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海ちゃん@全3巻のブログ一覧

2013年05月18日 イイね!

一生忘れえぬ人たち




一生忘れえぬ人たち



Part7 16 :945 :03/09/04 22:05 ID:mCM5UVcJ
数年前の話だが、バイクで走っていると前方のバイクが突然のエンスト・・。
セルを回しているが、全くかかる様子が無い。
「みてやるよ。」
といいバイクをみてみると、どうやらただのガス欠のようだった。

その事と、近くのスタンドまで15分くらいかかることを伝えたら、
何故か、泣き出す彼女。
話を聞くとどうやら、就職試験の開始まで時間ギリギリらしい。

そんな訳で、その子を後ろに乗っけて会場まで送ってやる事にした。

無事時間内に到着し、その子は何度も御礼を言いながら会場に消えていった。

その翌年の春、俺の部署に新人が入ってきた。信じられないと思うが、
その子だった。バイクは、原付から250に変わっていた。
それから、2人でツーリングでいろいろな所へ行った。



ある日、いつものように会社帰りにファミレスに寄り、週末のツーリングの
計画を立てていた時、その子は、
「今度のツーリングは、驚くべき事が起こるよ。」
と、言い残し帰宅していった。

その日の夜中俺は、1本の電話で叩き起こされた・・・。
内容は、
「そいつが事故で死んだ。」
と言うものだった。

病院の後、そいつの自宅に行くと、そいつの母親が1冊の日記帳を俺に手渡した。
中には、俺の事が好きと、言う内容そして、告白できないから俺が気がつく事を期待して
ここ(2ch)に書き込んだが書かれてあった。本気で泣いた。その時初めて
そいつの事を好きという事に気がついた自分に腹が立った。

葬儀のために、そいつの家に行ったとき新車のバイクと皮のジャケットが
あった。母親によると週末のツーリングのために、俺を驚かせるために
内緒で買ったらしい。

主人がいなくなったバイクと、新品のジャケットをみて、また俺は泣いた。

あのときの、
「今度のツーリングは、驚くべき事が起こるよ。」
と意味を、俺は、ジャケットと新車の件だと考えた。

家に着くと、宅配便の不在通知・・・・。差出人を見るとそいつだった。
営業所を無理やり開けさせ、受け取った荷物。中には、皮のジャケットと
1通の手紙・・・・・。

内容は、
「お誕生日おめでとうございます。ずっと好きでした。このジャケットが
ぼろぼろになっても一緒にいてください。」(原文のまま)
という文章だった。

悲しみのあまりすっかり忘れていたが、その日は、俺の誕生日だった。
ホントに悲しくなって、2chの雑談スレに愚痴ったりした。そこの方に
このスレッドにある、そいつの書いた文章を探し当ててもらった。

それをみて、自分自身情けなくなった。ものすごく複雑な気分だった。
バイクをやめたくなった。しかし、バイクが無ければ2人は、
ただの他人だったし・・・・。
そして、何もしたくなくなった。

部屋の片隅で、放心状態になった俺は何もできず、気がついたら時間だけが
過ぎていた。こんな事ではいけないと思い、その週末予定していた集合場所へ
そのジャケットを着て1人で出発した・・・。

非常にその日は暑い日で、もしあいつがいたら、2人して暑い暑い文句を
いいながら走ってたのが想像できて思わず、笑ってしまった。

1時間ほどで、いつもの道の駅に到着。約束の時間になったが、当然の如く
彼女は現れない。でも何故か俺は、彼女が現れるのを待っていた。
道の駅には、知り合いのライダーもいた。

彼らは俺に
「いつもの、お連れさんは?。もし良かったらご一緒しませんか?」
とか声をかけてきてくれた。俺は、あいつが死んだ事を認めたくなかったのか
「なんか遅れて来るみたいです。時間がかかるみたいなんで次回お願いします。」

と言うのが精一杯だった。

道の駅で、放心状態のまま気がつくと夜の8時。どうやら12時間以上その場に
いたらしい。1人でクソ暑い中革ジャンで地面に座っている俺は周りに人にとって
かなり怪しく思えただろう。

