2012年12月10日
子供の頃、秋の楽しみは、稲刈りの後に行われる「すじぬか焼き」だ。
昔の米の収穫は、殆ど全てが手作業で、家族総出で稲を刈り、
わらで縛り、稲掛けをして天日干をする。
稲が乾いたら、稲扱き(いねこき)、つまり脱穀をして、
籾摺り(もみすり)という行程を経て、籾殻(もみがら)と玄米に分離した。
子供だった私も、微力ながら手を貸したものだ。
すじぬかを山のように積み上げ、筒状にしたトタンを煙突として突き立て、
約一昼夜かけ、炭状に焼くのだ。
すじぬかとは、先に説明した籾殻のことであるが、
焼けて真っ黒に炭化した山の中には、ご馳走が埋まっている。
アルミホイルにくるまれた「焼きいも」である。
いつも祖母が用意してくれて、従姉妹たちと一緒に頬張った。
ジャガイモを焼いたこともある。こちらはイマイチだった。
まだC社のポテトチップスも発売されていない頃の話で、
四季折々の自然の恵みが、子供のご馳走だった。
昔はよく見掛けた「すじぬか焼き」も、最近はめっきり見掛けなくなった。
稲作を続けるには機械への設備投資が必要で、小規模農家には負担が大きい。
農家の高齢化が進み、畑への転作や、住宅地への転用も進んでいる。
一部報道では大きく取り上げられているが、耕作放棄地も増えている。
専業農家の友人も、ついに稲作をやめてしまった。
近くに住宅が建ち始め、虫や、農機具の騒音へ苦情が多いそうだ。
無農薬で栽培すると虫が増え、消毒すると、人体被害への苦情を言ってくる。
こんな状況では、米を作っていても割が合わない。
将来的には「廃業」も考えているそうだ。
先日行われた、最後の「すじぬか焼き」に招待された。
今年は、例年以上に煙が目にしみた。
その煙のにおいと共に、今は亡き祖母を思い出した。
【参 考】
焼き上がった「すじぬか」は、じゃがいもやトマトなどの野菜を植える際の肥料となる。
Posted at 2012/12/10 20:31:57 | |
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