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Mimes Jacobのブログ一覧

2012年06月30日 イイね!

アメージング ジャッキー

Sonnny Clark 「Cool Struttin」




Mal Waldron 「Left Alone」



Charles Mingus 「Pithecanthropus Erectus」




この三曲に共通するのは同じプレーヤーがどのアルバムにも参加しているという点である。
最初の曲、ソニークラークの「クール・ストラッティン」は、あまりにも有名なアルバムジャケットで僕は22歳の頃に初めてこれを聴いた。どの曲も素晴らしく完成度の高いファイブスターのアルバムとしておすすめ出来る。

次の「レフトアローン」はマル・ウォルドロンの名曲。
栗本薫の小説「キャバレー」で僕は知って、それで買いに行った。これは映画にもなった。
主人公、若き天才サックス奏者・矢代俊一を演じたのは野村宏伸。

小説は最高だった。映画は特に主役の野村宏伸の演技力と言う点に置いて、僕がこれまで生涯に観てきた数々の映画の中で最も程度の低いレベルで、「金を返せ」と言いたくなる出来栄えだった。
もろ肌脱いだ三原順子がキャバレーのホステス役で出ていたが、彼女が劇中に歌うシーンがいくつかあって「サマータイム」は驚くべきな歌声でよかった。

映画キャバレーのメインテーマ「レフト・アローン」。これを80年代ジャズフェスの女王だったマリーンが歌った。横浜のスターダストをキャバレーの入口に見立てて、十分な演出で迫った映画だけに主人公の力量の無さが残念な映画だった。小説は文句なく面白かった。

キャバレー 1986年 角川映画 レフト・アローン マリーン


この曲はマルが書いた曲で、実はオリジナルはボーカルがいる曲だった。
その歌詞はビリー・ホリデーが付けた。しかし彼女はこの曲を吹き込む間もなく、本当に独りで逝ってしまった。

レフトアローンの詩が知りたい人はこちらのバージョンもどうぞ。


さて、残る三枚目はチャールズ・ミンガスの「直立猿人」だ。
このベーシスト、コンポーザーのミンガスは私が最も愛するジャズマンで、この直立猿人は猿から人へと進化する過程が描かれたジャズオペラと言っても過言ではない。
ジャズは楽器を使うが楽器の音色をどこまでも人の声に近づける努力をいつしかジャズマンは始める。
ミンガスなどはその先駆けと言える。キッチュな作風を嫌い、アバンギャルドなオリジナルをとことん追求したミンガス、彼こそデューク・エリントンの流れをくむ「キング・オブ・ジャズ」ではないだろうか。


さて、三枚に共通したジャズマンとは?
と言うのがテーマなのだが、それは、タイトルで謳った通り、アメージング・ジャッキー。
すなわちジャッキー。マクリーンだ。

今更説明の必要もないほど、最高のアルト・サックス・プレイヤーの彼が、ブルーノートレコードを聴いていると素晴らしいサイドマン(※サイドマンとはリーダーとしてではなく他のアルバムに参加する事)としてしばしば登場してくる。その内マクリーンの音に耳が慣れてくれば、「あれ、ここにもマクリーンが」と彼の幅広い活動の軌跡を観る事が出来る。

あまりにも名曲が多い彼なので選択に迷うが、今日はこの曲を紹介したい。ファナティックで都会的なマクリーンがサックスを吹くと、そこは瞬く間にニューヨークのシティーライトへと変わる。

JACKIE McLEAN it's time





Posted at 2012/06/30 13:34:40 | コメント(1) | トラックバック(0) | jazz at jacob's hall | 日記
2012年06月30日 イイね!

史上、最凄のジャズ・セクステット

史上、最凄のジャズ・セクステット華々しいタイトル、そして聴きなれないセクステットという言葉。

今日のJACOB HALLでは歴史的なジャズのアルバムを紹介します。

“歴史的”という言葉には様々な意味が内包される。

歴史的に売れた。とか、
伝説的なメンバーで演奏した。とか、
時代の転換期だった。とか

ここで紹介するアルバムはその全てを含み、さらにほとんどがワンテイクで録ったという凄みまで付随する。

ではそのアルバムを紹介する前に、先ずはセクステットと言う言葉の意味から。

ジャズは何人で演奏するか決まっていない。

独りでやる奴は“ソロ”という。
Cecil Taylor セシル・テーラー(ピアニスト)などはソロで聴くとたまらない。
先般もブルーノート東京に来ていた。もう初老と言える年齢なのに20代の様なプレイをする。
この人は150歳くらいまで生きるだろう。


さてそして、二人でプレイするとデュオ、三人でやればトリオとなる。

トリオならエディ・コスタ(Eddie Costa=ピアノ)やマル・ウォルドロン(ピアノ)など良い。
エディ・コスタは若くして(31歳で)死んだので、その活動期間は短いのだけれども、最初のリーダー作「コスタ=バーグ・トリオ」はトリオ・アルバムとしては非常にお薦めの一枚である。