しばらくすると、前述のグループが再び現れ俺に
「どうかしたのか?」
と聞いてきた。俺はすべてを話し人目もはばからず大声で泣いた。

その人たちも俺のために、泣いてくれた。
そのグループの1人が、
「気が済むまで、俺が付き合ってやる。とことん愚痴れ。」
と言って俺のとなりに腰をおろした。

ホントに愚痴った。怒鳴った。八つ当たりした。何時間愚痴ったか分からない。
多分、2時間は愚痴ったと思う。

俺の話を一通り聞いた後彼は、こういった。
「彼女が好きだった君は、今の君じゃないんじゃないか?今の君を見たら多分
彼女は君の事が嫌いになるんじゃないか?。」

たしかにその通りだった。

その後何も言葉を返せずにまた、時間が過ぎていった。

気がつくと周りには彼のグループの人が、誰1人帰らず俺のそばに残っていた。
それほど、俺は周りが見えてなかったらしい。

その中の1人が突然
「よし!今日はここでキャンプー!!。」
とか言い出し泊まりの準備を始めた。周りの奴らも同様に・・・。

近くの河原で酒を飲みながらいつの間にか眠ってしまった。
彼女がいなくなってから、初めて笑い、ゆっくり眠った気がする。

すぐには、彼女の事は忘れ去る事は出来ないと思うが、少しずつ前に進んで
いこうと思う。

彼女とそのツーリンググループは、私にとっての
「旅先で出会った、一生忘れえぬ人たち」
です。


他の泣ける話を読む


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今日の一台



マツダ ポーターキャブ

緑に塗ってガチャピン仕様にしてみたい(*'-'*)


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Posted at 2013/05/18 19:47:58 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2013年05月17日 イイね!

名前も知らないまま終わったほうが旅っぽくてかっこいいだろ






名前も知らないまま終わったほうが旅っぽくてかっこいいだろ




458 名前:774RR[sage] 投稿日:2011/08/28(日) 21:13:52.54 ID:5EgS0QB+
もう2年前のGW、俺は初めて泊まりのツーリングに行った。
初めてで一人旅、宿もなんにも決めないで「ちょっと何日か
フラフラしよう」と前日に決めて家を出た。
持ち物も最小限で、リュックとネット、ホムセンで買ったペラペラの封筒型寝袋だけ。


なんとなく岐阜の御岳山辺りへいって、山道で写真を撮っていると後ろで
バイクが倒れてしまった。
今思うとやっぱり馬鹿だなぁと思ったけど、くだりの途中でNに入れたまま
バイクを泊めていた。倒れて当然だわな。

ブツブツ言いながらバイクを起こしてみたら左側のステップが根元から
折れてた(チェンジも駄目)おまけにセルもかからない。
幸い下り坂だったので押しがけも簡単にできたのでナビで近くのバイク屋を
検索して直してもらうことにした。

1時間くらい走らせてバイク屋についたけど、ステップなんてもんが店に
常備してあるはずもなく、ステップは溶接してもらうことになった。
セルの不調のほうは原因がわからないということでそのまま……
(後で診たらただの配線の接触不良だった)

一応直りはしたけど、旅は続けれないなぁと思いかえることにしたが、もう7時を
過ぎていたのでとりあえず今日はどっか泊まるかと適当に走り出した。



459 名前:774RR[sage] 投稿日:2011/08/28(日) 21:25:30.35 ID:5EgS0QB+
途中いくつか温泉宿っぽいところに寄ってみたけど、もう時間が時間なので
日帰り客は入れませんとのことだった。
飯屋も見つからなかったし、荷物の中に昼間に買った味噌オニギリが2つあったから
それで我慢することにして御岳のふもとにある道の駅まできた。

寝袋を広げて寝ようとしたら知らないおじさんに声をかけられた。

おじさん「おい、こんなところで寝るのか?」
俺「はい…駄目でしたか?」

係りの人かと思ってちょっとドキドキしながら答える俺、今思えば9時過ぎに
係りの人なんかいないか…。

おじさん「酒はないのか? この辺朝方は相当寒いぞ」
俺「え……無いです。どうしようかな……」
おじさん「俺のテントくるか? 酒に付き合ってくれたら寝床を貸してやる」

