【読売新聞 2012年10月18日 熊本】
「殺害を企てたことなど一切ありません」。
17日、熊本地裁で始まった清水心ちゃん殺害事件の裁判員裁判。
元大学生山口芳寛被告(21)(熊本市)は殺意を否認し、検察官の後方で傍聴した
心ちゃんの父誠一郎さん(41)、母真夕さん(39)は、悔しそうに唇をかんだ。
山口被告は黒っぽいスーツの上下に青いネクタイを締め、頭を丸刈りにした姿で101号法廷に入廷。
証言台の前に立ち裁判長に名前などを聞かれると、「山口芳寛です」と答え、罪状認否でも早口の
はっきりした口調で殺意を否認した。
冒頭陳述で検察側は、山口被告が計画的にわいせつ行為と殺害行為に及んだと主張。
幼い子どもにわいせつ行為をして殺害する内容の漫画やDVDなどを収集していたことを示し
「女児への性的興味と殺人や遺体への興味から、小学生くらいの女の子を強姦、殺害したいと
考えるようになった」と動機に切り込んだ。
一方、弁護人は「(山口被告は)凶悪で猟奇的な精神異常者ではなく、真面目な普通の青年」と
強調し、漫画などの収集に関しては「一般に市販されており、誰でも手に出来る。事件とは
関わりがない」と反論。
終始、山口被告が鑑定留置で発達障害などと診断されたことを織り交ぜ「幼い頃から
治療を受けられていれば、事件は防げていたかもしれない」とも訴えた。
この日、誠一郎さん、真夕さんは遺影と、心ちゃんがよく遊んでいたぬいぐるみを持って裁判所に入った。
法廷では、メモ帳とペンを手に山口被告をじっと見つめながら罪状認否や冒頭陳述などに聞き入った。
心ちゃんが殺害された状況が詳しく読み上げられると、誠一郎さんは眼鏡をはずしてハンカチで涙を
ぬぐい、真夕さんはこぶしを強く握りしめながら山口被告を強いまなざしで見つめた。
誠一郎さんは午前11時頃の休廷後、立ち上がれず、周囲の手を借りて別室にいったん移動。
救急車で運ばれたが、午後3時過ぎに病院から戻って再び、裁判を傍聴した。
山口被告は終始、検察、弁護側双方の冒頭陳述や証拠調べを伏し目がちに
聞き、心ちゃんの両親に目を向けることはほとんどなかった。
起訴事実
山口被告は昨年3月3日午後7時半頃、熊本市北区高平の商業施設で、家族で買い物に来ていた保育園児の
清水心ちゃんを多目的トイレに連れ込んでわいせつな行為をした上、首を手で絞めるなどして殺害。
同8時頃、近くの排水路に遺体を遺棄した。
罪名は殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄罪。