
某ポルシェ雑誌の試乗インプレッションから
『現代に生き続ける、路上の帝王』
マレーシアから帰国して1週間、私は東京から
850㎞離れたとある山間部にいる。
澄んだ空気と、ワインディングロード下を
流れる清流が、とても心地よい。取材で灼熱の
セパン・サーキットにいたのが嘘のようだ。
そして待ち合わせ場所となる駐車場に『それ』は居た・・・。
『どうぞ楽しんで』と、にっこり笑うオーナーからキーを受け取りながら
今回の試乗車『930ターボ』に近づく。少しローダウンされたそれは、
ぱっと見オリジナルのままのブラックボディ。しかし、ドアに触れた途端
隠された素性を知る。なんとドアはおろかフェンダーやフロントパネルが
カーボン製なのだ。極端に軽量なドアを開けスチール製のロールケージを
潜り抜けカーボンケブラー製のドライバーズシートへ。
短いクランキングの後、爆音と共にエンジンが目覚めた。
ゆっくりと路上に走り出した瞬間、その軽量で堅牢なボディの美味しさ味わう
ことが出来る。タイヤのひと転がりの軽さが違うのだ。
軽くレーシングさせると、瞬時に跳ね上がる回転計、アクセルに対して
リニアに反応する軽量ボディ、「これが4速のターボ車なのか?」
峠の山々にこだまするエクゾーストサウンドを楽しみながら、次々と
コーナーを攻める。けして乗りやすい車ではない、きちんと前後の加重移動を
行わないと曲がらないのだ。言い換えればコーナー手前でちゃんと減速し
前輪に加重させてやれば、アクセルワークでノーズの向きをコントロール出来る。
後は、絶大なリアのトラクションを生かして、猛然とコーナーを脱出するだけだ。
アップデートされたばかりのKKK製K-27タービンと、細部まで手を入れられた
3.3リッター空冷フラット6エンジンは、シングルターボの爆発的な加速を、
拍子抜けするくらい簡単に生み出す。 驚くのはレスポンスの良さ、従来の
ターボ車の常識を覆すチューニングが施されているという点だ。
アクセルに呼応して一気にレッドゾーンまで吹け上がるエンジンは、高回転
域でもけっしてバラついたりしない。レーシングバルブスプリングやスペシャル
カムシャフトなど、このエンジンのために強化されたパーツに躾(しつけ)が
行き届いているといった感じだ。 思わず頬が緩む・・・
こんな面白い車があるのだろうか・・・
Uターン、今度は軽く流しながらスタート地点へ。
すると、後方から一台のバイクが追い上げてくる。
「ドゥカティ900SS」
横に並んだ後、ライダーは車内を軽く覗き、一気にポルシェを抜き去っていく
そろそろ、この峠はバイク軍団が走る時間のようだ。
スタート地点に戻ると、先ほどのドゥカティライダーが、ポルシェオーナーと
談笑している。頭に白いモノが混じる初老のライダーは、時折一緒に走る
友人なのだそうだ。
『どうです。面白かったでしょう?』
オーナーが言う『楽しんで』という意味が良くわかった。
古い車やバイクを所有する楽しみ、そしてオリジナルを維持しながら
より官能的に楽しむというチューニングの方向性。
その昔、路上の帝王と呼ばれた『ポルシェターボ』は、
現代に生き続けている。未だ戦闘力を失わない、現役の遊撃手として・・・
文:斎藤 孝/写真:米沢 治彦
あー↑もちろん全てフィクションです(笑)
Posted at 2007/10/04 17:35:40 | |
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