進行中のハーレー・ダヴィッドソン(Harley-Davidson)との協力プロジェクトのハイライトは、ポルシェが生産準備段階から開発し、2002年以降に“V-Rod”で使用されている“レヴォリューション エンジン”にあります。
このエンジンの市場導入は、審美的なデザインと最新の法規にも適合する現代の高性能ハイパワーエンジンの融合を体現しているようです。
この“レヴォリューション エンジン”は、1,131ccの60°V型2気筒DOHCユニットから117馬力を発揮しました。
ここからはエンジン単体展示エリアをレポートしていきます。このエンジン単体展示、
前回訪問時のブログでも何基かピックアップしてざっくり(笑)解説しましたが、実は昨年末(2016年末)に訪れた時には、このエリアは車両展示の一部になってしまっていたので、今回で見納めかもしれません(T_T;)
なので、前回の写真データ(外の雪が少ない方が前回訪問時の写真です^^;)も交えて、1基も漏らさずに解説していきたいと思います!
1963年 ポルシェ ボクサーモータ タイプ 901/01(Porsche Boxermotor Typ 901/01)

この一番最初の“911”のエンジンには、その後の進化の過程において共有されるすべての特徴を既に備えていました。それは回転レスポンスが良く,軽量コンパクト,ドライサンプ方式のオイル潤滑システムを持つ空冷6気筒エンジンで、初期の出力は130馬力でした。しかし、1972年までには、すでに210馬力に高められていました。

展示されるパワーユニットは“911”デビュー当初の、1,991cc,130馬力の空冷水平対向6気筒SOHCエンジンです。
1964年 ポルシェ モータ タイプ 771(Porsche Motor Typ 771)

この空冷8気筒エンジンは、1962~1968年というレーシングエンジンとしては非常に長い耐用年数を誇ったエンジンです。
“904”や“907”,“910”などのレンシュポルトに搭載されたこの強力なボクサーエンジンは、タルガ・フローリオやヨーロピアン ヒルクライム選手権、セブリングなどで勝利を挙げました。

このパワーユニットは、F1カーの“804”に搭載された“タイプ 753(Typ 753)”に由来しますが、この“タイプ 771”ではより大きなボア径を採用していました。
スペックは、2,195cc,空冷水平対向8気筒DOHCエンジンから272馬力を発揮したようです。
こちらはレースカー専用のエンジンということで、4気筒レーシングユニットであった“フールマン(カレラユニット)”と同様にDOHCが採用されていますね!
空冷にしては冷却ファンが見えないと思われるかもしれませんが、エンジン上部に上向きに設置されています。アフターマーケット製でVW製のフラット4(タイプ4エンジン)にも、上向きに空冷ファンを取り付けられるキットが出ていて、上向きの空冷ファンには憧れますね~♪
1977年 ポルシェ ターボモータ タイプ 930/60(Porsche Turbomotor Typ 930/60)

1977年、“911ターボ”のエンジンは3,299ccに排気量が拡大されたユニットに置き換えられたのみでなく、市販車として初となるインタークーラーを備えていました。

7.0:1へと高められた圧縮比によって、“911 ターボ 3.3(911 Turbo 3.3)”のエンジンは、300馬力の出力を発揮し、当時それまでに市販されたポルシェ車の中で最もパワフルなモデルとなりました。また、出力と同様にトルクも高く、4000rpmで412Nmを生み出したそうです。
展示されているパワーユニットは、3,299cc,空冷水平対向6気筒SOHCターボチャージドエンジンで、上記の通り300馬力を発揮しました。
前述の“901/01”ユニットと比べても、パッと見で補器類が増えた程度でほとんどエンジン自体の大きさは初期の“911”からあまり変わっていないのが判りますね。
まぁ、この補器類の増加で当初は余裕のあった“911”のエンジンルームも徐々にパズルのような状態になっていったようですが・・・^^;
1985年 TAG ターボモータ (TAG Turbomotor)

