デビューから14代目に突入した新型クラウン。
その実力を試した。

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「いつかは“クラウン”」
たったこれだけのフレーズから力強い野心を感じる。このフレーズが誕生したのは1983~1987年当時の「クラウン(7代目)」のとき。日本の経済が成長しつつある時代だ。“身の丈に合った”がトレンドな今の時代では……
「クラウン」(当時「トヨペット・マスター」)は1955年にデビューした。以降、約4年のペースでモデルチェンジが行われている。そして2012年、14代目がデビューした。
「クラウン」は国内で独自?の発展を遂げている。特徴的なのは体型だろう。エンジンルーム・キャビン・トランクがきっちりと分けられる3BOXのプロポーション。ボディサイズは4895×1800×1460(全長×全幅×全高)。狭い道でのすれ違いや駐車場のサイズを気にせずに済むだけでなく、やや長めの全長が高級車的オーラも纏わせている。
これまでは「いつかは“クラウン”」らしく後席にふんぞり返って運転させるクルマだったのだが、1999~2003年の11代目から、走りの楽しさを味わうモデル“アスリート”を投入。今回の14代目にも設定された。
両車の違いは顔つきだ。“アスリート”には、より威圧的な顔が与えられる。さらに、ホイールやテールランプ、ボンネットも専用デザインとなる。そのほかにも、車高(-10mm)とタイヤサイズ、サスペンションなど、走りに関する部分にも違いはある。
先述したように顔の違いが目を引くのだが、もちろん内装にも差異点がある。クルマに乗り込むと、思わず溜め息が出てしまった。用意された試乗車のうち、“ロイヤル”はホワイトで統一され、“アスリート”はブラックをベースに座面にレッドの生地があしらわれていた。ダッシュボードやドアの内張りに用いられる素材、センターコンソールの雰囲気がクルマのボディを隔てて特別な空間を演出している。
両車の違いはシートにも及ぶ。“ロイヤル”は乗員の体を受け止める印象、つまり、“ゆったり”と表現できる。一方、走りを楽しむ“アスリート”の方が腰をガッチリと抑える形状をとるだけでなく、若干だがクッションが硬めな気もする。こちらを一言で表現するなら“すっきり”。ただし、“スッキリ”というほどではない。
「インパクトのある顔と内装を高級素材で仕立てるだけではツマラナイ……」とトヨタは考えたかは不明だが、スマートフォンやタブレットPCと同様の操作法が採用された“トヨタマルチオペレーションタッチ”を搭載した。このシステム、“○秒以内に操作を終わらせること”を目標に開発されただけあって、操作性は簡潔の一言だ。しかも応答性もよく、信号待ちの時間でナビゲーション、エアコン、オーディオ、走行モードの操作をサクサク行うことが可能だった。
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運が良いことに、今回は“ロイヤル”と“アスリート(ハイブリッド)”を同じ道で走らせる機会を得た。試乗した2台のグレードは「ロイヤルサルーンG」と「ハイブリッド アスリートS」だ。
案の定、静粛性の高さに驚かされる。エンジン始動時だけでなく、走行中もエンジン音や車外の騒音、ロードノイズがしっかりと抑え込まれている。
また、ハイブリッドの場合、モーター(143PS/30.6kgm)のみで発進する。約3リッターエンジンと同等のトルクを発生させるため、力強くかつスムーズだった。もちろんモーターのみでの走行も可能だが、巡航時や加速時にはエンジンも始動し、効率のよい走りを行う。ちなみに、燃費は23.2km/リッター(JC08モード)を実現。非ハイブリッド車の燃費が11.4km/リッター(JC08モード)だ。
ワタクシは、「クラウン」にゆったりとした乗り心地をイメージしていた。そして、そのようなクルマをスポーティな味付けにした「アスリート」に対して疑いを抱いていた。つまり、ベース車の外見をヤンチャにして、少しサスペンションを硬めただけのクルマではないかと思っていた。しかし、その考え方は間違っていた。
コーナーを抜ける際、「ロイヤル」はロールに合わせてゆったりと沈みこむ感じがするが、4輪は路面を捉えているので、不安を感じさせることはない。一方、「アスリート」はロールを極力抑え込み、踏ん張った姿勢でコーナーを抜ける。コーナーに限らず、両車の乗り心地の違いを感じた。路面の凹凸を「ロイヤル」は、まるで凹凸など無いかのようにいなすが、「アスリート」はコツコツと車内に振動を伝える。
このような違いが出たのは、サスペンションに理由がある。14代目の「クラウン」のサスペンションは、13代目からのキャリーオーバー(引き継ぎ)だ。それをベースに、「ロイヤル」には新開発されたショックアブソーバーが与えられた。
先述したようにワタクシは、「ロイヤル」をベースに派生として「アスリート」があるのだと思っていた。しかし、試乗を通じて、13代目「クラウン」をベースに「ロイヤル」「アスリート」といった個々のキャラクターに磨きをかけたのが14代目「クラウン」だと思う。
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14代目「クラウン」は、高齢化したユーザーだけでなく、新たに“若い人”たちを顧客にすることも目的に開発された。といっても、ここで言われる“若い人”とは40代を想定しているとのこと。
では、“ゆとり世代×クルマ好き”の視点からだと、新型「クラウン」はどうだろうか?
正直、無縁のクルマだ。
理由は単純で、走りがツマラナイ。モーターの力強いアシストや、気持ちのいいハンドリングは魅力的なのだが、エンジン音や変速が静かすぎる……。まるで、無音でアクション映画を見せられているようだ。ただし、好きな音楽を流しながら、走るには申し分ない。
また、“ゆとり世代”のなかには「クルマなんて走ればなんでもいい」という考えも多い。ただし、それは色々なクルマに乗った末の判断ではない。
つい先日、ワタクシは、所属していた“自動車部”の新勧イベントに参加した。サーキットでの同乗走行だけでなく、練習車(AT車)を用いて新入生自身がステアリングを握ってのジムカーナも行われた。(私有地なので免許の有無は問わず)
このイベントの主旨は、クルマの面白さを体験させる点にあった。この経験が、“クルマが面白いか”の判断に影響を与えるに違いない。
高級車もスポーツカーもスーパーカーも、見る機会はあるが、実際に乗る機会は極めて限られる。クルマに興味をもたない若者が多いからこそ、彼らに“これが高級車か”を体験させることは大切だろう。
でなければ、“クルマ好き”を問わず、「いまさら“クラウン”(笑)」と思われてしまいますよ。
(文&写真 K-ON@0823)
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(あとがき)
はじめての方は「はじめまして」、以前お越しの方は「お久しぶりです」。
“ゆとり世代×クルマ好き”のK-ON@0823です。
今回は、“クルマ好き”でなくても、その名を聞いたことがあるであろう「クラウン」を取り上げてみました。ご意見・ご感想ありましたらコメントへお願いします。ただし、返信は遅くなるかもしれません……
さて、コメントへの返信だけでなく、ブログの更新頻度も低下気味です。理由は、仕事が忙しいからですね。おかげで、アニメも消化不足。
そういえば、プロフィールの職業は“大学生・院生”から“クリエーター”へジョブチェンジしましたw クリエーターといっても色々ありますが、業種は著述・編集です。
そんなワタクシが携わった自動車雑誌が今週発売します。よかったら書店でチェックしてみてくださいね。
なので、次回は編集後記みたいなものが書ければなぁと思う次第です。