見ず知らずのおじさんに同じテントで酒というのは多少抵抗感はあったけど、確かに
肌寒くなってきたし、テントを考えるとホームセンターで買った3000円くらいの
寝袋は確かに頼りなかった。
アーッな展開の心配もあったけどおじさんのご厚意に甘えることにした。

とはいえ、別にそんな展開は無くぶどう酒や日本酒、大量のつまみと武勇伝を
ご馳走になることになったのだ。


460 名前:774RR[sage] 投稿日:2011/08/28(日) 21:37:54.35 ID:5EgS0QB+
おじさんは元登山家だと言って自分の車からいろんな物を出して俺に見せてくれた。
テントは常に3つ持っていて天候に合わせて使い分けてる、とかラジカセを持ってると
暇つぶしになっていいとか(山に担いで登るのかな?)

「俺は酒が入ると飯食えなくなるんだよ」と言って、俺に大量のおつまみやら
非常食を振舞ってくれた。
今思うとあんまり保存が利くと思えない物もあったから本当は飯も結構
食べる人だったのかもしれない。
俺が遠慮しないように気遣ってくれたのかも?

名前までは覚えてないけど野球選手が昔自分の所属していたチームと試合を
したこと(おじさんはベンチだったそうだけど)とか元は社長さんだった話とか、
武勇伝もごちそうになったりした。
どうでもいいかもしれないけど嘉門達夫が好きらしい。
なんか都道府県の歌?を二人で笑いながら聴いてた。

おじさん「お前は俺が通りかかった時に会釈したんだよ。いまどき若者にしては偉いもんだ。
だから助けたくなったんだよ」
俺「ありがとうございました。いや本当に助かりました……」
おじさん「まぁ俺も寂しかったしなwww」

その夜は本当に寒くてジャケット着たまま寝袋に入ったけど5回近く寒さで目が覚めた。
おじさんがいなかったら本当に凍死していたかもしれない。

翌朝、6時くらいにはおじさんは目が覚めてて、俺も朝は強いほうだったから
物音ですぐに目が覚めた。
おじさんはこの後釣りに行くからと荷物を早めにまとめていた。
どうしてもお礼がしたいので連絡先を教えてくださいというとおじさんは
「名前も知らないまま終わったほうが旅っぽくてかっこいいだろ」と笑って言ってくれた。


462 名前:774RR[sage] 投稿日:2011/08/28(日) 21:49:09.51 ID:5EgS0QB+
帰り道、もうこれ以上アクシデントは起きないだろうと思っていたら昼食の後
すぐにステップがモゲた。
アルミ溶接が難しいのはわかってはいるが、断面が気泡だらけで触るとボロボロと
崩れてしまった。 これはちと酷い。

アメリカン5台くらいの若者がこっちを見て笑いながら出発していく中、近くにいた
別のライダー2人が応急処置をしてくれた。
バイクまでは覚えてないけど1人はOGKのシャアザクヘルメットだったのを覚えてる。

2人はペンチをタイラップで固定して手動でチェンジができるように応急処置してくれた。
社会人に成り立てで常識知らずだった俺はコーヒーも出せなかったな……。
何度もありがとうございますと頭を下げる俺に2人が「君はこうなったバイクはこうやって
対処できるってのを知ったんだ。同じように困ってる人がいたら直してあげてね」と
言って俺より先に道の駅を出発した。


あれから2年ちょい経つけど、いまだに俺が助けたバイク乗りは0人、
メカ知識は無いけど常にタイラップとペンチは持ち歩いてますw


以上、国語力0の乱文失礼しました。



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今日の一台



デビッド・ベッカム所有車 1098R

このドゥカ、あのデビッド・ベッカム所有車だって(*'-'*)


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2013年05月16日 イイね!

