
私の知人で、かつてワークスのレーシングドライバーをしていたお人がいます。
仮にT氏と呼びましょう。
T氏は70歳を幾らか過ぎた年齢で、ガンさんこと黒澤元治さんなどのレーサーと同年代。当時の第一線級のワークスドライバーだった方です。
T氏のお友達やお仲間には、伝説のチューナー、故ポップ吉村さんやケン・マツウラさん。レーサーでは「日本一速い男」星野一義さんや、元F1ドライバーの中嶋悟さん。ずっと後輩になる亜久里さんなどなど。。。
もちろん車雑誌の編集長連中や、高名な自動車評論家の先生たち、ホンダやトヨタのかつての重役たちなど、車やレースで飯を喰っていた連中でT氏を知らない人はまずいない、というような大人物らしいです。
らしい、というのは現役時代のT氏を、私が直接目の当たりにしていないからです (#^.^#)
氏の現役当時の凄さを知っているおじさんたちは、T氏の前に行くと緊張でしゃべれなくなっちゃうほどです。
(何度もそういう現場に遭遇しました)
T氏は現役時代から引退する年齢を決めていて、その宣言通り30代前半でレーサーを引退するのですが、その後は地元で正業につき、その道でも立派に成功され、いまでも町の人から尊敬集めている人物です。
でも町の皆さんは、T氏がかつて偉大なレーシングドライバーだったってことは全く知らないんですけどね^^;
そのT氏とひょんなことから知り合うことになり、以来20数年、ずっと親しくさせてもらっているのですが、当時私は大学生だったこともあり、今でも親子のような関係が続いています。
(後で知ったのですが、実際にT氏は私の親父と同い年でした^^;)
こんなエピソードがあります。
ある晩、T氏より携帯に連絡が。
「しばらく顔を見てないので、遊びにおいで〜」とのこと。
仕事終わりにご自宅にお邪魔すると、
「車がだいぶいい感じに仕上がってきたから、ちょっとチェックがてらドライブしてきて〜。後で感想を聞かせてね〜」
と、ノーマルでもなかなかの迫力がある某イタリア車のキーを僕に渡します。
この車のチューンド具合を私に評価しろと・・・ (゚Д゚)ハァ?
おそらくT氏の車のチューニング・マイスターは、氏のご親友であるケン・マツウラ氏ご本人。。。
そんな伝説のチューナー御大が手を入れた車を、私ごときド素人が評価なんぞ出来るはずがありません!
「・・・結構なお手前でした・・・」といって車をお返しするのが関の山です(笑)
なぜ氏が私なんぞに全幅の信頼をおいて、いつもご自身の車のキーを渡すのか、未だに理解不能です。
ずいぶんと前置きが長くなっちゃいました。
そのT氏にかつて聞いたことがあるのですよ。慣らし運転について。
「Tさん、慣らし運転ってどれぐらいやったら良いものなんでしょうかね?」
するとTさんは少年のようにニコリと微笑みながら、
「ボクたちが乗っていたレーシングマシンは、当時は工作精度も悪くて、しかも常時1万回転以上回してレースをしてたから慣らしは必要だったけど、現代の自動車工業の精度の高さと、市販車のような(低い)エンジン回転数では慣らしなんて全然必要ないよ〜」
と笑いながらおっしゃいました。
さらに、
「ボクなんか、初日からレッドゾーン全開だよ〜♪」
とのこと。。。
ええ、想像できます。
全然、想像できちゃいます。
「新車テスト」と称し、峠道で車を真横にしながらスロットル全開で駈けていくT氏の姿が。。。 (^_^;A
とまあ、現代の市販車で「慣らし」が必要なほど工作精度の低い車など世の中で販売されていないし、市販車程度の低いレブリミットのエンジンでトラブルなんか起きるはずがない、というのがT氏の見解でした。
しかし小心者の私は、師匠の教えに従わず(笑)慣らし運転をしてしまうのでした。。。。
といっても毎回1,000キロ以上の慣らしはしませんけどね♪
今回も一応1,000キロまでを目安に大人しく走って、それ以降は気持ち良く走りたいと思います。
Posted at 2013/02/20 10:08:10 | |
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