
突然
親友から電話があった
学生時代からの親友で同い年なのに弟みたいな奴
何かあるごとに俺にだけは遠慮なく相談してくる
高校で世界史を教えてるベテラン教師だ
「グラツリさん 実は俺の担任のクラスの生徒が授業料を滞納してて退学になりそうなんや・・・」
確かにこんな不況下
色々な事情で 支払いが出来ない生徒もいるのかもしれない
俺は黙ってそいつの話を聞いてやった
しかし・・・
過去にも教職を辞めたいという相談を受けていたし
何より「生徒に対する情熱」をそいつからは感じられなかった
そんな親友だから 過去に何度も「先生」という生き方について説教をした
今回も俺からの説教を欲しがってるのか?と思い ついこんな事を口走ってしまった
「お前のクラスの子供なら 迷わずお前が支払ってやれ!」
親友も内心では立て替えてやりたいという想いがあったのか暫く沈黙した
事情を聞くと何度もその子のお父さんとは逢った事があるらしく
「何日までに支払いますから」と毎月の月謝を引き延ばされてたらしい
そして借金もあるのか ある日を境に親友からも逃げるようになったそうだ
学校側からの支払い期限は3月末まで
上司から「もう期限は過ぎたので退学届けを提出するよう説明をしてくれ」と迫られた
一昨日
親友が生徒の自宅へ訪問すると
小学校5年生の娘しか居なかったようだ
お父さんの居場所を聞くと○○○島に里があるので行ってると思うとの事だった
親友は今日の職員会議までにお父さんと話がしたい!との一心で
昨日 その島へ船で渡った
港から俺に電話があり
「俺の携帯はPHSやから もう島に渡ると電波が届かんかもしれん 家内の携帯電話を借りてきてるから見た事もない着信番号でも取ってくれよ」
俺は・・・
なんか親友がとてつもなく遠い所へ行くような気持ちになった
そして生徒と父親の名前だけを頼りに実家を見つけた
ところが・・・
そこに住んでたのは祖母独り
プレハブの家に崩れた壁
父親の居場所を聞いたが「知らない」と一言
親友はあまりの貧困な生活ぶりに何の話も切り出せなかった
「グラツリさん・・・いなかったよ・・・ もう時間がない・・・船で戻ったら もう一度今の家へ行ってみる」
既に昼の3時をまわってた
親友は夕方から飯も食わずに
ずっとずっと生徒の家の前で待っていた
そして午後10時過ぎ
「グラツリさん・・・明日の朝の9時の職員会議で俺が父親から預かって来たと言って授業料を納めようと思う」
そう電話があった
俺も最初は「生徒が困ってるなら先生が助けるのは当たり前や!」とは言ったものの
おそらく戻ってはこないであろうお金を渡す事に疑問を感じてきた・・・
ましてや 立て替えて支払ったところで生徒が学校へ来るとも限らない
しかも そうやって手を差し伸べた有り難さを父親や生徒が受け止めてくれるとも限らない
そんなやり取りを親友と電話でしてたところへ!!
「グラツリさん!!お父さんが帰って来た!!後から電話する!!」
そう言って途切れた
数分後・・・
「お父さん・・・俺の気配を感じてそのまま車で逃げたよ・・・」
そうだ!!
それだ!!
お父さんは本当は先生と話がしたかったはず!
でも借金取りが待ち伏せしてると勘違いしてる!
それなら手紙を書いてポストに入れ ドアに「手紙を読んでください!」と貼っておけば??
親友はコンビニへ走り 手紙セットを手に入れ書いた
「私が立て替えてでも○○君を続けさせたいです」
今朝
親友から電話があり
「ドアの貼紙がない!お父さんの車がある!話し合ってくる!」
嬉しそうな声だった
数分後
「もしもし・・・ 俺・・・ お父さんが泣きながら土下座して・・・息子を頼みますって・・・」
あいつが
号泣した・・・
声にならないほど・・・
泣いた・・・
俺も一緒に
泣いた・・・
今朝の職員会議で
進級が決まったそうな
必死で親友が他の先生方に在籍を頼んだそうな
お前・・・
いつの間にやら
ええ先生になったのお・・・
Posted at 2014/04/04 11:19:59 | |
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