古戦場をゆく～関ヶ原～（その１・今須～不破の関周辺の史跡巡り）

この日は関ヶ原古戦場巡りと言うことで、岐阜県の関ヶ原町に行きました。
前回は平成10年12月に訪れた地ですが、岐阜城、大垣城を回った後の夕方からの古戦場巡りだったためあまり多くを回ることができませんでした。
今回はターゲットを関ヶ原に絞っていきました。
関ヶ原ICを降りると史跡が点在していますが、周り方が結構難しいです。とりあえず、国道21号（バイパスではない方）を滋賀県側に戻り、今須付近から不破の関周辺をとりあえず回ることにしました。
今須には、青坂神社があり、境内には徳川家康腰掛石があります。青坂神社はせいばんじんじゃとよみます。今須峠を下ってすぐのところにあります。
承久の乱の後、鎌倉から今須に来た武将長江重景が、祖先の勇将鎌倉権五郎景政を祀った神社です。長江氏は応永2（1395）年に斎藤妙椿と戦い滅びました。
現在はJR東海道本線に境内が分断されています。
境内には徳川家康腰掛石があります。
慶長5（1600）年9月15日の関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康が、翌日、石田三成の佐和山城に軍を進める途中に、今須宿の伊藤家で休憩しました。
写真の石は休憩の際に家康が庭で腰掛けたといわれている石で江戸時代を通じて代々本陣の指定を受けていた伊藤家で大切に保存されていました。
明治3（1870）年の本陣が廃止された後、青坂神社の境内に移され公開展示保存されることになりました。



今須から再び今須峠を東に戻り、今度は旧中山道に入ります。いったん西側に戻る形になりますが、しばらくすると常盤御前の墓があります。旧中山道沿いのさらに脇道沿いに宝篋印塔や五輪塔が立ち並んでいます。その中の一基に「沙弥孝存暦応三年二月二日」の銘があります。その伝説は多いそうですが、その中の一つとして常盤御前の伝説があります。
常盤御前は都一の美女といわれ、16歳で源義朝の愛妾となりました。今若、乙若、牛若（源義経）の3児を産みました。
義朝が平治の乱で敗れ殺されると、一時期平清盛の愛妾になりました。　
伝説では、常盤御前は東国へ走った牛若を行方を案じ、乳母の千種と後を追ってきましたが、土賊に襲われて命を落としたといわれています。
それを哀れんだ里人がここに葬り塚を築いたと伝えられています。
そしてその後母親を殺した土賊六人を、牛若丸が皆殺しにして母の恨みを晴らしたという岩佐又兵衛の描いた十二巻の絵巻物もあります。
この地を貞享元（1684）年、この地を旅した芭蕉が、その帰途この地に立ち寄って次の句を詠みました。
「義朝の心に似たり秋の風」


近くには黒血川が流れています。672年の壬申の乱で、不破の関の藤川の西側に大友皇子方、東側に大海人皇子方が布陣し両軍初の衝突が起きました。７月に大友軍は玉倉部邑（たまくらべのむら・現関ヶ原町玉）を経て大海人軍の側面を突く作戦に出ました。しかし大海人軍は撃退し、その後この不破道を通って近江へ出撃しました。この川は元々山中川と言っていましたが、この激戦で、両軍の兵士の流血が川底の岩石を黒く染めたことから「黒血川」の名がつきました。



旧中山道をさらに東側に行くと、弘文天皇御陵候補地・自害峯があります。壬申の乱で大友皇子（弘文天皇）は大津の長等山で自害されました。大海人皇子（天武天皇）方の将、村国男依（むらくにのおより）は、その首を持って大海人皇子の本営の不破の野上行宮に凱旋しました。首実検の後、この丘に葬ったと伝えられ、明治時代に弘文天皇の陵墓候補地の一つとされました。三本杉がそのしるしとなっているそうです。


更に東に行くと藤古橋があり、藤古川の案内看板がありました。藤古川は古くは関の藤川といい、壬申の乱では川を挟んで東が大海人皇子軍、西が大友皇子軍が陣しました。
東側の松尾地区の住民は大海人皇子方を支援し、西側の藤下、山中地区は大友皇子方を支援しました。戦後も松尾地区は天武天皇（大海人皇子）を祀って井上神社と号し、藤下・山中地区は弘文天皇（大友皇子）を氏神として現在に及んでいます。


近くの不破関跡です。
壬申の乱の翌年、天武天皇は、畿内と東国の接点であるこの地に不破関を置き、天下の変乱に備えると共に通行人たちを調べました。越前の愛発関、伊勢の鈴鹿関と共に日本の三関とされました。天皇・皇后が崩御された時や、皇族重臣の左遷、謀反を起こす者のあった時など、必ず固関使を遣して、関を固めさせました。
延暦8年（789年）に三関は廃されました。しかし、必要に応じて関跡を固めることは、その後も続けられました。


藤古川の案内看板に説明があった天武天皇を祀る井上神社です。


ここからは、あの小早川秀秋が陣した松尾山は近くにあります。次はそこのレポートです。