昨日は無題と題するブログをアップしましたが、お分かりのとおり、これはフラットシックスエンジン車を増車した件に関連しています。手短に言うと、現車確認の時に短時間試乗させていただいた時の自分の心境を、起承転結の形で表現したものなんです。
(試乗に臨む前の心の声)
(実際に走り出す前の心境)
(走り出した後、広い道で少しアクセルを開けた時の感想)
(車両を引き取り、高速道路を通って帰る時に思い浮かんだフレーズ)
ここまで書けば、いったいどんな種類の乗り物であるかはお分かりですね。
答えは、
1998年 ホンダワルキューレ(国内仕様、初期型)です。
ホンダのウェブサイトによると、ワルキューレは、当時の新世代のアメリカンカスタムの基本指針である「SPIRIT OF THE PHOENIX」のフラッグシップモデルとして、ホンダの歴史が造りあげた全てのアメリカン・カスタムモデルの頂点に位置するモデルとして位置づけられていたという。また、開発は本田技術研究所朝霞研究所とホンダR&Dノースアメリカ(HRA)との共同プロジェクトとして行われたとのこと。
指針であるキング・オブ・アメリカンカスタムを具現化するに際しては、「SPIRIT OF THE PHOENIX」の基本的な車体構成を踏襲し、さらに、
1. ホンダの歴史が造り上げた究極のビッグマシンであること
2. 比較することの無意味さを漂わす風格と高級感を備えていること
3. 重厚で優雅なスタイルと、圧倒的迫力の融合を果たしていること
4. 伝統、素材、クラフトマンシップ、信頼感、普遍性に裏付けられた本物であること
の4点を求めたという。そして、これらを実現するパワーユニットはフラットシックス以外に存在しないと判断したとのこと。
ワルキューレはGL1500の外装をはぎ取ったネイキッド版と思う人もいるかもしれないが、フレームは新設計だし、足回りもフロントフォークに倒立タイプを採用するなど、全然別モノと言える。
スタイリングデザインの方向としては、1940~50年頃のクラシックカーがもつ重厚で華麗なスタイルをモチーフに、レトロ調の風格と優雅さ、そしてホットロッドカスタムとしての圧倒的な迫力を融合させたトラディショナルフォルムを表現したという。
また、エンジンの基本的な部分である、水冷フラットシックス、1520cm3の排気量などはGL1500と共通であるが、ホットロッドカスタムとしての走り味を演出するために各部が変更されている。具体的には、吸気系は2連キャブレターに替えて6連キャブレターが採用されているし、高回転型にするためにバルブタイミングも変わっている。さらに、バルブスプリングとロッカーアームが新設計となり、ピストンも軽量化され、フライホイールマスの削減、さらに、タペット調整にシンプルなマニュアル調整機構を採用し、軽量化とパワーのダイレクト感を追求したとのこと。ここまでやればエンジンも別モノと言えるのではなかろうか。
そして、いちばんの特徴は6 into 6と称される排気系である。写真だとマフラーは片側バンクの3気筒分を1本に集合しているように見えるが、実は一切連結されておらず、独立したまま後端まで伸びている。個人的には、この排気システムがワルキューレのいちばんのキモであると思っているほどである。
実際、街中で普通に発進する時に、アメリカ車のV8エンジンのような重低音がするのだ。試乗させてもらった時、この脳天を直撃するような排気音にすっかりヤラれてしまい、「これしかない」と思って即決したようなものである。もちろん音色はスロットル開度と回転数によって刻々と変わり、レッドゾーン手前(といっても6500rpm)まで回しきると、ポルシェ911乗りなら誰もが共通にイメージするフラットシックスのクリアーな快音が響く。これは本当にタマリマセン。
昨日前オーナーから引き取った後はとりあえず小山に乗って帰り、今日下道でひと回りした程度であるが、思っていたよりはずっと乗りやすく、さすがはホンダ車であると感心した。車重はカタログ上で333kg、これにワルキューレツアラー用のスクリーンとクラウザーのパニアケースが付いているので10kgくらい重くなっているにもかかわらずである。
