フィットは1.3Lこそベストバランスであり、ホンダらしさを強く感じるモデルだと思う。しかし自分のような年配者は充実装備と落ち着いた感じの1.5Lを選ぶのではないだろうか。
MT車が欲しい気持ちもあったが、スロットルがバイワイヤになりスロットルを直接開閉するダイレクトさが無くなり、シフトチェンジにおける回転合わせがストレスになりそうなのと、何よりも前車モビリオでCVTの滑らかな加速感に体が馴染んでしまっていた。
このCVTは巡航時の回転数を下げよう下げようとする制御のため、一定速度を維持するのが少し難しいかなーと感じるものの、燃費が良く騒音が低いので快適である。
総合して、いわゆる運転の楽しさは薄い反面、長距離でも快適で疲れない、それでいて使いやすいサイズ。
遠くへ出かけたくなる車。
総評と言いながら少し長くなるが、運転の楽しさという点に触れてみたい。
運転の楽しさとは、絶対的なパワーやスピードではないことは言うまでも無い。
ただ、自分がGK5フィット3に感じた、運転が楽しくないポイントは次のようなものである。ただし、これらは粗探しに近いものであって、オーナーならではの、他の誰にもわからないレベルのたわ言ではあります。
1.アクセル操作に対する挙動がリニアでない
アクセルの踏み込み速さに応じた反応をしない。必ず一時遅れというか、時定数というか、角が丸められた反応を示す。これは結果的にドライバーの意図に対してずれを感じさせてしまう。言うなれば、比例制御よりも積分制御、という感じ。
どなたかも書かれていたが、発進時の感覚として動き出しはモッサリ、途中からガーっと加速する感じ。
また、速度調節が少しやりにくい。このくらい踏み込めばこのくらい加速すだろうとか、このくらい戻せばこのくらいの速度で落ち着くだろうとか、分かりにくい。
一定速度で走っているときも・・・→少~し速度が落ちたかな?→ほんの少~しだけアクセル踏む→あまり反応ない→もうちょっとだけ踏む→少~し速度上がる→アクセル少~し戻す→速度がちょっとずつ上がり続ける→もう少しアクセル戻す→速度が少~し下がる→速度が下がり過ぎないようにアクセルをチョイ踏む→繰り返し。これは街なかではほとんど気にならないものの、郊外の定速巡航では疲れる。アクセルを抜くとCVTの変速比が高速側になるせいなのか?まあその場合はACCを使えばいいのだが・・・
2.CVTの制御がより複雑になっている
古いCVTはそれなりに問題はあったかも知れないが、回転数や負荷と速度などに対する変速比が単純でわかり易かった。たとえば加速してる最中、アクセル開度が一定であれば、変速比の無段変化だけで一定の加速度を保って速度がリニアに上昇していった。また、湿式クラッチ式のモビリオの場合は、ゼロ発進時、ドライバーの繊細な右足操作によって、動き出しをまったく感じさせないくらい、加速を感じない加速というものを味わえた。
GK5フィット3では、トルコン採用によって常時クリープが発生しているため、ブレーキのリリースで即動き出す。また、加速の最中に僅かでもアクセルを抜く素振りを見せようものならスッとエンジン回転数が落ち、まるでシフトアップのような挙動を示す。このため加速度がクッと落ちる。ほんの少しだけアクセルを踏み増すと変速比がまたスッと低速側に変わって加速度に段付きが発生してしまう。少し残念。
3.ステアリングインフォメーションの希薄さ
電動パワステの完成度はとても高いと感心するものの、コーナリング中のタイヤの状態がいまいち伝わってこない。標準的なタイヤであれば、限界に近づきつつあるタイヤのスリップアングルが大きくなってくる感じとか、それによってパワーが食われている感じが伝わってくるものだが、それがない。加えて、その手前で電子制御がどのように介入してくるのかが未知数である。これはこれで、ドライバーとしてはかなり安全マージンをとって走ることになるので、結果的に安全なのだと思う。
4.フットブレーキのコントロールが難しい
ブレーキペダルの反力というか踏みごたえがあまり無く、踏み込みのストロークに比例して効くタイプなので、減速Gを一定にするのがちょっと難しく感じる。感覚的に、ブレーキペダルの踏み込みが一定でも速度によって発生する減速Gが異なるような気がする。狙った位置に停止させるための減速Gがなかなか一定にならない。ついブレーキペダルを微妙に加減することになってしまう。モビリオではできていた、いつブレーキを踏んだか、いつ完全に停止したかが分からないような操作が難しい。
・・・簡単に言えば、ハンドリングにしても、アクセルレスポンスにしても、ブレーキにしても、間に何か介在しているような感じで、そのクルマ独特のメカニズムが動作している実感というか手ごたえというか、クルマの機構がリアルに動作しているという感覚がとっても希薄である。