
またも我が建築業界の問題ですが、マンション建設で
原爆ドームの景観に赤信号が灯っています。
世界遺産・原爆ドームからわずか100m先に高さ45mのマンションが建設されているようです。市民団体などが、工事計画の縮小の指導や、高さ制限をかける条例の早期制定を市に求めていますが、すでに着工した建物を対象にするのは難しいため難航しているようです。「このままでは危機遺産になってしまう」と懸念する声も上がる一方で、建設を放置した市の甘さを批判する指摘も少なくありません。
原爆ドームと同時期に世界遺産に登録され、すでに
危機遺産に置き換えられているケルン大聖堂のようになりかねないといわれています。ユネスコを支援する民間団体「広島ユネスコ協会」と被爆者団体などでつくる「世界遺産『原爆ドーム』の景観を守る会」のメンバーが相次いで市役所を訪れ、報道陣に訴えたました。ドイツ西部のケルン市にある同大聖堂は96年に世界遺産に登録。157mの双塔が特徴のゴシック建築ですが、ライン川を挟んだ対岸で高層ビルの建設計画が進みました。そして世界遺産を認定する世界遺産委員会は「空間的統合性が損なわれる」として、04年に危機遺産に登録しました。
日本ユネスコ協会連盟は今年3月に出版した「ユネスコ世界遺産年報 2006」で「都市部に歴史的文化遺産を保有する日本や先進国に取って他人事ではない」と警鐘を鳴らしている。
広島市は世界遺産登録に先立つ95年、ドームと平和記念公園周辺を、景観を守る緩衝地帯(バッファゾーン)というものに指定した。業者は新造の建物の形や色などを事前に市と協議する必要がある。だが高さの規制はなく、問題のマンションにも建築確認OKを出してしまっている。ゾーンの中には、96年の世界遺産登録後、高さ40mを超える4棟のビルも建っており、まさにザル状態。
建築主の不動産屋の担当者は「市と何度協議をしても『高さ』の話は出てこなかった。すでに全51戸が完売しており、計画の変更はできない」といっているようだ。
市は2004年7月、学識者や被爆者らを集め、原爆ドームの保存や景観などを考える「平和記念施設あり方懇談会」を設置。保存方針を出している。懇談会のメンバーからは「ドームを守る一方、景観を壊すことを容認する市の姿勢は矛盾に満ちている」とのこと。
市議会予算特別委員会では、文化財保存を担当する市教委が1月まで、マンション建設を知らされていなかったことも明らかになった。
部局間で連携が取れなかったことに、市職員からも「もう少し早くことの重大性に気づくべきだった」「建築確認を下ろす前に文化財担当や平和推進部門に相談すべきだった」という批判が漏れてくる。
高さ制限をしてこなかった理由を市は「商業地と密接しており、難しい」と説明する。だが、72年に45m(景観地区は20m以下)の高さ制限を持つ条例を制定した京都市をはじめ、今年3月には札幌市が60m(住宅地の一部は24m)制限の規制を導入。高知市では高知城周辺で28mより高い物件は建てられない。
市は
「問題のマンションを規制できる法律がなく、高さ指導は行政の範囲を超えている」と繰り返している。一方で、秋葉忠利市長は「高さ制限を含む条例化を急ぎたい」と話した。今後どう開発と保全のバランスを取っていくのかが注目されている。
『危機遺産』武力紛争、災害、都市の乱開発などで「重大かつ特別な危機」がおよんでいると世界遺産委員会から判定された遺産。登録されたのちに、管理体制が改善されない場合には
世界遺産からの抹消もある。現在34件が登録されている。ケルン大聖堂のほか、紛争が続くエルサレムの旧市街と城壁群や、内戦で仏像が破壊されるなどしたバーミヤン渓谷の古代遺跡群などがある。
世界は別にして国内のこの体質的なことは、耐震偽装問題に共通してると言われても致し方ないかもしれない。
国や地方自治体の行政から業界の怠慢・驕りなど、私には共通しているように思えて仕方がない。
Posted at 2006/05/10 13:16:43 | |
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