
カジノと言えばアメリカ ネバダ州にあるラスべガス。
僕はこれまで機会を得て、ラスベガスには10回ほど行った。
8回は仕事で2回はプライベートで。
仕事で行った8回の内、2回は車で行った。
ロスから遥々ラスベガスまでの道のりは遠いようでいて、やはり遠かった。。
そんなラスベガスのメイン通り、通称“ストリップ”を何度となく往復し、目を瞑っても歩けるほどラスベガスに精通した(つもりでいる)僕のところへ「マカオにもヴェネチアンホテルが出来ました」と一報が舞い込んだので、「では」と一路マカオに出掛ける事にした。。これは今から5年前の2007年の話だ。
マカオは香港から高速フェリーで行けるほど近い島で、その歓楽街は“コタイ・ストリップ”と言われるメインストリートからなり、そこにラスベガスさながらのカジノ街が出来上がって居た。(いままさに出来あがろうとしていた)と言うのも僕がそこを訪れた当時(2007年現在)は、まだ完成したホテルもわずかでその全貌は明らかになっていなかった。
目抜き通りの両脇は「コンクリートの塊」としか表現できない、まだ装飾される前のネイキッドなビルが乱立し、グレー色をしたスカイクレーパーが空を覆っていた。
しかしカジノホテルと言うのはどこも想像を絶するスケールで造られているため、わずか一件しか開業していないヴェネチアン・マカオだけで十部に愉しめるだけのモノは揃っていた。
旅行は香港・マカオでスケジュールを組み家族で出掛けたため昼間はマカオ観光に時間を費やした。
市街地ではポルトガル統治時代の遺跡・旧蹟を眺め、とても日本では食べられないほど旨いエッグタルトを頂き、ポルトガル料理にも舌鼓を打った。
そして家族と共にホテルに戻り、歩き疲れた息子が早々に寝息を立て始めると、女房・子どもを部屋に残し、地下にあるカジノへと僕は出掛けた。
カジノは場の空気が大切で、フィーリングが合わない場所でいくらがんばってみてもそれは徒労に終わるのが落ちで、先ず持って賢明なギャンブラーはそのフィーリングが合うまで席に着かないものだ。
カジノに降りてきて30分がたった。
※因みにラスベガスのカジノを併設したリゾートホテルは、通常どこのホテルに行ってもカジノは1Fにあるがマカオのカジノは地下フロアーにある。
未成年者へ見せないという配慮なのか?入口のガードは固く、鋭い眼光の黒服が2名そこに突っ立ていた。
30分も経過したにも関わらず、どうにも空気が馴染まない。
見渡せば客の80%以上が中国本土から来た中国人なのだ。
チェックインの際に農協の団体旅行よろしく、旗の下に集う中国の農協ご一行様が次から次に出現し、初めてその“ド”田舎から出てきたのか「これが、カジノだギャ」「すごかー」などと御国言葉で大声でしゃべり、右往左往するのを見かけたが正にその御一行様がカジノに陣取ってわいわいやっているのだ。
ギャンブル場というのはいわゆる大人の社交場であって、優雅さや華麗な環境設定でお客を迎える様に造られている。客の方も、場の雰囲気に馴染むように、精一杯のエレガントさや上品さをもってそこを訪れ、ゴージャズ感と一体化する。そうすることで非日常の空間は演出され、大枚をはたいても、それはそれ、十分に楽しめた。と満足するものなのだ。
所がマカオのカジノの空気は、もはや不釣り合いな訪問者の襲撃を受け、修復不可能な程下品で猥雑な空気が沁みつき、とてもラスベガスのそれと比べようもないほどのものだった。
そこはラスベガスの様に出来ている粗悪なコピーの空間でしかなく、ここへ来た甲斐空しく、早々に引き揚げることにした。
中国の人たちも、少しは海外旅行に行ける時間的、経済的、社会的、環境整備が出来て来たのだから一度、カスべガスを訪れ、本場のカジノを見て、ゲームテーブルの上に足を乗せているような無粋な人などいないのですよ。という社会常識を見て、学んだ方が良い。
オフィースのデスクに足を乗せてコーヒーを旨そうに飲むシーンがハリウッド映画などにはあるが、僕は現実のアメリカのオフィスであの場面に出くわした事がない。
それなのにマカオのカジノのゲームテーブルに揃ったように足を上げる中国人を見た時、この人たちの親の顔が見たい。と真剣に思ったものだ。
きっと彼らの子供達も同じことを繰り返すのだろうと思えば、中国人がまともになるまでにあと50年はかかるだろう。僕はその時は土の中にいる。そんな先まで心配する必要もなければ憂う理由もない。
しかし目と鼻の先に出来たマカオのカジノがラスベガスのそれとはまるで違うものだという事実は残念なことだ。『神が(良い景色の)田舎を造り、人が街を造る』という諺があるが、どのような景色においても、街並みであっても、住まう人によってそれは台無しになったり、光彩を放ったりするものだ。
ラスベガスを造ったのはアメリカのヤクザ達だ。
しかしこのヤクザな連中が、いかにお洒落な連中だったかはラスベガス自身がそれを証明している。
今はもう、古き良き時代の名残りでしかない不健康の代名詞であるカジノも、今日のアジアでは見事に光彩を放っている。マカオは中国のモノ。確かにそう思う。
そして英国の残り香が消える頃、香港も又、実に中国になってしまうのだろう。
Frank Sinatra - Killing Me Softly
Posted at 2012/09/22 11:49:27 | |
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