
そもそもは自動車の前輪にポジティブキャンバーが設定されているのは、車軸にかかる負担を軽減したり操舵力を軽減するためのものであったが、近年部品の品質向上やパワーステアリング機構によりポジティブキャンバーを必要としなくなってきた。
特に旋回性を追及したり重視する速度域が高い車の場合にはその傾向は強いようで特にスポーツカーでなくても欧州車の多くが前輪にネガティブキャンバーが設定されている。
つまりフロントを前から見るとタイヤが垂直よりハの字にして旋回時にロールをできるだけ相殺し効率的に接地させようとした狙いがある。
もちろんこれはカーブ外側のタイヤについてであるが、荷重のかかる外側のタイヤを重視しているということであり、またある程度の強い遠心力がかかる速度域を重視しているということになる。
これは前述のポジティブキャンバーの必要とする車とはまったく別世界の領域とも言えるほど違うものであり、同じ価値観では説明が付かないものである。
実は、私の家に旧来のポジティブキャンバーを必要とするパワステも無い古い軽トラックとまったく価値観の違う欧州車のBMWが同居していたりする。
人間であればまったく価値観の違う二人が同居するとしばしば芳しくない摩擦を生むのだろうが、機械である自動車の場合は価値観の違いは問題ないだろうと考える方も多いであろう。
家庭においてはそのとおりでまったく問題は無くむしろ私は自動車より正室との関係に神経を費やすのである。
しかし、自動車は法律の塊と言えるほどその形から管理のしかたまで事細かく法律で定められているのをご存知だろうか。
道路運送車両法という法律がそれでありその中の継続検査、いわゆる車検制度はその際たる物である。
人間の場合も法の下の平等に裁かれるように自動車の場合もまったく価値観が違うものでさえ法のもとで平等に裁かれてしまうのである。
実際には年式によって適応される条項が違ったりするのだが、もっとも旧態然とした制度が車検制度であり、その中でももっとも古い価値感で行われているのがサイドスリップ検査である。
このサイドスリップ検査では我が家の古い軽トラックとBMWのE46はその設計思想にかかわらず同じ基準で裁かれてしまうのである。
そこではサイドスリップはプラスマイナス3mm以内が正義とされて4mmを超えるものはお上のお許しを得ることが出来ないのである。
古い軽トラックでもあれば少しは意味があったサイドスリップ検査であるが、このような検査をしているのは恐らく日本だけなのだろうBMWやメルセデスベンツなどの欧州車やアメリカ車についてもそもそもサイドスリップをゼロ付近にしようとする思想は無いのである。
例えば多くのBMWはフロントにネガティブキャンバーが設定されている。
サイドスリップではポジティブキャンバーと反対にイン方向へ数値が出るタイヤの変形を生じさせるが、
更に2mm程度のトーインが設定されているのでサイドスリップの数値はイン5mmを超えることもよくある。
そのままでは継続検査(車検)に合格しないのでBMWの基準を超えたトーアウトに調整して検査を受けることがしばしばあった。
これこそが前述の同居の弊害である。
最近になって一部の欧州車やメリケンの車について特例措置がとられサイドスリップが4mmを超えていても合格できるようになったが、我が家のBMW(E46)も特例車種になっていないし、平行輸入車については特例措置が無いので現在もこの弊害は続いてるのである。
そもそも現在の車において国産車の場合でもサイドスリップ検査は意味が無いし存在そのものに大きな疑問がある。
次回に続く
Posted at 2010/05/23 07:50:20 | |
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