ママ、ドント、クライ




ママ、ドント、クライ


物心がついてからこっち、涙を流したことなんて二回しかない。本当さ。
一回は小学校6年の時。
結構、本気で集めていた切手帳を、教室で盗まれちゃったときのことだ。
今考えてみれば、使用済みの切手ばかりでケチな内容なんだけど、
当時はまだ子供だったしね。
本当にがっくり来て、自分が可哀相になって泣いちゃったんだな。

二回目は十七歳のときのことだ。
いい年こいて、恥ずかしい話だけど。その時のことを話すよ。

ぼくの父親は救いようのないロクデナシでね。
根っからの博打打ちなんだ。
今時、珍しいと思われるかもしれないけど、本当さ。
といってもヤクザ屋さんじゃないよ。
一応カタギで、セールスマンをやってた。
セールスするものは、その時どきで入れ替わり立ち代りするんだ。
百貨辞典を売り歩いていることもあれば、ミシンを売っていたり、
医学関係のビデオを病院に売りつけたり、まあ色々さ。

ぼくが中学の時には、インチキ洗剤をセールスして大もうけしたこともあった。
これが、いわゆるネズミ講でね。けれど本当にウマイ話なんて世の中にはないのさ。
結局、損をした会員たちが騒ぎ始めて、儲けた連中はオヤジを含めて世間から袋叩きにあって、
もうケチョン、ケチョンだよ。
その後、オヤジは競馬や競輪の違法仲介のノミ屋を始めるんだけど、そんな生活を
繰り返していたおかげで、家の中はすっかり暗くなっちまった。

毎月末には借金返済を迫る電話がガンガン掛かってきたし、
ヤクザ屋さんも取り立てにきたりさ。
もう本当に参ったよ。それでもオヤジは博打を止めようとしなかった。
そのうち麻雀に出かけるようになり、家にもあまり寄り付かなくなった。

オヤジが不在がちになり、稼ぎを入れなくなると、仕方なくお袋は
給食センターみたいなところへ働きに出るようになった。
家にはぼく一人だけがいるみたいな状況だ。

そんな毎日のなかで、ぼくの唯一の楽しみといったら、バイクに乗って
当てもなく走り回るくらいのことだった。
バイクといっても小型の80ccでさ。ヤマハのミニトレっての。
高校二年のとき、一夏つぶして懸命にバイトして買ったのさ。
青果市場から駅まで、トラックに積んだ桃を運ぶっていうバイトだった。

ありがたいことにお袋は、ぼくが自分で稼いだ金の使途については何も意見しなかった。
ちょっと後ろめたかったけどさ。
何しろ十七歳だったからね、ひとつくらい自分の楽しみがないと、気が狂いそうだったんだよ。

そして、高校三年の夏。ぼくはミニトレのシートにでかい箱をくくりつけて、
お中元を配達するバイトをしていた。
このバイトは桃運びに較べると、ペイも良かったし、何しろバイクにのることで
金になるなんて夢みたいな仕事さ。



この夏家のほうは相変わらずでね。
お袋は毎日朝から夜中まで給食センターだし、オヤジの奴は
7月半ばから一度も姿をあらわさなかった。

9月になって、ぼくは夏の間に稼いだ金をお袋に見せ、使ってくれと申し出た。
別に親孝行気取ってるわけじゃないよ。いつもお袋が働いているのに、
自分だけがミニ乗ってフラフラしてる後ろめたさがあったからさ。

でもお袋は純粋に親孝行と受け取ったらしくてね。
大変な喜びようだった。赤ん坊みたいな笑顔でさ。
あんなお袋みたの初めてだよ。
ところがお袋の奴、さんざんにハシャイだ末にこう言うんだよ。

「ありがとう。でもこのお金はあなたが使いなさい」ってさ。

これにはぼくも驚いたね。
まったく予想外だったんで、しばらく唖然としちゃったよ。
お袋はお金の入った封筒をぼくの手へ握らせて、うれしそうに何度も
うなずきながら台所へ引っ込んじゃった。
そしていつも通りにぼくの夜食を作りながら、何を思ったか、