フォーミュラ1の世界では非常にタイトでハイペースな開発スケジュールが求められます。このエンジンは、“マクラーレン(MaClaren)”のグランプリカー用として、TAGエレクトロニクス社からの依頼で、ちょうど2年という期間でレースに向けて準備されました。
エンジン設計者のハンス・メツガー(Hans Mezger)は、コンパクトで軽量な6気筒エンジンを採用することを決定しました。そして、最もハイパワーな仕様では、テストベンチ上で1,045馬力を発揮しました。
このパワーユニットは1983~1987年の間に、フォーミュラ1で25勝を挙げ、3度のワールドチャンピオンシップタイトルを手に入れました。
展示されているパワーユニットは、1,499cc,水冷V型6気筒DOHCツインターボチャージドエンジンで、800馬力を発揮したようです。
1985年 ポルシェ フラグモータ PFM 3200(Porsche Flugmotor PFM 3200)

1981~1986年まで、ポルシェは“911”に搭載されている6気筒のボクサーエンジンをベースとして、スポーツ機及びビジネス機向けの航空機用エンジンを開発しました。この航空機用エンジンは、操縦性や低騒音性、経済性も優れていたようです。

また、“PFM 3200”と呼ばれたこのエンジンは、1985年に行われた世界1周飛行によって、信頼性も実証されました。
展示されているパワーユニットは、3,164cc,空冷水平対向6気筒SOHCターボチャージドエンジンで、260馬力を発揮したようです。
排気量は“3.2 カレラ(3.2 Carrera)”と同じ3,164ccですが、PFM仕様ではターボの有無が選択できたようで展示されているエンジンにはターボが装着されていました。
航空機用エンジンということで、“911”では地面の中(笑)に位置するエンジンの真下にターボが付いているの点が面白いですが、排気を効率よく利用するには排気ポートにより近い方が良いのでしょうね^^;
1985年 ポルシェ ボートモータ タイプ 928 M28/70(Porsche Bootsmotor Typ 928 M28/70)

1986年、レーシングドライバーのジャッキー・イクス(Jacky Ickx)は、自身の外洋(オフショア)レーシングボート用にパワフルなエンジンをオーダーしました。
ルマン(Le Mans)を6回制覇した勝者の要望により、“928 S4”用の8気筒エンジンには2基のKKK製ターボチャージャーが備えられ、出力748馬力,トルク860Nmを実現していました。

また、市販車用のエンジンをパワーボートでの使用に適応させるために、熱交換器(ヒートエクスチェンジャー)を用いた複雑な冷却回路を2重に装備していました。
排気量4,957ccの水冷V型8気筒DOHCツインターボチャージドエンジンになります。
2004年 ポルシェ モータ カレラGT(Porsche Motor Carrera GT)

この軽量な自然吸気の10気筒エンジンは、公道仕様の“カレラ GT(Carrera GT)”のために開発された純血種のレーシングエンジンでもあります。

エンジンとトランスミッションは、ボルトで結合されて1つのユニットになり、このハウジングは車体の一部を構成し車重を受けるために、非常に強固に造られています。また、68°のバンク角を持つこのエンジンは、重心も低く抑えられています。
スペックは、5,733cc,水冷V型10気筒DOHCエンジンから612馬力を発揮しました。
“カレラGT”に搭載されて、あの絶妙なエキゾーストノートを奏でるパワーソースは、このエンジンですね♪
この“V型10気筒”というエンジン形式の特徴なのか、V10を採用したクルマは“カレラGT”を始め、'90年代後半~2000年代中盤のフォーミュラ1カーなど、正に“美しい”と言えるエキゾーストノートを奏でてくれるので、自分は好きなエンジン形式の1つです。
今回は、ポルシェミュージアムでもちょっとマニアックな“ポルシェエンジニアリング”と“エンジン単体展示”エリアをレポートしてきた“欧州自動車博物館巡りの旅 2014⇒2015 ポルシェミュージアムⅡ part 4”ですが、意外と表に出てこない“ポルシェ エンジニアリング”の活動と、なかなか眺める機会の少ないエンジンのカットモデルや希少なエンジンの数々で、興味深い内容だと思います。
今回もすっかり長文になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございますm(_ _)m
次回は、いよいよ(笑)80年代後半から始まるポルシェロードカーの歴史をレポートしたいと思います♪