私が入手したのは初期型のためリバースギアが付いていないが、平地であれば取り回しは問題ないことも分かった。また、シート高が735mmと低いため両足とも踵まで着くのと、水平対向エンジンによる低重心のため、立ちゴケの心配もトライアンフタイガーより少ない。走ってみても、ハンドリングは想像したより軽快だし、ホンダ車ということで心配していたコーナーでの切れ込みも気にならないレベルだった。さすがにブレーキは今どきのモデルより効きが弱いが、それとバンク角の浅ささえ気をつければ、峠道もストレスなく走れそうだ。
ひとつ気になったのは、私が普通のポジションを取ると、スクリーンの上端がちょうど目の高さに来てしまうことである。貴重な純正品のスクリーンの丈を詰めるのも失敗が怖いし、当面はポジションを少し変える(背筋を伸ばすか、逆にふんぞり返って目線を下げる)ことで対応しようかと思う。
もうひとつ問題は、引き取った直後に満タンにした後、200km走っただけで20Lタンクがリザーブになってしまったことである。最初道に迷って10kmに1時間かかる混んだ街中を走ったのもあるが、それにしても、高速と下道半々で13.4km/Lというのはなかなかである。ただ、前オーナーによると、高速だと18km/Lくらいは伸びるとのことであるし、フラットシックスの快音を味わう代償としては許容範囲か。
最後に、なぜワルキューレを購入に及んだかについて。しばらく前にバイク歴が40年を超えた頃から、人生最後のバイクは何にすべきかを考えるようになった。端的にいうと、その結論は6気筒車というものになった。この場合、もっとも常識的な答えはBMWのK1600GTとなるだろう。しかし、930で味わってきたフラットシックスのフィーリングをバイクでも、という思いが断ち切れず、ホンダを選ぶことにした。ただ、ホンダのフラットシックスと言っても、ワルキューレ(SC34)以外にGL1500(SC22)、GL1800(SC47、SC68)、ワルキューレルーン(SC53)、F6B/F6C(SC68)、そして最新型のゴールドウィング(SC79)と多数の選択肢がある。この中で、GL1500と1800はやはり大きくて重すぎ、私のイメージするオートバイらしさから離れているため、見送った。ワルキューレルーンは芸術的すぎて乗るのが勿体ないし、値段もお高い。また、F6B/F6C、そして最新のゴールドウィングは、技術的にはより洗練されているのは分かるが、やはり古典的なフィーリングと音を味わいたくて、ワルキューレに狙いを定めた。ただ、本当はもう少し後で買おうと思っていたのが、ここ1年くらいで急速にタマ数が減りつつあり、価格も上昇傾向にあるので、前倒しした次第である。
ところで、Tシャツの画像の4枚目、「I'm a highway star」はもちろん、ディープパープルの名曲「ハイウェイスター」の一節で、走っている時に脳内でこの曲が勝手に再生されたという話である。乗る前はワーグナーの「ワルキューレの騎行」が似合うかなと思っていたが、実際にはハイウェイスターがピッタリだった。「six cylinders all mine(6気筒全部俺のモノ)というフレーズも、ワルキューレに見事にハマっているじゃないですか。
と思っていたら、YouTubeにあるこの曲の動画では、「eight cylinders all mine(8気筒全部俺のモノ)」と歌っているのに気付いた。私がディープパープルの音楽に初めて接したのは1980年代の中頃で、その後購入に及んだアルバム「Nobody's Perfect」でも、イアン・ギランはsix cylinders all mineと歌っているし、歌詞カードにもそう書いてある。ということは2つのバージョンが存在するということか。とっても気になるので、どなたか識者でご存じの方がいらっしゃれば、ぜひともご教示のほどお願い申し上げます。
ともあれ、これでワルキューレは私のものになった。これをアラカン窓際オヤジの乱行と冷ややかな目で見る向きもあるかと思いますが、安全運転に努めますので、関係者の皆様におかれましては、なにとぞ生暖かい目で見守っていただけますよう、伏してお願い申し上げます。
Posted at 2021/08/29 19:23:38 | |
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ワルキューレ | 日記