「今度の日曜日、二人でどこかへ遊びに行きましょうか」そんなことを言うんだ。

ぼくは少々面食らった。
だって格好悪いじゃないか。いい年こいてオカアサンと一緒なんてさ。
だから最初は「よせやい」とか言って回避しようとしたんだけど、意外にも
お袋は執拗だった。あんまり言うもんだから、
「そんなこと言ったって、どこ行くのさ」
と訊き返すと、しばらく考え込んだ後に、
「動物園がいいな」なんて子供みたいなこと言うんだ。

「あなたのほら、オートバイで行きましょうよ。後ろへ乗れるんでしょう?
そうすればバス代だって浮くし」
「ミニトレに?お袋と二人乗りかよ!」
あまりの提案に、ぼくは大笑いしてしまった。
ぼくはさんざん笑って、赤面し、何度も断わった。
けれどお袋はどうしても動物園に行くって言い張るのさ。

考えてみれば、お袋は昔から動物が好きでさ、犬とかネコとかをいっぱい飼いたいっていつも言ってたんだ。
だけどぼくの家は犬猫ご法度のアパートだしさ。
しかたなく、お袋はインコや金魚を飼ってたんだ。

だから、まあ動物園に行きたがる気持ちもなんとなく分かるじゃないか。可哀相なんだよ。
毎日毎日何の楽しみもなく給食センターで働いてさ、皿洗いのやりすぎで
指紋がなくなっちゃうほど頑張ってるんだから。
「しょうがねぇなぁ」
だから最後には、ぼくのほうが折れたのさ。
恥ずかしいのを我慢して、お袋の奴をちょっとだけ喜ばしてやろう。そう思ったんだ。

そんな経緯があって、次の日曜日。ぼくとお袋は連れ立って動物園に出かけた。
ホント恥ずかしくて死にそうだったよ。
動物園に車での二人乗りも恥ずかしかったけど、弁当のほうがもっと照れたな。

辺りを見渡すと家族連れはたくさんいたけど、ぼくらみたいな組み合わせは他にはいなかった。
なのにお袋の奴はウキウキしちゃってさ、「たまご焼きも食べなさいよ」とか
「こっちがシャケで、こっちが梅干」とか大声で言うんだ。
ぼくはわざとふさぎこんで、不機嫌な表情でもくもくと食った。
そうでもしなきゃ、この気恥ずかしさに耐えられそうになかったのさ。

ところが昼飯を食い終わってお茶を飲む頃になると、今度はお袋のほうが、
不意に黙りこんだんだよ。
どうしたのかな、と横目で様子を窺うと、お袋はちょっと目を潤ませていた。
そしてゆっくりした口調でこう言ったんだ。

「お父さんとね、私、離婚したのよ。7月に」
ぼくは飲んでいたお茶を止めて、お袋の横顔を見つめた。

「・・・これはね、男と女のことだから。分かってくれるわね。
あなたになかなか言い出せなくて困ってたんだけど。平気よね。
あなたもすっかり大人になって、お父さんの代わりに稼いだりしてくれるものね」
そこまで話すとお袋はぼろぼろ涙をこぼした。

「このあいだ、あなたがアルバイトしたお金を渡してくれたとき、本当にうれしかった。
私、そんなこと全然考えていなかったから・・・。本当に、そんなこと全然考えていなかったの・・・」
お袋は一生懸命微笑もうとし、けれど上手くいかずに顔をくしゃくしゃにして泣いた。

ぼくは何か言ってやりたくて仕方なかったけれど、一言も浮かんでこなかった。
何ていうんだろう。お袋が自分の子供のように思えてきちゃったのさ。
アルバイトで気楽に稼いだお金のことでこんなに感激するなんて。
本当に良いことがずっとなかったから、この程度のことで泣いちゃうんだよ。

その後、ぼくらは黙って園内をまわった。その時の気持ち、うまく説明できないな。
さっきまでは照れ臭くて仕方なかったのに、今度は逆に、誇らしいような気分になっていたのさ。
要するにぼくは、お袋に連れられて、動物園にきたのではなく、お袋を動物園に連れてきたんだ。
そういう気持ちになっていたんだよ。

