・おしん・・
いつか銀山温泉へ、という思いがつのっていた。銀山という言葉から、鉛色の景色を想像してしまう。銀山川を挟んで古色蒼然(そうぜん)と…いや、大正ロマンを漂わせた温泉宿が建ち並ぶ、湯の街エレジーが聴こえてきそうなたたずまいにあこがれていた。
銀山川を見下ろす高台にあるバス停。ここからはまだ温泉街は見えない。下って行くと銀山川に架かる最初の橋、白銀橋までは数分。この橋から上流左右に銀山の宿が大正時代から時空を超えて迎えてくれる。
銀山温泉は山形・大蔵村の肘折温泉と同様に、温泉場の醸し出すムードが湯客を酔わせる。これは1旅館・ホテルだけが突出して人気を得るのではなく、温泉場が一体となった温泉街造りが土台にある。
白銀橋から上流を見て、左岸手前から酒田屋、古山閣、旅館松本、昭和館、源泉館、やなだ屋、(この間に、山の神神社へ続く階段がある)、小関館。右岸にはしばたや、藤屋、永澤屋、能登屋、旅籠いもうとやと並んでいる。湯客の被写体一番人気は能登屋。木造3層の上にさらに物見櫓(やぐら)的な建造物を頂いた姿は、異彩を放っている。これも能登屋1館では浮き上がってしまう。ともに歴史を頑固に感じさせる宿が文化財の陳列のように並んでいてこそ、能登屋も生きる。
夜、橋の上に設けられた街灯に明かりがつくと、情緒も一段。そぞろ歩いて湯に入り、そして食事となる。ビールがのどをチリチリ下る。うまいなあ。先ほど見た夜景が反復するように浮かぶ。ビールがチリチリ。うまい。
宿泊した藤屋はアメリカ人のジニーさんが嫁いだ宿として話題を呼んだ。藤ジニー。立派に若おかみの役を果たしていた。
藤屋には露天風呂がない。風呂は男女各1つと、貸し切り(無料)家族風呂が1つ。浴槽は小ぶりだが、温泉街の有り様が加味されて湯の味は引き立つ。家族風呂の元湯・河原風呂を勧めたい。湯は地下に下りる。河原と同じ位置にあるようだ。たたみ1畳ほどの湯船ながら、洞くつ気分に秘密めいた楽しみも加わり、趣がある。
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