外はすごい嵐だけども、テッコンキンクリートの頑丈な集合住宅はびくともしない。妙に静かな室内から窓の外を眺めながら、子供の頃の事を思い出してます。
私の育った家は、相当古いボロッボロの借家だった。もちろんみごとなまでの木造。台風が来ると家が揺れて、今にもベシャン!と崩れるんじゃないかと思った。で、揺れると同時に家全体が鳴るの。ヒュウーとかゴオーとか…
風の音とは別に家が鳴ってる音がするんです。
古-い木造家屋なんてものは、いくら家中の戸を閉めきったところでもう隙間だらけなんだよね。思うにその隙間から隙間に強風が吹き抜けることによって、家そのものが巨大な管楽器になってたんじゃないかと。
自然の猛威のみが奏でられる楽器…家笛。
そして家笛が鳴る頃にはお兄と私で『隙間探し』が始まる。
家中の、風が入ってくる隙間を探すんですね。みつけると「あった!ここ!ここ!」と相手を呼んで二人でほっぺや手を近づける。で、風が吹き込んでるのを感じると「ね?!」と大満足。
それが、もうおもしろいくらい家中のあちこちにあるの。廊下の戸(もちろんサッシなんかじゃなく木枠にガラスをはめ込んであるヤツ)の隙間はもちろんのこと、壁の板の境目とか、なぜか押し入れの奥とか、なぜか畳の境目とか。
子供らはとても楽しかったワケですが、今思うと両親としては少なからず複雑な気持ちではなかったかと。大人になった今、少し申し訳なく思っています。
子供って残酷ね。
もう一つ思い出すのは雨戸のこと。
雨戸っつっても木製の戸にトタン板貼り付けてあるだけ。台風の時だけこの随分頼りがいのない雨戸が登場します。
そしてご存知の方いますでしょうか?
昔の古い家の雨戸は家の内側の壁に小窓があって、そこから送り出すんですよ。
照明なんぞない薄暗い廊下の、しかも年に1、2回しか開けない小窓。
もう、ほとんどインディージョーンズの世界です。中に得体の知れない虫がウジャウジャいたり、古代文明のミイラが出てくるかも。そこに手を突っ込むってこれ並外れた勇気がいるでしょ。
雨戸が登場する度に「お父さんてすごい!」と思ってたよね。
懐かしいなぁ。
両親は10年ほど前に今のマンションに引っ越して、ほどなくこの古い家は取り壊されました。大家さんはウチの両親が出ていくのを待っていたんでしょうね。その場所には現在オサレなアパートが建っており、一度だけ前を通ってみたことがあるんだけども。
なぁーんか涙出たよね。
貧しくても幸せだった幼い日の思い出は、もう写真と記憶の中にしか存在しないんです。他の誰が住んでてもいいから、ずっとあの場所にあの家が建ってて欲しかったな。
やけに静かな部屋の中で、もう二度と聴くことのない家笛の音を思い出しています。
Posted at 2013/09/18 00:01:30 | |
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