ミニトレに跨り、エンジンをかける。サイドスタンドを外して、
「さあ、乗んなよ」
振り向いて、そう言う。
するとニ、三歩離れて立っていたお袋は、微笑んで小さくうなずいた。
その様子が、妙に老け込んで見える。

「ああ、楽しかった」
お袋はぼくの腰に腕を回しながら、誰にともなくそう呟いた。
ぼくは自分のベルトあたりで組み合わされているお袋の手を見た。
皿洗いのやりすぎで、指紋もなくなり、ザラザラに荒れた手だ。

それを目にしたとたん、ぼくは声を放って泣き出したくなっちゃたんだよ。
色んなことが申し訳なくて、お袋に謝りたくて、胸が詰まったんだ。ごめん、ごめん、って
何度も胸の中で繰り返しているうちに、涙が流れて止まらなかった。

カッコ悪いよな。お袋を後ろに乗せて、ミニトレに跨ったまま、泣いているなんて。
でもいいさ。ぼくのこと指差して笑う分には、いっこうに構わない。
けれど、お袋のことを笑う奴はタダじゃおかない。
これはぼくの大切なお袋だ。立派なお袋だ。誰にも文句なんか言わせない。

そんなふうにしてぼくは、十七歳の夏の終わりに心から泣いてしまったんだよ。


他の泣ける話を読む



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今日の一台



プリンス社製 ホーマートラック

ドアの後ろの丸いウインカーがカワイイですね(*'-'*)


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2013年05月15日 イイね!

とんでもないお客さん



とんでもないお客さん




97 : 他スレからのコピペ[kaitahitogomenne] : 04/08/07 11:07 ID:dIl+NLUe [1/1回]

「とんでもないお客さん」の話ですが、こっちはほのぼの系です。
小学生位の子供が、お年玉もってバイク(メイト)買いに来たことがあります。
売ってくれと言われてもちょっとね・・・・・・。
そしたら泣き出しちゃったんですよ。あぁぁ





親に連絡が付いて、よくよく聞いてみたらこのような事情でした。
なんでもおじいちゃんによく乗せてもらってた思い出があって、
そのおじいちゃんが亡くなり、そのバイクも処分されてしまったらしくて・・・
それを買い戻して置いといて自分が大きくなったら運転するんだそうです。

売ってあげるのは無理だけど、その代わりってことで私が運転して
一緒に乗せてあげたらすごく喜んでくれましたね。
私にとっても良い思い出となりました。
メイトは良いバイクです。


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今日の一台



昭和レトロ、絶好調!サイデスカー

なにこれカワイイ(*'-'*)


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2013年05月14日 イイね!

これが前の愛車の最後の思い出




これが前の愛車の最後の思い出



7 :名無しさん@そうだドライブへ行こう :02/10/07 11:01 ID:e67XyA4X

この夏に新車に買い換えた。俺にとってはじめての買い換え。
それまで乗ってきた愛車との別れは辛かったよ。

いよいよ納車の日、俺は新車を受け取りに行くのと今までの愛車を下取りに
引き取ってもらうためにいつものディーラーへ走った。土曜日の午前だ。
それまでの愛車の最後の走りだよ。
ところが行き慣れたディーラーなのに、毎日走っている道なのに道に迷った。



いつも曲がるはずの交差点を何度通っても見落としてしまう。
何度も先にある駐車場と家の間を行ったり来たりしても、
その交差点を通り過ぎてしまう。
こんな事はそれまでなかった。
回り道してもそのディーラーへの道を曲がり損ねちゃうんだよ。
何度目かにようやくディーラーに着いたけど、どうやって行ったのか覚えてない。
時間を見ると約束の時間から30分遅れてディーラーに着いたことになった。

これが前の愛車の最後の思い出。ウソのような本当の話。
俺、幽霊なんて信じてないけど、この体験だけはなんか不思議な力があったと思ってる。


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今日の一台



ホンダS600

こういうのでヒストリックカーレースに出てみたい(*'-'*)


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