【毎日新聞 最終更新2014年4月29日 11時08分】 「てんかん」取材班
◇厚労省が是正指導2012年
厚生労働省の地方機関・福岡労働局が2012年7月、翌春に高校卒業予定の就職希望者に
「てんかんの生徒は主治医の意見書をハローワークに提出」するよう、福岡県を通じて
各高校に文書で依頼していたことが分かった。
雇用における差別的な取り扱いを禁じた職業安定法などに触れる疑いがあり、厚労省は
福岡労働局を指導した上で、同年10月に全国の労働局に再発防止を通知した。
てんかんを巡っては2011年4月、栃木県鹿沼市で、てんかんの持病を隠して運転免許を
不正取得した男がクレーン車を運転中に発作を起こし、はねられた小学生6人が死亡した
(男は懲役7年が確定)。
2012年4月には京都市東山区の祇園で軽ワゴン車が暴走し、観光客ら7人と運転していた
男性が死亡、京都府警は男性が持病のてんかん発作で事故を起こしたとして容疑者死亡で
書類送検した。
福岡労働局によると、事故を受け求人側企業から「生徒の面接時にてんかんの
有無を確認していいか」などの質問が多数寄せられたという。
このため福岡労働局は同年7月17日、てんかんを含め企業から質問や要望の多い項目について
回答をとりまとめた文書を職業安定課長名で作成して県と県教委に通知し、各高校長への
周知を依頼。
「持病がある生徒、障害を持つ生徒を一律に選考から排除することはあってはならない」と
する一方、「てんかんの生徒については保護者の同意のもと、精神障害者保健福祉手帳所持の
有無にかかわらず、主治医の意見書をハローワークに提出し、早期の職業相談を」などと求めた。
これに対し、高校教諭や患者団体から「特定疾患の開示強制に当たる」などと批判する声が
上がり、厚労省にも伝わった。
同省は職業安定法などに基づく公正な採用選考に反する恐れがあるとして同年9月、
福岡労働局を指導。
同年10月3日、障害者雇用対策課地域就労支援室長補佐らの連名で、再発防止を
求める文書を全国の労働局に出した。
文書は「ある労働局で高校新卒者求人の職業紹介に当たり、特定の疾患・障害を有する者に
対し、求人事業所に当該疾患・障害の内容を開示することを強要していると受け止められるような
指導を行った事案があった」と指摘。
「障害の開示・非開示については本人の意向で決定されるもので、開示強要と
受け止められることがないよう十分留意を」などと促している。
福岡労働局の河野政広職業安定課長は「開示強要の意図は全くなかったが、誤解を生んだのは
申し訳ない」とした。
日本てんかん協会の古屋光人常務理事は「地方行政レベルでもまだまだてんかんへの
無理解があることが露呈した事案だが、厚労省が速やかに指導してくれたことは評価したい」とコメントした。