2012年12月08日
もうかれこれ20年ほど前の話である。
雪道でパトカーを救援したことがある。
当時の愛車は2代目三菱パジェロXR-Ⅱ(2.5L・DT、5MT)で、
平日は往復約50㎞の通勤の足として利用していた。
大きく手は加えていないが、タイヤは泥道用に換装していた。
どんよりとした鉛色の雲が空を覆い尽くす、
ちょうど年末頃の出来事だった。
午後6時過ぎに仕事を終え、自宅へ向けて車を走らせた。
車内に設置された気温計の表示は4℃と、かなり冷え込んできた。
思った通り雪が降り始め、あっという間に辺り一面が真っ白になり、
うっすらと積もり始めた。
雪が積もるといっても、スパイクタイヤなどが必要な地域でもなく、
よほど山間部に行かない限り、4WDで無くとも走行が出来る。
通常の生活で、雪路を走ることなどは皆無で、
まだ若かった私は、4WD性能を発揮できるいい機会だと思い、
遠回りをして、県境にある峠道へと向かった。
さすがに平野部と違い、だんだんと道の轍が深くなってきたが、
ブロックが大きめの泥道用タイヤは、意外と雪はけも良く、
センターデフをロックすることもなく、難なく峠頂上のトンネルまでたどり着いた。
他の車は慣れない雪道にノロノロ運転で、大型車はチェーンを装着している様子だった。
トンネルを抜けたところでUターンして帰ろうと思ったが、
もう少し先まで足を延ばそうと、今度は峠道を下り始めた。
車重も手伝ってか、さすがに下りはグリップが弱い。
Uターンできる場所まではエンジンブレーキを使い、慎重に車を走らせた。
山の尾根に挟まれた峠道はすっかり真っ暗で、
行く手には自車のヘッドライトに照らされる雪だけが見えるのみとなった。
そんな真っ暗な中、先のカーブの向こうの路肩に、うっすらと赤いランプが見えた。
近付くと、それはパトカーの赤色灯だった。
どうやら交通規制のため路肩に駐車しているようで、
誘導灯を手に、私の車にも近付いてきた。
警官から引き返すようにと言われ、路肩に寄せてUターンをし、
来た道を上り始め、少し走ったところでルームミラーを見ると、
警官が身振り手振りし、こちらに向かって何か叫んでいるようだ。
後続車も無かったので車を停めると、警官の一人が駆け寄ってきた。
「悪いけど、一緒に来てくれないか」と声を掛けられた。
事情を聞くと、冬用タイヤに換装していないため、思うように発進できないらしい。
仕方なく、また引き返して、パトカー車載のロープで牽引していく羽目になった。
交通規制の誘導をしているうちに、予想以上に雪が積もってしまったようだ。
平野部にたどり着き、別れ際には「帰り道はお気をつけ下さい」と言われたものの、
もうセンターラインも見えないほどの積雪量だ。
圧雪や凍結路でもなかったため、上りでセンターデフをロックした程度で、
難なく家までたどり着くことが出来た。
後日、私が手渡した名刺の住所宛に、テレカが同封された礼状が届いた。
公文書ではなく、私的なものだったが、丁寧な麗句が並んでいた。
そして最後に、「追伸 署には内緒にしておいてください。」と。
毎年初雪の頃に思い出す、若き日の思い出のひとつだ。
Posted at 2012/12/08 21:40:35 | |
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