嫌がらせメール 立件されず落胆
【NHK 2012年11月8日 19時12分】
神奈川県逗子市で男がストーカー行為の末に元交際相手の女性を殺害し、自殺したとみられる
事件で、ことしに入って男から1,000通を超える嫌がらせのメールが届いた際、警察から
立件などができないと言われ、被害者の女性が落胆した様子だったことが相談を受けていた
NPO法人への取材で分かりました。
この事件で東京・世田谷区の無職、小堤英統 容疑者(40)は6日、逗子市内のアパートで、以前
交際していたフリーデザイナーの三好梨絵さん(33)を包丁で刺して殺害したあと自殺したとみられ
警察は8日、自宅を捜索し、パソコンなどを押収しました。
この事件を巡っては、しばらく収まっていた男からの嫌がらせのメールがことし3月ごろに再び
送りつけられるようになり、その数はおよそ半月の間に1,000通以上に上りましたが、現在の
ストーカー規制法では、メールは執拗な電話やファックスの送りつけのように明確な規制の
対象ではなく、脅迫的な内容でもなかったため、警察は立件や警告はできないと女性に
説明したということです。
女性から1年余りにわたって相談を受けていたストーカーなどの被害者の支援を行っているNPO法人の
小早川明子理事長によりますと、女性は電話で「警察に言っても動いてくれません。ストーカー規制法
では警告できないと言われました」と話し、落胆した様子だったということです。
今年8月に女性と最後に電話で話した際、男からのメールは再び収まっていましたが、女性は
「最近は落ち着いてきましたが、いつまたくるか不安です」と話していたということです。
小早川理事長は「女性は会った際には気丈にふるまっていましたが、不安な日々を送っていたと思います。
警察は法律上規定が無くても早く男を確保すべきだった。このような事態になってしまって悔しいです」
と話していました。
“警察動いてくれない”NPOに不安訴え
この事件で、1年余りにわたって被害者の女性から相談を受けていたNPO法人の理事長がストーカー被害の実情を話しました。
ストーカーなどの被害者の支援を行っているNPO法人の小早川明子理事長によりますと、三好梨絵さん(33)は、小堤英統
容疑者(40)が脅迫の疑いで逮捕された直後の去年6月に初めて相談に訪れたということです。
女性が話した内容によりますと、平成18年に別れた直後から男から「お前だけ幸せになるのは許さない」
という内容のメールが送られたり留守番電話にメッセージが残されたりするようになったということです。
平成20年に女性が別の男性と結婚して逗子市に引っ越したあともメールは送り続けられ、一昨年の末からは
「精神的に殺したのはあなた。肉体的にも殺してください」、「薬を飲んで死んでやる」という内容の
メールなどが届くようになったということです。
女性は最初に相談に訪れた際、逮捕されていた男が本当に起訴されるのかどうか、不安を感じていたといいます。
その後、男が脅迫の罪で執行猶予の付いた有罪判決やストーカー規制法に基づく警告を
受けたため、女性は少し安心した様子を見せていたということです。
今年4月ごろに男から再び嫌がらせのメールが来たという相談の電話が寄せられたため
理事長はすぐに警察に相談するようアドバイスしたといいます。
警察への相談後、女性から再びかかってきた電話では、「警察に言っても動いてくれません。
ストーカー規制法でも警告できないと言われました」と話し、落胆した様子だったということです。
ことし8月に理事長が女性と最後に電話で話した際、男からのメールは再び収まっていましたが
女性は「最近は落ち着いてきましたが、いつまたくるか不安です」と話していたということです。
理事長は「女性は会った際には気丈にふるまっていましたが、『ベッドから起き上がれなくて
一日中寝ていました』という内容のメールを送ってくることもあったので、不安な日々を送って
いたと思います。
警察は法律上規定が無くても早く男を確保すべきだったと思います。
このような事態になってしまって悔しいです」と話していました。
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逗子女性殺害:ストーカー規制法に限界…大量メール想定外
【毎日新聞 最終更新 2012年11月08日 23時15分】
神奈川県逗子市で6日、元教員の小堤英統 容疑者(40)がかつて交際していた女性を殺害し
自殺したとみられる事件で、小堤容疑者は今年3月下旬以降、約20日間で1089通のメールを
女性に送っていたが、県警はストーカー規制法に基づく立件や警告を見送っていた。
