路上を走っていて、何となく気になってしまう車があります。
このキザシも、路上で見かけるとつい意識してしまう一台です。

スズキキザシ・FFモデル(2014年式)
2.4リッター直4DOHC(188ps/6500rpm、23.5kgm/4500rpm)
今回、新車販売当時でさえ試乗が難しかったこれを乗り回す機会を得ました。

(H28.1の再掲)…当時のマイカー・ボルボS60と
この個体には4年ほど前にもチョイ乗りしています。あれから4年を経て多少のくすみが見え始めていましたが、その独特の雰囲気は健在です。
デザインは同社の登録車スイフトとの近似性を感じさせるもの。
コンセプトモデルは古典的なカッコ良さをまとったモデルでしたが、量産モデルのデザインは凡庸。ただ、カッコよさで勝負しても、世の中その類のモデルはいくらでもありますから、スズキの既存車との共通性を意識させる無難なデザインに敢えて留めたのは、同社らしい見識ゆえなのでしょう。

※画像はスズキ公式サイトより拝借しました。
さて、触れた印象ですが、まず最初はステアリングの握りが細いこと。今どきこんなに細いのは珍しく、恐らく登場当時の10年前でもあまり例を見なかったものと思われます。
そんなことを気にしつつ走り出すと、あまりロックアップしないCVTの制御が設計年次を感じさせます。昨今のモデルは燃費を考慮して積極的にロックアップを効かせますが、スムーズさを狙ったのかそういう制御にはなっていません。
しかしながら、現代のモデルと比較して明らかに異なるのはこのくらい。
見た目の凡庸さと、失礼を承知で言えばスズキというブランドに対する低めの期待値とは対照的に、フラットな乗り心地や直進性の高さなどは異例なほど高水準で、もはや驚きです。こんなに良い車だったのかと、今更ながらに感心してしまいました。
エンジンは黒子に徹していて、快音やスムースネスと言った評価軸に照らせば大したことはありません。むしろレギュラーガス指定ながらも188馬力を2.4リッターから無理なく発揮していることが評価されるべきなのでしょう。

235/45R18という不釣り合いなサイズのタイヤを履いていることもあり、S60やXEといった私が乗ってきた欧州車と比較すると足回りの剛性感は幾分低めに感じたものの、初代ISと比較すればこちらのほうが好印象です。
というわけで、キザシは倍近い価格のモデルと比較してもそう大きく劣らず、むしろ新車当時の価格を考えれば想像以上に走りが高級です。

今回の個体は初度登録から5年半を経ているものの、走行距離は未だ10,000キロ未満。手荒く乗られた形跡もなく、今となってはこれほど状態の良いキザシはそう多くは残っていないでしょう。
今のスズキの立ち位置を考えると、同社から再びこのサイズの車が出てくる可能性は低く、歴史に名を残す一台となることは間違いありません。
このまま忘れ去られてしまうにはあまりに惜しい一台と言えそうです。
Posted at 2020/04/29 21:50:04 | |
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