【産経 2012.1.4 22:23】
大阪府が、18歳未満の子供に対する性犯罪前歴者に対し、居住地の届け出を
義務付ける条例案を2月の定例府議会に提出する方針で準備を進めている。
全国初となる条例の制定を目指す背景には、性犯罪の全体的な再犯率の高さと
ともに、大阪府内の性犯罪認知件数が全国最悪という深刻な実情がある。
被害者支援団体などは、再犯防止に対する国や行政の動きの鈍さに不満を募らせており、
条例制定で一石を投じる効果が期待される半面、人権面での課題も浮かんでいる。
※モデルケースに
「被害者側からみたら、全くの無策だ」。
犯罪被害者の支援などに携わるNPO法人「大阪被害者支援アドボカシーセンター」
(大阪市)の担当者は、性犯罪者に対する国内の矯正施策についてこう言い切る。
同センターで平成22年に受けた相談・支援件数延べ996件のうち、性的被害は約4割を占めた。
対象は小学校低学年から成人までの女性被害者やその家族。
被害者は、男性に恐怖感を抱き、日常生活すら送れなくなる程の深い傷を負う。
受刑者の出所が近づくと、精神的に不安定になる被害者も少なくない。
18歳未満の子供に対する性犯罪者が出所後、名前を変えて再び
子供と携わる仕事に就いているケースもあった。
大阪府の条例案に対し、センターの担当者は「海外並みに厳しい施策に取り組んでほしいが
府の方針は、国内の関心を高めるモデルケースとして評価できる」と語る。
※高い再犯率
府内の22年の性犯罪認知件数は、強制わいせつが全国最悪の1,078件、
強姦も東京に次ぐ119件に上る。
うち被害者が18歳未満のケースは、強制わいせつが440件、18歳未満人口100万人あたりの
件数は312件で、2位の福岡県(235)の1.3倍に達しており、全国最多だ。
強姦も全体で34件、同人口100万人あたりの件数は24件で、千葉、愛知両県とともに最多だった。
大阪府警が昨年8月、中学2年の女子生徒に乱暴してけがをさせたとして、強姦致傷容疑で
逮捕した男(41)は、強制わいせつ罪などで懲役3年の実刑判決を受け、22年11月に出所した
ばかりだった。
昨年4月に民家に押し入り、高校生の女子生徒を乱暴したとして、強姦容疑で逮捕された
男(40)も10代の頃から強制わいせつなどを繰り返し、17歳で中等少年院に入院。
その後も強姦罪などで有罪判決を受けている。
府警によると、昨年1~11月末で強姦、強姦未遂容疑で逮捕された70人のうち約4割の
27人が性犯罪の再犯者で、うち18歳未満への性犯罪の再犯者は16人だ。
※人権面に課題も
一方、大阪府には「前歴者とは言っても、刑を終えて出所した人だから
人権やプライバシーに配慮すべきだ」との意見も寄せられているという。
明治大の菊田幸一名誉教授(犯罪学)は「情報が流出して周囲に知られ、前歴者や
その周辺者が不利益を被る可能性がある」と指摘。
「大阪府外で再犯を起こす可能性もあり、国内の社会復帰支援制度も十分でない
中で大阪府だけが届け出を義務付けるのは唐突感がある」と話している。