先週末のこと。オランダ出張の疲れがたまっていたのか、土曜日は夕方までパジャマ姿で過ごした。日曜の午前は、洗濯機を2度回して掃除をしたら終わった。さて、いくらなんでもこのまま週末が終わったのではもったいない、せっかく930が手元にあるのだから、どこか近場でドライブでもと思い、昼から出かけることにした。
新4号を北上し、宇都宮から東北道に入った。エンジン回転を3500rpmくらいに保って走ったが、この辺りが3.2Lの930にとって快適なゾーンだと思う。(残念ながら、ギアが何速に入っていたかは記憶がはっきりしません。お察しください。)
あっという間に那須IC、そこから、ひろぽん師匠に教えていただいたレストラン「フィオラノ」に向かった。
ガラス越しに飾られている真っ赤なディーノ246GTが出迎えてくれた。
昼の混雑する時間は過ぎて比較的店内は空いていたので、迷わずディーノを間近に眺められる席を選び、ポチキソーセージとジャガイモのピザ、サラダとコーヒーのセットを頼んだ。
料理を待つ間ディーノを眺めていたが、あらためてその素晴らしいデザインに見とれてしまった。


絶妙な曲線を描くフロントフェンダーの峰とヘッドライトのくぼみ、クロモドーラのホイールなどが織り成す形だけで、ご飯3杯はいけると思う。ディーノはレストランのオーナーさんのもので、栃木34ナンバーが付いていたから、おそらく20年以上前からお持ちなのだろう。素晴らしい。
しかし、こんな素晴らしいデザインの車を、こんな間近で数十分間も眺めていられる状況って、そうそう無い。私は、ここ以外だと、昨年の夏に行った岡山のOLD BOYに併設されているカフェくらいしか知らないので、他にこのようなお店をご存知の方、ぜひとも教えてください。
これで料理が普通だったらどうということは無いが、うれしいことに、たいへん美味だった。ゴーダチーズのコクのある味わいもピザの焼き方も、新鮮な野菜の味も、すべてが好ましい。それでいて、値段はいわゆる観光地価格ではなく、リーズナブルだった。と思って回りを見渡すと、他のお客さんは普通のイタリアンカフェレストランとして捉えている風だった。と同時に、女性ボーカルによるジャズが流れる落ち着いた雰囲気の店内は、ディーノが無くても居心地のよい場所だろうと思えてきた。また近いうちに来てみたい。
フィオラノを後にして、すぐ近くにある「那須クラシックカー博物館」に向かった。
個人のコレクションのようであるが、展示車の台数がかなり多いだけでなく、年代もジャンルもバラエティに富んでいて、多いに楽しめた。
その中で印象に残っている車について記しておくと…
・1910~20年代の車が多数展示されているが、こんな古い車をじっくり見られる機会は日本ではあまりない。なので、前輪回りのメカニズムを観察してみた。



この年代の車のフロントサスのジオメトリーは、キングピン軸が前から見ても横から見てもほぼ垂直に立っている。スクラブ半径は100mmくらいありそうで、ステアリングへのキックバックはすごいだろうし、キャスター角がほぼゼロだから、直進性?何それおいしいの?てな感じだろう。おまけに、前輪ブレーキは無いし、ショックアブソーバーも無い。さらに、セルモーターも無いから、ケッチンの危険を冒して手でクランクハンドルを回してエンジンを掛ける必要がある。昔の人はよくこんな原始的なのに乗ってたもんだ、と思った。
・オースティンのタクシーキャブとしか書いていなかったが、後で調べたら、日本にも少数だけ入っている有名な形のあれ(FX4)よりひとつ前の、FX3という型のようだ。