さて、そして四人でやればカルテット  ( quartet 4重奏 )
       五人でやればクインテット ( quintet 5重奏 )
       六人でやればセクステット ( sextet=6重奏 )
となる。

そこで今日の主題、最凄のセクステットである。

時代は1959年 季節は初春の頃そしてメンバーは

       Miles Davis (tp)
       Julian Cannonball Adderley (as)
       John Coltrane (ts)
       Bill Evans (p)                     (+Wynton Kelly )
       Paul Chambers (b)
       Jimmy Cobb (ds)



の六人である。

実はこのブログを書く前に、キャノンボール・アダレイ(アルト・サックス)とジョン・コルトレーン(テノール・サックス)を紹介した。本当は次にビル・エバンス(ピアノ)を紹介して、ポールチェンバー(ベース)のトップ・オブ・ベースをやって、ジミー・コブ(ドラム)をやって、このアルバムに入ろうかと考えたがめんどくさいのでやめた。

あれ、離れた所に一人余ってるぞ?ともう一人のピアニスト、ウイントン・ケリーの存在に気がついたあなたは流石である。

となると全部で7人いる。
だったらセクステットじゃないじゃないか?と言う人が出てきそうだ。

これは7人で演奏したのではなく、アルバム中の2曲目、FREDDIE FREELOADER(フレディ・フリーローダー)という曲にだけ、ウイントン・ケリーがピアノで参加したのだ。

この曲を彼がやっている時、もう一人のピアニスト、ビル・エバンスはきっとタバコを吸いながらケリーのプレイを眺めていたはずだ。

マイルスはS(サディスト)である。このアルバム作成時の本来の固定メンバーであったピアニストはウイントン・ケリーだった。当然彼はスタジオに来た。するとマイルス・カルテットの以前のメンバーであったビル・エバンスがピアノに座っていた。ショックなのはケリーである。

ニュー・アルバムのレコーディングは、彼抜きで始まっていた。

スタジオで本人はプレーできないばかりか、これでは放置プレーである。

ウイントン・ケリーはM(マゾヒスト)ではない。故に快感を以て放置プレーを受け入れる訳ではないのである。そこで彼はマイルスに言って一曲だけ弾かせてもらった。それがこのフレディ・フリーローダーである。それ以外はすべてビル・エバンスがプレーした。これによって完成したアルバムに漂う香りは、57-58年に行き詰まりを感じるようになったバップ、ビ・バップ、ファンキーとは異なる、モードジャズの先駆けとなった。

「モーダル」と表現されたこのアルバムは、コード進行よりもモード (旋法)を主に用いて演奏される。そうした手法を以て、その後マイルスは自身の代名詞と言える『クール』へと舵を切り始める事になった。
そのようにして作られた、“モーダル”なこのアルバムが、マイルス・デイヴィスのリーダー作として発売された。

この年日本ではフジテレビが開局し、プリンス自動車工業が「グロリア」「ブルーバード」を発売し、和製ポップスデュオ「ザ・ピーナッツ」がデビューし、巨人の王貞治選手がプロ入り第1号本塁打を放ち、長嶋が昭和天皇の天覧試合でサヨナラ本塁打を放ち、日本光学工業が「ニコンF」を発売し、司馬遼太郎が『梟の城』で直木賞を受賞し、山口百恵、山下久美子、石川ひとみ、松原ミキ、岡田奈々、畑中洋子、プリンセス天功が生まれた。

そして世界ではシンガポールが独立し、世界中でバービー人形が売られ、ニュー・ヨークにグッゲンハイム美術館がオープンし、設計したフランク・ロイド・ライトが亡くなった。

ついでに言うと私の好きな、永井荷風も逝ってしまった。そんな年だった。


この最凄のアルバムタイトルは「Kind of blue」と言う。そしてこのアルバムは売れに売れた。

マイルス・デイヴィスの生前時点で1000万枚。
現在も売れ続けているのでこの記録は更新中である。
しかも渋谷のタワーレコードで買えば、安価版として690円/枚で売っている。正に投げ売り状態である。
(この値段なので音の保証はないが十分にBGMとして聴ける。)

この売上のお陰で、マイルス・デイヴィスはニュー・ヨークにレジデンシャルとフェラーリを持てるようになった。イリノイ州で生まれた若きマイルスが、初めてニュー・ヨークに出てきて、ジュリアード音楽院に通っていた時に、想像した未来が手に入ったわけだ。

かれをスターダムにのし上げた、最高のアルバム、最高のメンバー、そして最高のジャズ。
「Kind of blue」はこの曲から幕をあける。その神話が生まれた頃、我々はまだこの世に存在していない。

NYC, March 2, 1959



           
Posted at 2012/06/30 12:44:35 | コメント(0) | トラックバック(0) | jazz at jacob's hall | 日記

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