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イイね!
2007年01月04日

物には使われない

伊達政宗といえば、戦国時代、奥州最強の武将でした。
世に「独眼流政宗」と呼ばれていますが、これは幼時に彼が右目を失明したためです。
その政宗の 若い頃のことです。



ある日、政宗は名器の茶碗を手にとって眺めていました。
そのうちに、手がすべり、その茶碗を危うく落としかけます。だが幸いにも茶碗は無事でした。

しかし、政宗にとって それはとても屈辱的な出来事だったのです。
彼は、自分が一瞬ひやりとした事が残念でなりません。

(一国の武将である私が、たかが茶碗一個で心を乱すなど 情けない事だ…。)

彼はそう考えました。
なるほどその茶碗は名器です。珍器です。とても高価なものです。
現代で言えば何千万円もする品であったことでしょう。
だから 心が動くのは当然といえば当然です。

しかし、戦国の武将としては、その

  ----心の動揺----

が問題です。それが許せないのです。
心が動揺したという事は、自分は茶碗によって動かされたのです。茶碗を所有している「主人」であるはずの自分が、逆に茶碗に動かされた。
その時、人間は

  ----茶碗の家来----

になったのです。まさにあべこべです。
政宗にとってはそれが問題だったのです。

そこで彼は、その数日後その茶碗を取り出し、「残念だ!」と言いつつ庭石に向かって茶碗を投げつけました。

「ガチャン!」

庭石に当たって、茶碗は粉々に砕け散りました。
その瞬間、きっと政宗は「茶碗の家来」から「主人」に戻る事が出来たでしょう。
彼はサバサバした様子で、庭から座敷に戻っていったそうです。



----------------------------------------


もう一つ、興味深いお話を紹介しましょう。


戦国時代の武将で、加藤義明という人のお話です。
加藤義明は、あの豊臣秀吉に仕えた人物です。

義明は、虫食い南京小皿十枚セットを珍重していました。
私はそれがどのような物であるのかについてよく知りませんが、やはり何千万円もするものだそうです。

ところがある日の事、その価値ある小皿の十枚セットのうちの一枚を、義明の家来が割ってしまいました。もちろん過失です。故意に割ったわけではありません。
それを聞いた義明は残りの九枚を持ってこさせ、それを自分の手で粉々に砕いてしまいました。

何故だか分かりますか?

加藤義明はこう言いました。

どんなに高価な器物であろうと、家人(家来)には替え難い。
およそ器物や草木鳥類などを珍重する者は、それの為にかえって家人を損なう事も起きるものだ。
この点は 人の上に立つ人間がよく心得ておかねばならぬ事だ。



よく社長室などに、高価な置物を飾っている人がいます。そういうのを見ると私は、(この人は罪作りだな)と思います。
掃除する人がどれだけ神経を使っているか、私はそれが心配になります。




また義明はこのようにも言っています。

  珍奇器物は有っても無くても事欠ず。

宝物なんて、あってもなくても困りはしない というのです。
更に彼は次のように続けています。

家人は我が四肢である。一日も無くてはならぬ存在である。
天下国家を治めることが出来るのも、家人あってのことである。


宝物は無くてもよいが、家来がなくては困ります。家来があって、はじめて国を治めることが出来る ということを言っているのです。


それはさておき、家人が割ったのは一枚の皿です。あと九枚残っています。
義明は、何故この九枚を割ったのだと思いますか?

一枚くらい欠けてようと、例えば訪れた客が6、7人であれば、九枚の皿でも役に立ちます。使えないわけではありません。
それなのに何故でしょう?



それは、仮に九枚を残したままにしておくと、その皿を使うたびに「本当はこれは十枚セットであったのに、あの家来が粗相をしたために九枚になったのだ」という事を思い出すからです。
また、皿を割った男も、九枚の皿を見るたびに過去の自分の過失を思い出さざるを得ません。それではその男に気の毒です。


それなら、いっそのこと全てなくなってしまった方が良い。
加藤義明はそう考え、残る九枚を自分で割ったのだということです。

なんという家来思いの武将でしょうか。
そこには、義明の 人間としての優しさを感じずにいられません。



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茶碗にしても小皿にしても、道具というものは人間が使うものです。
ところが、道具も高価な物になればそれを使うに際して人間の方がビクビクしてしまいます。
そうなると、まるで道具が主人で人間の方がその道具に使われる家来になってしまいます。
それはおかしいですよね。

そこで、「家来」から解放されるために、換言すれば人間の主体性を確立するために、伊達政宗も加藤義明も、道具を破壊したのです。
そして道具を破壊する事により、彼らは

  ----自由----

を獲得しました。
「自由」というのは「自分に由る(じぶんによる)」ことです。
物に支配されるのではなく、自分の判断によって行動する事です。


  ----物の家来になるな 自由人であれ----

ブログ一覧 | 日記
Posted at 2007/01/04 20:14:50

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