
前からずっと観たいと思っていたのですが
なかなか舞台では上演される機会が少ないようで
図書館でビデオを借りて来たものを観ました。
なるほど、サロメ役を演じきれるソプラノ歌手は
なかなかいるまい。
近頃、話題になっている映画『ダ・ヴィンチ・コード』
により、にわかに
宗教(キリスト教)に目を向けられた方も
少なくないと思うが、『サロメ』も原作は「新約聖書」の中の
『マタイ福音書』『マルコ福音書』に記されているヨハネ殺害の
物語である。
(以下は 知的で神秘的、かつ妖艶な美女サロメを想い描きつつ
読まれてクダサイ。)
舞台は紀元30年、シリアのヘロデ王の宮殿大テラス
宴会に飽きた王女サロメは宮殿内から抜け出て
テラスへ出て来て、囚われの予言者ヨカナーンという者が
どんな人物なのかこの目で見てみたいと言う。
護衛隊は王の命令で禁止されているからと王女の申し出を拒む。
しかし護衛隊長が自分に想いをよせていることを知っている
サロメは隊長を呼び「明日の朝、あなたにだけ微笑んであげる」
「あなたの目だけを見つめてあげる」と色気たっぷりに言い
誘惑に負けた隊長にヨカナーンを地下牢から連れ出させる。
そしてヨカナーンに一目惚れするサロメ。
(おそらくその美貌・その身分から過去には
ふられた事さえないだろう)
「お前の腕はなんて白くて綺麗なのだ
それはまるで王宮を舞う鳩のようだ」と懸命に愛の歌を歌う。
指先を触れようとしたサロメを強烈に退けるヨカナーン、
「お前は汚れた悪魔から生まれた娘だ」などとののしる。
「お前の髪はなんて黒くて美しいのだろう
こんなに美しいものを私は今まで見たことが無い」
ヨカナーンの髪を褒め称え愛しそうに歌うサロメ。
髪に触れようとするとまたもや「やめてくれ!汚らわしい!」と
拒絶される。
怒りをにじませた目で「いや、お前の髪はまるで黒い蛇が
うずまいているようだ!」と歌うサロメ。
怒り終わると又愛の歌が始まる。
「お前の唇は赤い、~より赤い、~より赤い、こんなに
美しいものを私は今までに見たことがない」と
褒めて褒めて褒めまくる。
「あぁ、お前の赤い唇に接吻したい!」顔を寄せ身をくねらせるサロメ。
もうメロメロで目も虚ろなヨカナーン。
(ここで隊長はサロメの背後で自分の剣にて自殺)
サロメの美声の魅力と妖艶さに今にも押し倒されそうに
なっているがうっとりとし、抵抗する力さえ失った唇は
「いやだ、お前などとは接吻しない」とつぶやくような
かすれた声をやっとしぼり出す。
「あぁ、愛しいあなた、きっと私はあなたに接吻するわ」
更にサロメが艶やかな美声で歌う。
サロメの誘いを拒否し、自ら地下牢へ戻るヨカナーン。
魂を抜き取られたようにぼんやりその場にたたずむサロメ。
そこへサロメが宴会の場にいない事に気付いた王が来る。
「踊ってくれないか? もし踊ってくれたなら
お前の欲しいものを何でもやろう。何でも好きなものを言えばいい。
ワシの国の半分だってやるぞ。」と話す王。
踊るサロメ。
(この踊りが身にまとった薄衣を1枚、又1枚とゆっくり
脱いで行くというもので、何とも言えない雰囲気がある。)
身につけている上衣が金のブラ一枚になったところで
踊りを終えるサロメ。
上機嫌の王が「何でも褒美をやろう」とサロメに欲しいものを聞く。
再び先ほどの感情のない顔に戻り「銀の皿を・・・」と答える。
益々上機嫌な王。
「銀の皿が欲しいなどと何と可愛いことを言うやつじゃ。
何でも欲しいものを乗せてやるぞ、果物がよいか?
それとも指輪か?」と聞く。
静かな声で「ヨカナーンの首を・・・」と答えるサロメ。
ものすごく驚く王。
なぜならヨカナーンの予言を頼りにしていたからだ。
「男の首なぞ皿に盛ったところで気持ちが悪いだけじゃ。
果物にしなさい。さぁ、果物を持って来い」と家来に言う。
語調を強め「私はヨカナーンの首が欲しい!」と歌う。
「ダメだ、そんなものを欲しがってはいけない、ならぬ。」と王。
「あなたは家来や護衛達多くの人々の目の前で約束しました。
『何でも欲しいものをやる』と!ヨカナーンの首を私に!」
強く激しく歌う。
(本当にすごいです。ビデオは101分ものですが
ほとんどソプラノ歌手による超高音域歌唱の一人芝居、歌いっぱなし)
「多くの人の前で約束したのに」と言われてはさすがの王も
仕方なく了承する。
地下牢からヨカナーンの首が運ばれ銀の皿に乗せられる。
それを愛しく悲しい目で見つめ「言ったでしょ。
『私はあなたにきっと接吻するから』と・・」
「やっとお前に接吻できる」と恍惚の表情で喜びの歌を歌った後
やっと接吻できるという興奮が高まりきった陶酔の頂点で
ヨカナーンの唇に長い長い接吻をする。
「あぁ、ヨカナーン、私はお前の唇に接吻した!」と
絶頂の喜びを歌うサロメを見た王は「何と恐ろしいことだ・・」
「殺せ!」と命じる。
その言葉に楯と甲冑に身を固めた兵士達が殺到し何本もの槍で
突き殺されるサロメ。
ここで急に幕が下り終演となる。
作曲:リヒャルト・シュトラウス(1864~1949)
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:カール・ベーム
サロメ:テレサ・ストラータス(1938年5月26日トロント生まれ)
映像:1974年7月ウィーン