16日夜から17日午前にかけて行われた陸上自衛隊第1師団(東京都練馬区)の連絡要員の
自衛隊員が23区に徒歩で出向き、被害状況や出動要請の有無などを確認する統合防災演習で
自衛隊側が23区に「隊員を区役所庁舎内に立ち入らせてほしい」と要請していたにもかかわらず
11区が拒否していたことが22日までの産経新聞の調べで分かった。
区職員の立ち会いも要請していたが、7区の防災担当者は立ち会わなかった。
要請を拒否した区には「区民に迷彩服を見せたくなかった」と明かした担当者もいた。
(三枝玄太郎)
隊員の立ち入りを認めなかったのは、千代田▽中央▽港▽新宿▽目黒▽世田谷▽渋谷▽中野▽杉並▽豊島▽北の11区。
大半は「自衛隊から要請がなかった」と断った理由を説明した。
防災担当職員が立ち会わなかったのは千代田▽中央▽港▽墨田▽世田谷▽渋谷▽中野の7区。
各区とも「要請がなかった」と口をそろえる。
千代田区の担当者は「いつ来て、いつ帰ったかは分からない」という。
しかし、自衛隊は口頭で23区に
(1)庁舎内に立ち入らせ、通信訓練を行う朝まで待機させてほしい
(2)庁舎の駐車場を使わせてほしい
(3)防災担当の職員に立ち会ってほしい-の3項目を要請していた。
自衛隊の担当者は「区によって要請の中身は変えていない。
お願いする立場なので強くは言わなかったし、文書は出さなかったが、確かに要請した」と話す。
陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊の石井一将連隊長は16日、記者団に対し、全面的な協力を得られたのは7区で、
残りは「休日で人がいない。庁舎内の立ち入りを断られた区もあった」と明かした。
庁舎使用を認めた区担当者は「区民のためになる」「有意義だ」などと話していたが、3項目すべての要請を拒否した
ある区の担当者は「区民との接触を避けてほしい」「迷彩服姿を庁舎内で見せないでほしい」と申し入れたという。
16日午後7時。
「市街地での災害訓練反対!」「基地へ戻れ」という反対派のシュプレヒコールと、「自衛隊頑張れ」
という励ましが交差するなか、陸自第1師団の隊員は練馬駐屯地を2人1組で出発した。
最も遠い大田区に向かった隊員は17日午前3時50分、大田区役所に到着。大田区側は課長1人が対応したが、区庁舎内には入らなかった。
2人を訓練終了後、練馬駐屯地まで乗せて帰る予定の自衛隊車両も、区庁舎から約300メートル離れた大田区消費者生活センターの駐車場で待機した。
通信訓練の際には自衛隊員は大田区庁舎の中に入り、防災担当部長は区庁舎内で隊員を休憩させるなどしたが、17日未明には立ち入らせなかった。
世田谷区には自衛隊員2人が16日午後10時~午後11時の間に到着したとみられる。世田谷区の防災担当職員が立ち会っていないため、到着時間は不明確だ。
渋谷区、中野区なども(1)(2)(3)すべて実現しなかった。
江戸川区では約3キロ離れた公園の駐車場で、江東区に着いた隊員は木場公園に泊めた車両で夜を明かした。
文京、品川区は庁舎の駐車場に止めた車中泊だった。
なぜ区側は夜通し歩いてきた自衛隊員に冷たい対応をしたのか。
例えば練馬区には市民団体が待ち構えて「市街地での災害訓練反対!」とシュプレヒコールを上げていた。
「庁舎内に立ち入らせるところを見せるのはまずいという判断があった」とある区の職員は明かした。
こうした「外圧」は23区のうち12区が「自衛隊に区の施設を使わせるな」といった内容の申し入れを区議会会派や市民団体から文書で受けていたことを取材に認めた。
今月12日には練馬区が住民監査請求を受けた。
申立人の弁護士は「自衛隊員に区役所の水、電気を使わせるのは自衛隊法などに照らして違法だ」と主張している。
弁護士は「訓練前に23区に電話してどういった対応を取るのか確認した」とも話した。
自衛隊の担当者は「訓練実施が決まると、反対運動が激しくなり、拒否派の区が増えた」と説明する。
ある区の職員は「私自身は受け入れたかった。だが話が上に行くと、プレッシャーがきつくなった。共産党などが反対するし、正直辛かった」と話した。
もっとも自衛隊側に「根回しのまずさ」を指摘する声も複数の区の担当者からあった。
「何度も内容が変わった」という担当者もいる。
新宿区は16日深夜まで職員6人で待機したが、いつまでたっても来ないので練馬駐屯地に電話したら「帰りました」と言われ、面食らったという。
「到着時に電話がほしかった」
訓練の意義はほとんどの区が認めた。
台東区の担当者は「実際に自衛隊に駐車場を使ってもらうことで、地下駐車場には自衛隊車両が入るスペースがないことが分かった。やってみないと分からない」と話した。
自衛隊員の庁舎内立ち入りを許可したのは、台東▽荒川▽板橋▽練馬▽足立▽葛飾の6区。
庁舎内の会議室などで待機した。
文京、品川区は庁舎駐車場で車中泊。墨田区では、区の本庁舎に入らず、墨田清掃工場で待機した。
石井連隊長の「協力してくれた」という7区は、以上の台東区など6区と墨田区を指すものとみられる。
17日朝は、千代田区を除いたすべての区で朝から通信訓練を行った。
千代田区では、同じ建物にある総務省関東総合通信局の通信に障害が生じるとして行わなかった。
数年前の小紙大阪版に、「制服しました」と題する記事が連載されていた。
文化部の女性記者がさまざまな職種の制服を着て、制服文化を追求するのが狙いだ。
そのなかに、陸上自衛隊の迷彩服も含まれている。
迷彩の色やパターンは、日本の植物の分布や種類を考えた上で作られているそうだ。
素材や袖の形などについても、千葉県松戸市にある陸上自衛隊需品学校で研究が続いている。
着用した女性記者は、実際にほふく前進してみて、危険な任務に耐えられるようほどこされた
工夫に感心していた。
迷彩服をなぜか受け入れられない人の存在は、承知している。
まさかそんな一部の声に配慮するあまり、首都直下地震に向けた自衛隊の
訓練をないがしろにする防災担当職員が、東京都内の区役所にいるとは。
16日夜から17日にかけて、練馬区の陸自第1師団から連絡要員の隊員が23の各区に徒歩で向かった。
被害状況の確認などを想定した演習だが、11区が区役所庁舎内への立ち入りを拒否していた。
「区民に迷彩服を見せたくなかった」と明かす担当者もいたという。
阪神大震災では、兵庫県知事から自衛隊に派遣要請が届くまでに、4時間もかかった。
震災が起こるまで、県や神戸市の防災訓練に自衛隊が招待されず
救援活動の大きな妨げになったこともわかっている。
自衛隊との連携がいかに大切か、東日本大震災でも思い知らされたはずだ。
昨年4月の小紙記事は、津波で家族4人を失った44歳の自衛官が「これ着てますから」と
迷彩服に触れながら、任務に没頭する姿を伝えていた。
職員の心ない仕打ちにも顔色ひとつ変えなかったであろう
自衛隊員の心情を思うと、やりきれない。