天安門事件から30年。
というわけで、この週末は、事件当時に中国共産党の総書記だった、趙紫陽の回想録を読んでいます。
首相を歴任したあと総書記に就任した趙紫陽は、職制上は国家のトップでした。
ただし実際には、高齢の長老・鄧小平が最高権力を牛耳っていたのです。
趙紫陽は鄧小平によって地方から引き抜かれ、急激に昇進したこともあり、北京のインサイダーたち(要するに政敵たち)には人脈もなく、不愉快な存在。
なんとか足を引っ張ってやれという空気で満ちています。
そこで、天安門でデモを始めた学生に対して融和的だという口実で趙紫陽は解任され、自宅軟禁されてしまうのです。
実権を奪った政敵たちの手によって天安門の大虐殺が発生したのでした。
趙紫陽は、死ぬまで自宅軟禁されたままでした。
もちろん今でも中国では禁じられた人物であり、回想録の執筆なんて、もってのほかですが、ではなぜ回想録が現存しているのかというと、古い中国演歌のミュージックテープに、極秘裏に肉声で上書き録音し、孫のオモチャ箱の中などに合計30本ほど潜ませて残されていたからなんですね。
その肉声カセットテープが、趙紫陽の死後、中国政府の目をすり抜けて西側に流出したのです。
(音声はワシントン・ポストのHPで公開されているそうです。私は未確認ですが……)
天安門事件とは、なんだったのか。
中国という独裁国家の権力の裏側を、これほど鮮やかに描いた本があったでしょうか。
目からウロコの本でした。
「私は経済的な非効率、生産から消費に至る流通上の欠陥には本質的な原因があることを理解した。
それは計画経済そのものである」p206
……つまり、共産主義こそが非効率の元凶である、と言い切ってしまえる人物が中国共産党の総書記に就任し、改革を行おうとしていた時代が、かつて存在していたのですね。
天安門事件とともに、もはや永久に葬り去られてしまったのですが……。
Posted at 2019/06/09 20:53:52 | |
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