
バックミラーに映る元愛車・ロードスター。
リトラを上げたその顔は、いつになく無邪気に笑っているかのよう。
その表情を見て胸が締め付けられる様な思いで、新オーナーさんを帰路へと誘導しました。
ランデブー走行すること10分。
ロードスターは新しい住まいへと旅立ってゆきました。
昨日の夜のことです。
軽量ボディに素直なハンドリング。
余計な電子制御がなく、運転操作をダイレクトに反映する挙動。
低回転域では鋭いレスポンスを見せるエンジン。
何よりも、現代のクルマにはないキビキビとした走りはいつでも刺激的で、カタログ値130hpながらアンダーパワーを感じたことは一度もありませんでした。
25年も前から洋の東西を問わず語られてきた通り、ロードスターは紛れもなく立派なスポーツカーです。
しかし、通勤車として毎日乗っているうちに、次第に気になってくる点が一つだけありました。
それは、ボディ剛性の低さ。
ボディ剛性をNAロードスターに求めるのは見当違いだ、と言われればその通りかもしれません。
元々の設計に加えて19年という年月を考えれば、経年劣化やブッシュ類のへたりも少なからずあるでしょう。
一度でもNAロードスターに乗られたことのある方なら分かっていただけると思いますが、綺麗な道でも感じる独特の足回り(特にリア)の振動(「プルプル」感)。
少し凹凸のある路面を走る時の、明らかに分かる車全体のよじれ。
元気な時はこれでも良いのです。
しかし、通勤車として使う以上、残念ながら運転時には体も心も疲弊していることが多いのです。
48時間連続勤務の後に別の場所に移動してすぐまた仕事、なんてこともあります。
そんな時・・・
疲れた体にはこれらの振動がかなり堪えるのです。
この一点を除いては特に不満もなく、気付けば随分とリフレッシュもしてきただけにもったいないのですが、この車を運転していて楽しめていない事に気付いた時・・・
もっと相応しいオーナーさんがいるだろうと考えるに至ったのです。
しかし、中古車屋さんに売るのも何だか忍びなく、かといってそうタイミングよくNAロードスターに乗りたいと思っている人なんて見つかるわけないよな、と思っていた矢先のこと。
約2か月前になりますが、あるみん友さんのブログを何気なく読んでいて驚きました。
ロードスターをこよなく愛し、かつてはオーナーであり、今手元にはないが再びロードスターを強く求めている方がいたのです。
しかし、その方は本格的にレースにも参戦されている方。
街乗り仕様のロードスターなんて興味ないだろう、と思いダメ元でコンタクトを取ったのですが・・・
意外にも興味を持ってくださり、最終的には遠くから車を見に来ていただきお譲りすることに決まりました。
試乗してもらった際に助手席でその運転を見せていただいて、ただならぬドライビングスキルの持ち主であることはすぐに分かりました。
さすがはレーサー。
運転しながら、細やかなクルマの情報をじっくりと収集されているようでした。
試乗終了後、5分と経たずに正式に契約となりました。
それから2週間。
必要書類を揃え、納車となったのが昨日です。
本当は、感傷的になることなく淡々とロードスターを送り出すはずでした。
実際に直前までは冷静でいられたのですが・・・
あの表情をミラー越しに見た時、一気に込み上げてくる感情がありました。
それだけに、ロードスターへのただならぬ愛を持っておられる方が新しいオーナーさんで本当に良かった。
少し冷静になって・・・
自らの意思で手放しておきながら、なぜ自分でも驚くほど感傷的になったのか?と、考えてみました。
毎日通勤車として乗っていたということは、肉体的・精神的に最も苦しい時を一緒に過ごしてきたことにもなります。
クルマは車、あくまでも機械。
それは承知の上ですが、どこか戦友の様な意識を持っていたのかな、とも思います。
ロードスター。
2年弱の付き合いだったけれど、今までありがとう。
そして、引き続き乗って下さる新オーナーさんにも心から感謝です。

Posted at 2014/10/22 00:01:51 | |
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