ご飯を手で握って食べるのは日本人だけ!?
おにぎりか、おむすびか。地域によってさまざまな呼び方があるおにぎり。西日本ではおにぎり、東日本ではおむすびが優勢という説や、地域性は見られないなど諸説ある。確かなのは「おむすびは平安時代に宮中の女性たちが呼んでいた女房言葉だったこと」と、おにぎりに詳しい小田きく子昭和女子大学名誉教授は語る。「屯食(とんじき)」とも呼ばれた当時のおにぎりは、もち米を使った卵形のものが多かったという。これに好みでひしお(醤油や味噌の原型)や酢、砂糖などをつけて食べていた。一方、おにぎりは「“握り飯”が転化したもの。こちらは男らしい語感ですね」と小田教授。
日本で古くからおにぎりが存在した理由は、もちもちとしたジャポニカ米を食べていたから。東南アジアなどで広く食べられているインディカ米は、パラパラしていて、手で握るのは難しい。また、同じくジャポニカ米を食べる中国や韓国では冷めたご飯を忌避する傾向があり、日本のように多様なおにぎりを生むには至らなかった。
ただ、古くからあるとはいえ、長らく贅沢品だった白米のおにぎり。庶民が口にできるようになったのは、米の生産量が増えた江戸時代。そうして旅や野良仕事の手軽な食事として、全国各地に根づいていった。
三角おにぎりのルーツは神様へのお供え物だった
昔話の『おむすびころりん』に出てくるのは丸。『さるかに合戦』は三角。絵本の中でも違う、おにぎりの形。江戸時代の百科事典『守貞漫稿』では京阪は俵形、江戸は円形あるいは三角形に握るとあり、形には昔から地域差があった。現在ではコンビニおにぎりの影響で圧倒的に三角が主流だが、西日本では俵形、東日本や山間部では丸形や球形も残っている。三角おにぎりは、神への供物だった円錐形のおにぎりが起源との説もある。細くとがらせたてっぺんから神が降りてくると考えられていたのだ。
●おにぎりの形、多いのはどれだ?
<1位>三角形
販品の多くが三角形を採用。運搬用ケースに入れたときに隙間ができず効率的で、陳列すると大きく見えるというのが理由。
<2位>俵形
西に多い俵形は、芝居見物の合間に食べる「幕の内弁当」の原型になったとされる。
<3位>丸形
形でやや平たいのが丸形。太鼓形とも呼ばれる。醤油や味噌をつけて焼く、焼きおにぎりにこの形が多い。
<4位>球形
仕事が多い山間部を中心に分布。ご飯が空気に触れるのを最小限に抑えられ、保存に向く。ほかの形に比べ1個のボリュームが大きいのも特徴だ。
※2014年9月上旬、道府県の東京事務局および神奈川県庁、千葉県庁にアンケート取材。地元での呼び方、家庭でよく食べられている形、地元ならではのおにぎりについて回答してもらった。なお、本調査はご協力いただいた方の個人的な体験や印象からの回答であり、幅広いフィールドワークに基づくものではありません。
「おにぎり&海苔」は定番コンビではなかった
パリパリ派かしっとり派か好みはあれど、おにぎりに海苔を巻くのは定番中の定番。だが、昭和初期の状況(表)を見ると、外側に何もつけないのがダントツで1位。今ではあまり見かけない、きな粉のおにぎりのほうが海苔よりも多いのだ。
そもそもおにぎりに海苔を巻くようになったのは、板海苔がつくられるようになった江戸時代以降のこと。ただ、海苔は今よりずっと高級品だった。明治19年に日本初の駅弁として発売されたおにぎりは、梅干し入りの黒胡麻をまぶしたもので、海苔なし。海苔がおにぎりによく使われるようになるのは戦後からだ。昭和53年には、セブン-イレブンがパリパリタイプの海苔のおにぎりを発売。この大ヒットが、おにぎりと海苔のコンビを不動のものにした。
:プレジデントオンライン 澁川 祐子
Posted at 2016/09/01 18:29:39 | |
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