2005年12月08日
以前のブログで許容応力度設計法を取り上げたが、建築基準法上、建築物における構造計算は、許容応力度設計法だけではなく、部材塑性も考慮し建築物の終局状態における保有水平耐力と変形能を確認し、大地震動に対する安全性の確認を行わなければならない。しかし、建築物の保有水平耐力計算値は一義的に定まるものではなく、建築物のモデル化や計算手法の選択など設計者判断の影響が大きい。
また、これらに対する評価法の精度、特にバラツキの評価には限界があり、確定値に対するあらゆる変動要因を考慮して信頼性を保証できる評価法が確立していないので、この部分に対しても設計者の判断が重要である。
設計者は、建築物の保有水平耐力計算に際して主に定められる事項がある。
(1)〔建築物の靭性評価・崩壊形の保証〕
建築物各層に要求される必要保有水平耐力は、各層の崩壊形と変形能によって定まるが、建築物は変形性能の異なる耐震要素によって構成されているので、どの時点を層の終局と考えるか判断する必要がある。また、外力分布の変化や動的な効果等によって、実際の地震時には、判断した崩壊形とは異なる可能性がある。終局と判断した時の崩壊形をどの程度の確率で保証するか、設計者は判断しなければならない。
(2)〔部材の靭性能と破壊形形式の保証〕
層の保有水平耐力と靭性能は、構成する耐震要素の強度と変形性能で定まるため、部材の終局強度算定式と変形性能の評価式の選定を行わなければならない。また、層の終局と判断した崩壊形を保証する為の部材の破壊形式をどの程度の安全性を保証するか、考慮しなければならない。
例えば、柱と梁のせん断余裕度をどう定めるか、を設計者は判断しなければならない。
以上の点について整形な建築物に関しては「鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説」や「鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説」が示されているが、立面形や壁配置が複雑な一般の建築物に関しては検討が不十分である為、指針等が確立されていない現状にある。
※保有水平耐力→建築物が極限状態に達した時に保持し得る水平抵抗力のことである。設計された建物が大地震時に、その一部または全体がまさに崩壊する状態の時、耐震要素である柱・壁・ブレースなどの持つ水平せん断力の総和を、その階の保有水平耐力という。
※限界耐力計算法については今度にします。
Posted at 2005/12/08 12:01:45 | |
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