
私には、見事に友情が成立している男友達がいる。
なんでも相談できて、悲しいことも辛いことも、その子にだけはなぜかすべて話せてきた。
ノリくんは、超理系の男の子。高校時代の友人で、数少ない独身の友達だ。
とても頭がよくて、数学や物理は彼に解けない問題はないというくらいの秀才だった。
大学院では、「テレポーテーション」の研究をしていたらしい。
数年前の話だが、ノリくんは当時、仕事で神奈川に住んでいたのだが、実家が名古屋だから、帰省してきて、なぜかクリスマス前に久しぶりに会うことになった。喫茶店でお茶をした。
ノ (ノリくん)「あのさ、俺にクリスマスプレゼント買う気ない?」
ミ(澪) 「は?」
(※私の心の声 何の義理があって私があんたにクリスマスプレゼント買わなあかんの。いや、でも待てよ。理数系を赤点とらずにきたのは、この人のお陰だよね。しかも、人生のいろいろな節目で助けてもらったし。)
ノ 「どう?」
ミ 「そうだね。まあ、いいよ!よし、買うっ!」
ノ 「おっ!やったぁ。気前いいねえ。」
ミ 「ところで何がほしいの?」
ノ 「マフラー」
ミ 「マフラーかあ。寒い日にはいいよね。似合いそうだね。で、何色がいい?」
(可愛いとこあるじゃん。マフラーくらいなら全然いいよ~。)
ノ 「は?色!?・・・銀色。」
ミ 「銀色!?ずいぶんと、近未来的な色が好きなんだね。どこのブランドのなの?」
ノ 「藤壺」
ミ 「フジツボ!?聞いたことない。」
(なんかおかしな名前だぞ)
ノ 「あのさあ、マフラーって首に巻くのじゃないぞ。車のマフラーだぞ。」
イントネーションが違っていた。よく聞いたら、首に巻くマフラーは「マ」にアクセントがあって、ノリくんの言うマフラーは単調な言い方でアクセントがなかった。
ミ 「バッカじゃなかろうか。マフラーなんて元々、車についてるじゃん!なんでわざわざお
金出して買うのかね。不良かね。」
そんなことは不良がすることだと思っていた。どうしたら車がカッコよくなるかなんて当時の私には知識すらなかったのだ。
ノ 「このマフラーが良いんだよ!音も良いし、マフラー替えるだけで、めちゃくちゃカッコよ
くなるんだな。」
彼は、レガシィ乗りだった。三代目のB4の黒色だった。
結局、私は首に巻くマフラーも、藤壺のマフラーもプレゼントしなかった。当たり前だけど。
それからしばらくして、ノリくんから電話があった。
ノ 「今、落ち込んでるんだ。なんか面白い話ないか?」
ミ 「ないよ。突然言われても面白い話はないさ。」
私のところにはなぜかよく、落ち込んだ人から、「面白い話をして。」と電話がある。
ミ 「ところでさ、マフラー買った?」
ノ 「自分で買ったさ。快適だよ。たまらないよ~♪」
ノリくんは冷静だったけどすごくうれしそうだった。
今の私には、彼がその頃、どんなに藤壺のマフラーがほしかったのか、切ないくらいよく分かる。
そんな気持ちを分かってしまえる自分がこわい。
でも、思えば、スバル乗りの人が知り合いに何人もいて、ノリくんもそうだったと考えたら、不思議な縁を感じる。きっと知らず知らずのうちに私もスバルが好きになっていたんだろう。そして、レガシィを買ったんだろうとそう思うのだ。
Posted at 2012/12/20 21:16:56 | |
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