「山高帽を被った紳士が…」と言われるだけあって客室内は広く、なかなか良い感じだったが、料金表の記述が余りにも細かいので驚いた。
走行料金は時間と距離の併用だし、追加料金も多すぎ!乗客は2人目からひとり6ペンス、自転車や乳母車が1台9ペンス、動物はバスケット1個につき3ペンス、バスケットに入ってなければ1匹につき3ペンスとか、本当にまじめに計算していたの?と思ってしまった。おまけに当時のイギリスの貨幣は10進法ではなく、1シリングは12ペンスだったそうな。。
・フィアット600を間近で見るのはほとんど初めてだったが、550ccの頃の軽自動車とあまり変わらないサイズなのに室内は広そうだし、4気筒エンジンを積んでいるし、形も愛嬌があるしで、私には、ほぼ同時代のフィアット500よりも魅力的に思えた。
日本では、ルパン3世の影響があるのかどうか、一般的には500の方が人気があるようだが、もしかしたら、スバルの360とR-2の関係のようなものなのかもしれない。そういえばスバルR-2の形はフィアット600に似てるように見えなくもない。
・シトロエン・トラクションアヴァン。名前のとおりのFFレイアウトとモノコック構造のため、隣に並んだ1942年シボレーと比べて格段に背が低く、それでいてフェンダーが独立した昔の車の形をしていて、とても同じ年代の車には見えず、また、たいへん格好良く見えた。
もちろん、FFでしかも重心が低いのは当然操縦安定性にもプラスのはずで、当時シトロエンは世界の最先端を行っていたんだろう、と思わせるものがあった。
・バイクの展示もなかなか面白かった。旧ソ連のドニエプルがBMW R100Sの隣にあったが、解説に「両脇に水平に突き出したシリンダーが特徴」と書いてあった。
そりゃ、ドニエプルはBMWをコピーしたんだから当たり前ですがな、とツッコミを入れたくなるが、もちろん、全部分かった上で、解説では知らん顔をしているのに違いない。現に、コピー元となっているBMWのR71も2つ隣に展示しているのだから。
・ハーレーダビッドソンとだけ書いてあるバイク、車体はどう見てもホンダのエイプと同じくらいで、格好もよく似ている。タイヤは見たら10インチで、エイプよりまだ小さい。
車種が書いてないので、家に帰ってから調べたら、当時ハーレーの傘下だったイタリアのアエルマッキのX-90のOEM版のようだ。しかし、エンジンは2ストロークだし、ハンドルの付け根には自転車のクイックリリースのようなレバーがあっておそらく折り畳めるし、タンクに名前が書いてなければ、ぜったいにハーレーとは分からないと思う。
・そのハーレーの解説、展示してあるX-90とは全然関係ないことを書いていてワロタ。学芸員の人が調べるのが面倒になったのだろうか?
・解説といえば、年式とモデル名しか書いていないのもあるが、これは善意に解釈すれば、自分で調べようという好奇心を起こさせるためかも知れない。ただ、解説がある場合でもツッコミどころもあるようで…
サクソン
針金スポーク車輪ってwwww
ド・ディオン・ブートン
駆動はスーパーギアって、そりゃスパーギア(Spur Gear)だってば。
アルビス
独立懸架の定義がどう考えてもおかしい。
まあ、この辺も含めて楽しませていただいた、ということで。
あと、忘れてはいけないのは、あのマッハ号が展示してある件。

映画の撮影用に何台か作った車の1台とのことだ。アニメの中のマッハ号はプロポーション的に無理があったようにも思うが、実車でも特に違和感がない形で、昔々にテレビで見た形がそのまま再現されている感じで、ちょっと感動ものだった。この車だけでも、ここに来る価値はあると思った。
という訳で、フィオラノも那須クラシックカー博物館も、存分に楽しませていただいた。小山からは片道100kmたらずで、ちょっとひとっ走りしてお茶をしに行くにはちょうどよい。実際、この日も昼を過ぎてから出掛けたが、日が暮れる前には帰着できた。次はトライアンフタイガーで来て、フィオラノにもう一度寄って、そこから別な博物館のどれかに行ってみようと思う。