前回、家の猫のことを書いたので、
同じようなタイミングでもう一度、猫の話を書きます。
昔、我が家で飼っていた黒猫の『黒助』の話です。
ただし、今回は真面目な話です。
少しグロテスクな表現があるので、苦手な方は読まれない方が良いかもしれません。
車を運転する方に、ずっとお願いしたいと思っていた話です。
昔、たぶんもう5、6年前のことだったと思います。
私は地元の、片側一車線道路を運転していました。
先が少しカーブになったところで、数台前の車が何かを避けたのが分かりました。
その次の車も、同じように何かを避けて進んでいきます。
私の前を走行する車も、同じように避けました。
「どうせ道に何か落ちてるんだろう。」
その程度に思った私も、ハンドルを、避けるように切り始めました。
前の車がいなくなって初めて、皆が避けていたのが、黒猫だと分かりました。
黒猫は、横たわらずに、ブルブルと震えてそこに居尽くしていました。
「轢かれたのか。けれど、倒れてないなら大丈夫だろう。」
そう勝手に判断した私の前で、
鼻からブッ!と血を出し、
口からガッ!と血を吐いて倒れました。
気づいたのが遅かった!轢かれて大丈夫な訳があるか馬鹿か私!
もう猫を避けてしまった私は、慌てて猫の先に車を停めてハザードを出しました。
後続車は猫だけ避けるつもりだったのに、私の車という余計な邪魔が入ってしまったので、私を罵って行きました。
確かに交通の邪魔になるでしょうから、私はその罵声を甘んじて受けました。
とにかく黒猫がこれ以上轢かれないよう、猫の前に立ちはだかって、進行してくる車を誘導するので精一杯でした。
その間にも、黒猫はどんどん悪くなっていきます。
泣きそうでした。
その時、何台目かの車が黒猫の前で止まってハザードをつけました。
おばさんが飛び出してきて、
「あんた!猫を轢いちゃったの!?」
と。怒っていましたね。
「違います!私が来た時には、この猫は轢かれてたんです!」
私が泣きそうな声でそう言うと、
「轢き逃げか…。猫だって生き物だから罪なのにね。酷いことをする。
ちょうど買い物用に積んでる段ボールがあるから、それに入れよう。」
と助けを申し出てくれました。
そこへちょうど通りかかった中学生が、
「私の家がすぐそこなんです!タオルとか持ってきます!」
と走ってタオルやらを持ってきてくれました。
こうして黒猫は、中学生の持ってきてくれたタオルの敷き詰められた段ボールで病院に運ぶことになりました。
本当はその日は休診だった地元の動物病院の先生に事情を話しお願いしたら、先生は快く引き受けて下さいました。
麻酔をかけてレントゲン撮影。
レントゲンの結果、骨盤を骨折しているので下半身不随になるだろう。
あと、あごの骨も折れているので、食べ物を食べさせることも大変かもしれない。
とのことでした。
しかも、この先の入院費もかかる。
「自分の家の猫ではない猫に、どこまでやりますか。」
先生に問われました。
『自分の家の猫ではない、おそらく野良猫の、その後に責任が持てるか。』
そういうことです。
少しためらいましたが、私は「助けてください」とお願いをしました。
先生はうなずいて、手術をしてくださいました。
おばさんは、
「大変だけど頑張ってね。私にはもう後は、これだけしかできないから…」
と、手術費の半額を出してくれました。
私が勝手に助けただけです。と言っても、払うと言って本当に払って帰りました。
未だに感謝してもしきれないです。
黒猫は、入院することになりました。
その間に、もしかしたら轢かれた場所の近所の家猫かもしれないと思い、近所のおうちを訪問して「黒猫を飼っていませんか。」と尋ね歩きました。
どこの家でも黒猫は飼っていませんでした。
その中の一軒から、こんなことを言われました。
「近所にね、子猫の可愛い時だけ飼って、大人になると放棄する家があるのよ。その家に黒猫がいたから、その子じゃないかと思う。」
するとあの黒猫は、一度は人間に可愛がられ、人間の勝手で捨てられた猫、ということになります。
そして、人間の車で轢かれて、放置されて、死にかけた。あんまりです。
覚悟を決めて、家族を説得し、我が家の猫にしました。
そうして名前は「黒助(くろすけ)」になりました。
便宜的に呼んでいたら、いつの間にかそうなってしまったのです(苦笑)
最初の写真は、我が家にきてやっと怖い顔をしなくなった頃のものです。
獣医さんも驚く、素晴らしい回復力を見せました。
もう動かないだろうと思っていた腰は完治し、ちょっとガニマタになっただけ。
あごも人相(猫相?)が悪くなったくらいで、食事になんの支障もない状態に。
ただし、私には一切懐きませんでした。
怖い、痛い、辛い、そういう経験をした時にそばに居た私が嫌だったみたいです。
その後、3年、生きました。
父の手で、土に葬ってもらいました。
私は泣きましたが、道端で何台もの車に轢かれて肉片にならず、名前を貰い、ちゃんと葬ってもらった。そういう猫の生活ができた。
あの子は幸せだったと思うよ。そう言ってもらいました。
長い文章になりました。
黒助のことは他でも書いたことがありますが、同じように長くなってしまいます。
私は、自分が良いことをした、なんてことを書きたいのではありません。
良い人ぶりたいんだろう、と思う方はそれで結構です。
矛盾するようですが、自分でも、良い人でありたいから助けたのです。
目の前で血を吐いて倒れた動物がいるのに助けない酷い人間になるくらいなら、「ぶってる」と言われても良い人間でありたかったのです。
もしあの場で、黒助を無視してたら一生後悔してたでしょうから。
ずっと、「私は酷い人間だ」と自分を卑下して過ごすことになっていたでしょうから。
お願いしたいこと。
車を運転していたら、犬や猫を轢くこともあるかもしれません。
私も何度も轢きそうになったことがあります。
どうかその時、無視せずに助けてあげてください。
その子は、ひょっとしたらどこかのお家の大事な子かもしれません。
動物なので、うっかり逃げてしまうことがあります。
逃げてしまった子が轢かれても、病院に連れて行って貰えば助かるかもしれません。
帰ってくるのを、ずっと待たれてる子かもしれません。
探している人がいれば、いつか必ずその元に帰してあげられます。
野良かもしれません。その場合、手術費用などは掛かります。
でも、その後自分で飼うことができなくても、愛護団体に連絡したら引き取ってくれる場合もあります。
そういう団体を私は知っています。
どうか無視しないで。
轢いてしまったものは、『物』ではなく『命あるもの』なんです。
そのことを、どうか忘れないで欲しいのです。
もし、轢いて即死してしまったら…。
その場に放置せず、辛いけど道の隅に寄せてあげてください。
役所に連絡すれば、担当課の方がその遺体を何とかしてくれます。
そのままにして、ボロ雑巾のようにしてしまうのだけは、しないでください…。
どうか、猫好きな愚かな人間からのお願いです。
車が好きな人は、優しい人であって欲しい。
そう願い、今回のブログを閉めさせて頂きます。
ご覧いただき、ありがとうございました。