同法がメールの連続送信を規制対象としていないためで、警察庁の片桐裕長官は8日の
記者会見で「今後法律にどう位置づけるかは、非常に大きな検討課題」と言及。
事件を機に法改正の論議が高まりそうだ。
【山下俊輔、一條優太、山田麻未、村上尊一】
ストーカー規制法は桶川ストーカー殺人事件(1999)を機に、議員立法で2000年に成立した。
恋愛感情に絡む「つきまとい」やその繰り返しを規制、処罰する。
拒まれたのに短時間で何度も電話をしたり、ファクスを送ったりする行為は「つきまとい」
として規制対象になるが、メールの連続送信は条文に規定されていない。
県警によると、殺害されたフリーデザイナー、三好梨絵さん(33)は小堤
容疑者から2006年ごろ以降、嫌がらせメールを送られ続けていた。
昨年4月は1日80~100通のメールを送られ「殺す」との文言があり
県警逗子署は小堤容疑者を脅迫容疑で逮捕。
同7月にはストーカー規制法に基づく警告をした。
メールは今年3月下旬から再び送られ始め、約20日間で1,089通に上った。
書かれた文言がわいせつなら規制対象になり、脅しなら刑法の脅迫罪に当たるが、同署が
全メールを確認しても「別の男と結婚するのは契約不履行。慰謝料を払え」といった内容に
とどまり、強制的な措置はとれないと結論づけた。
県警は過去にも「メールを何度も送られた」という女性の相談を複数
受け付けたが、文面から規制対象にならなかったケースもあるという。
ストーカー規制法は施行5年後の見直し規定があるが、成立から12年たっても見直されていない。
岐阜県は2005年、条例でメールを繰り返し送って不安を与える行為を禁止している。
警察庁も「被害者から相談を受けても対応が難しい」といった捜査現場の
意見を受け、今年3月から実態把握を進めていたという。
片桐長官は8日の記者会見で、議員立法で成立した同法について「関係議員とも
十分連携しながら必要な対応を取るように努力していきたい」と述べた。
◇住所知るためネットに投稿
小堤容疑者は三好さんの住所を知るため、以前の勤務先に連絡したり、インターネット
掲示板に書き込みをしたりしていたことが逗子署への取材で分かった。
昨年6月に脅迫罪で起訴された裁判の過程で住所を知った可能性もあり、同署は経緯を調べている。
同署は8日、東京都世田谷区の小堤容疑者宅を家宅捜索。
三好さん方アパート1階の掃き出し窓内側に土足の跡があり、ここから侵入した可能性が
高く凶器の刃物は小堤容疑者が用意したとみられるという。
◇「メールは立件できないなんて時代遅れ」…識者
ストーカー被害の相談を受けるNPO法人「ヒューマニティ」(東京都大田区)の小早川明子理事長は
ストーカー規制法について「電話なら立件できて、メールは立件できないなんて時代遅れ。大量の
メールが送られてきただけで十分恐怖。問題が多いのに改正しないのは国会議員が無関心なのでは」
と指摘する。
山内久子・秋田看護福祉大教授(67)は1995年、長女陵子さん(当時21歳)が同じ大学の男子学生に
無言電話や脅迫文などを何度も送られた末に殺害された。「1,000通以上のメールは内容に関わらず
脅かされ、不安になる。身体的被害に等しく、何らかの法的処分を下せるようにしてほしい」と訴える。
元検事の中村勉弁護士は「メールは電話やファクス以上に身近なコミュニケーション手段となった。
時代に応じた柔軟な法改正が必要だ」と強調した。
◇逗子女性殺害事件の経過
2004年ごろ:2人がバドミントンサークルで知り合い交際を始める。
2006年以降:2人が別れ、小堤容疑者が嫌がらせメールを送り始める。三好さんが東京都内で警察に相談。
2008年ごろ:三好さんが結婚、現住所に転居
2010年12月:三好さんが逗子署にメールの被害を相談。同署が家族を通じ小堤容疑者に注意。
2011年
4月:小堤容疑者が「ぜってー殺す」などと書いたメールを1日80~100通送る。三好さんが逗子署に相談し、同署は緊急通報装置を設置。
6月:逗子署が小堤容疑者を脅迫容疑で逮捕。
7月:神奈川県警がストーカー規制法に基づき警告。
9月:小堤容疑者に懲役1年、執行猶予3年の判決。三好さん方に監視カメラ設置。
2012年
3月~4月までの約20日間に小堤容疑者が「別の男と結婚するのは契約不履行。慰謝料を払え」などと1,089通のメールを送る
4月:三好さんが逗子署に相談。同署は10月までに少なくとも146回、自宅周辺をパトロールし、11月も継続。
5月:三好さんが「メールが来なくなったので静観したい」と逗子署に申し出る。
7月:逗子署が三好さんに最後の電話連絡。
11月:三好さんが自宅で殺害され、小堤容疑者も死亡。
※警察や関係者への取材に基づき作成